第33話 ずっと一緒にいられますね
アルヴェナに来てから、二階堂澪はひそかに街を探し回っていた。
武器屋、防具屋、雑貨屋、道具屋。商業区の店を一軒ずつ覗いた。大きな街だから、どこかにあるはずだと思っていた。
なかった。
どこにも、ぬいぐるみが売っていなかった。
この世界に来てから不自由なことはいくつかあった。慣れないことも、困ることも、怖いこともあった。でも特に困ったことを1つ挙げるとすれば、それだった。
部屋に戻って少し考えてから、思った。
売っていないなら、作ればいい。
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「ぬいぐるみって売ってないよね」
夕食の後、楓と瑠奈を捕まえて言った。
「そんなの探してたの澪ちゃん」
瑠奈が目を丸くした。
「……作ろうと思って」
「作るんですか」
楓が少し驚いた顔をした。
「三人で」
二人は顔を見合わせた。それから頷いた。
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翌日、道具屋へ向かった。
二階堂は生地の棚の前で真剣な顔をしていた。色と質を一枚ずつ手に取って確認した。三上は早速どんな形にするかを考えながら綿の袋を持ち上げていた。一ノ瀬は針と糸の種類を丁寧に確認して、店の人に質問までしていた。
材料を揃えてから、方針を決めた。大きいものは作れない。小さくて、腰のポーチに下げられるくらいのサイズにする。ひもをつければずっと一緒にいられる。
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二階堂の部屋に三人で集まった。
二階堂が一番熱心だった。針を持つ手が真剣で、口をきゅっと結んで生地と向き合っていた。しかし出来上がっていくウサギは、耳の長さが左右で違って、目の位置が少し高かった。
「澪ちゃんのウサギ、耳の長さ違う」
瑠奈がのぞき込んで言った。
「……うるさい」
「かわいいと思いますよ」
楓が横から言った。二階堂は手を止めた。
「……本当に?」
「はい、ちゃんとウサギです」
二階堂は少し黙ってから、また針を動かした。
三上の犬は細部がやたらと丁寧だった。毛並みの縫い目まで揃っていたが、全体を見ると頭と体のバランスがどこかずれていた。本人は全く気にしていなかった。
一ノ瀬の猫は、三人の中で一番出来がよかった。縫い目が均一で、耳も目も左右対称だった。どこかで見た手順を正確に再現したような仕上がりだった。
三人とも、黙って手を動かす時間が続いた。
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完成した。
不格好なウサギが二階堂の手の中にあった。かわいい犬が三上の手の中にあった。出来のいい猫が一ノ瀬の手の中にあった。
二階堂はウサギをしばらく眺めてから、ひもを通してポーチに下げた。揺れるウサギを見て、口元が緩んだ。
一ノ瀬と三上はその顔を見た。
三上がポーチに犬を下げながら言った。
「なんかいいね、これ」
「うん」
二階堂が答えた。
「ずっと一緒にいられますね」
一ノ瀬が猫をポーチに下げながら言った。
三人分のぬいぐるみが、それぞれのポーチで小さく揺れていた。




