第29話 予想以上の適応ね
星冠の塔の最上階は、いつも静かだった。
セリオンは光の中でうずくまる五十嵐を見た。召喚された日から変わらない姿だった。膝を抱えて丸くなったまま、光の中にいる。
「さて、今度はどこにしようかしら」
壁に刻まれた五芒星へ視線を移した。5つの頂点のうち、下の方の一点をゆっくりと指差した。
「ここね」
振り返った。魔法陣の周囲に等間隔で立つ神官たちへ、静かに頷いた。
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神官たちが一斉に詠唱を始めた。
複数の声が重なり合って、部屋に響いた。低く、規則的な音の波が床を伝って広がっていくようだった。セリオンだけが無言のまま、部屋の中央に置かれた装置へ歩み寄った。
手をかざした。何かを唱えた。
床の魔法陣が光り始めた。端の方から少しずつ、青白い光が線をなぞるように広がっていった。やがて魔法陣全体が輝いて、部屋の中が明るくなった。
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光の中で、五十嵐理香は気づいた。
何かが来る。
セリオンが来る前より、少しだけ意識がはっきりしていた。でもそれだけだった。何が起きているのかは分からなかった。
突然、光が体の中に入ってきた。
温かくも冷たくもない何かが、皮膚の内側から染み込んでくるような感覚だった。次の瞬間、頭の中に何かが流れ込んできた。数式のような、図形のような、言葉にならない何かだった。理解しようとした。できなかった。
体の中で、光が膨らんでいった。
入ってきた量より、ずっと大きくなっていた。それが限界まで膨らんだ瞬間、一気に外へ溢れ出した。
意識が、遠くなった。
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「素晴らしい」
セリオンは静かに言った。
「予想以上の適応ね。あなたが来てくれたおかげで、こんなに早く儀式を行えるようになったわ」
部屋中が光に溢れた。神官たちの詠唱が一段高くなって、やがて止んだ。
静寂が戻った。
光の中で、五十嵐はまた丸くなっていた。
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そのころ、5つの星守の村の神殿では、それぞれある部屋が光り輝いていた。
もし王国を上空から見られるものがいたとしたら、こう見えただろう。5つの光が暗闇の中に浮かび、それらを線で結ぶと、大きな星の形になる。そのうちの1つが、他より一際大きく輝いていた。
それは九十九たちが呼ばれた村の、対角線上にある村だった。




