第28話 星渡りの街へ
光が収まると、石造りの天井が見えた。
神殿だった。ルーヴェのものより天井が高く、柱も太かった。明かりを灯した魔道具が等間隔に並んでいて、広い空間を白く照らしていた。周囲を見渡すと、クラスメイトたちが次々とゲートから出てきていた。
九十九は人の流れから少し外れた位置に立って、周囲を確認した。
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神官が前に出た。ルーヴェの神殿とは違う顔だった。
「星渡りの街アルヴェナへようこそ。これより生活についての説明をいたします」
街の構造から始まった。神殿を中心に商業区が広がり、城壁の外には農業区、さらにその外側にも外壁が築かれているという。二重の壁構造で魔物から街を守っているらしかった。
「宿屋は召喚者の皆さんのために区画を借り切っております。一般の客との混在はありません。食事は宿の食事をご利用いただくか、商業区の飲食店をお使いください。武器屋、防具屋、雑貨屋なども充実しております。歓楽街もございます。これらはすべて街の方々と共用となっております」
九十九は説明を聞きながら、頭の中で整理した。
ルーヴェ村では召喚者専用エリアが明確に分けられていた。ここでは街人と混在する。行動できる範囲が広くなった。管理が緩くなったように見える。
見えるだけかもしれないが。
「討伐依頼や情報収集は神殿窓口をご利用ください。こちらでダンジョンの情報や依頼を受け付けております」
神官が続けた。
「また本日より魔道デバイスに地図機能が追加されております。現在地と街やダンジョンの大まかな位置を確認できます。安全機能として、指定された範囲を大きく外れた場合は神殿へ自動で戻る仕組みになっております。迷子になっても安心してご活動いただけます」
九十九はデバイスを見た。地図のアイコンが増えていた。
迷子になっても安心。
その言葉が、少し引っかかった。
「なおルーヴェ村のダンジョンより手強い魔物が出現しますが、その分レベルは上がりやすくなります。皆さんのさらなる成長を期待しております」
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「最後に1つお伝えします」
神官の声のトーンが少し変わった。
「五十嵐先生は現在王都にてお待ちです。皆さんが王都へ到達されることを楽しみにされております」
周囲がざわめいた。
「よっしゃ、一番乗りでリカちゃん先生に会いに行くぜ」
後ろの方から男子の声がした。何人かが笑った。
九十九は前を向いたままだった。
先生が王都にいる。そう言われても、素直に信じる気にはなれなかった。召喚された日、セリオンに連れて行かれた時の先生の顔が、頭の隅に残っていた。
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説明が終わり、宿屋へ向かった。
神殿を出ると、街の景色が広がった。石畳の通りに人が行き交い、両側に店が並んでいた。ルーヴェ村とは比べものにならない人の数と喧騒だった。荷馬車が通り過ぎて、どこかから食べ物の匂いがした。
宿屋は商業区の一角にあった。外観はごく普通の建物だったが、中に入ると受付の神官が待っていた。部屋を案内されて、鍵を受け取った。
部屋は一人部屋だった。ルーヴェのバンガローとほぼ同じ造りで、ベッドと小さな机と椅子があった。
荷物を置いて、魔道デバイスを開いた。地図機能を起動すると、現在地と街の輪郭、ダンジョンの位置を示す印が表示された。指定された範囲の外縁を確認した。
やはり怪しい。
デバイスを伏せた。天井を見た。
明日からまた始まる。




