第27話 ようやく得た力を
神殿に着いて、九十九はまず自分の装備を確認した。
皮の鎧だった。初期装備から少しだけ立派になった。鉄の片手剣も少しだけましになった程度だった。周囲の召喚者たちが職業に合った装備を身につけている中で、九十九だけが妙に地味だった。
ハーレム王に合った装備がこれかよ。
誰かが隣で言った。
「生活魔法ってやっぱ便利だよな。こんな鎧でも一瞬で着脱できるんだもんな」
九十九は返事をしなかった。
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人混みの中に三人を見つけた。
一ノ瀬が最初に目に入った。司書ような制服、その上に皮の胸当、そして深紅のケープをまとっていた。背中にはマスケット銃らしき銃と、革のベルトで結ばれた書物を背負っていた。黒のショートボブと眼鏡はいつもと同じだったが、深紅のケープが妙に似合っていた。ケープ越しでも分かるラインが視界に入って、九十九は視線を逸らした。
次に二階堂が目に入った。銀色の甲冑に銀色の籠手に銀色のブーツにプリーツスカート、黒の外套を羽織っていた。黒髪ロングと前髪ぱっつんのクールな顔立ちと甲冑が合わさって、周囲から声が上がっていた。
「二階堂さんかっこいい」
二階堂は聞こえていないのか、真っ直ぐ前を向いたままだった。
三上は大魔女帽を被って藍色のケープを羽織っていた。金髪ソバージュが帽子の縁から零れていた。ケープの下はチューブトップの上に白いシャツを羽織って裾を結んで紺のミニスカートに、黒いロングブーツだった。ファンタジーの装備の中に一人だけ違う空気が混じっていて、それが妙に三上らしかった。右手に持った杖の先には赤と水色の石が埋め込まれていて、右耳に赤、左耳に水色のイヤリング、胸元には同じ石をあしらったペンダントが揺れていた。
「三上さんかわいい」
三上は帽子のつばを指で押し上げながら、特に気にした様子もなかった。
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神官が前に出て、説明を始めた。
「次の街は星渡りの街アルヴェナです。詳細はゲートの先にいる神官が説明いたします。次の街を拠点として近くのダンジョンで魔物を討伐してください。さらに力がついたら途中のダンジョンで魔物を倒しながら王都を目指してください」
九十九は説明を聞きながら、少し引っかかるものを感じた。
なぜ王都を目指さなければならないのか。誰もその理由を聞かない。聞く必要がないと思っているのか、それとも考えていないのか。
周囲はすでにゲートの方へ視線を向けていた。九十九は何も言わなかった。
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召喚者たちが次々とゲートをくぐっていった。
一ノ瀬の番が来た。ゲートの前で一度立ち止まって、こちらを見た。九十九と目が合った。
何か言おうとして、言葉が出なかった。一ノ瀬はそのままゲートをくぐった。光が揺れて、姿が消えた。
九十九も続いてゲートをくぐった。
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神殿が静かになった。
セリオンは一人、部屋の隅に置かれた魔導炉の前に立った。炉の中を覗き込んだ。魔力がなみなみと満ちていた。ワインを注がれたグラスのように、縁近くまで揺れていた。
「よく頑張った」
誰もいない神殿で、セリオンは静かに呟いた。
「ようやく得た力を試す時が来た」




