第26話 振り返らなかった
魔物が向かってくる。
二階堂は武器を構えた。隣で三上が魔法を放った。前方の魔物が吹き飛んだ。さらに後方から別の個体が迫ってくる。楓が鑑定しながら声を上げた。
「後ろ、二体」
振り返った瞬間、光が弾けた。
視界が白く塗り潰された。足元の感覚が消えた。浮いているのか落ちているのか分からない一瞬があって、次の瞬間、石畳の感触が足の裏に戻ってきた。
見覚えのある天井だった。
「え、なに、どこ」
「神殿?なんで」
周囲から声が上がった。二階堂は素早く周囲を見渡した。召喚された日に降り立った神殿だった。クラスメイトたちが周囲に立っていた。全員が、ここにいた。
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人影が現れた。
フードを目深に被った神官服の女だった。セリオンだ。二階堂はその顔を見た瞬間、背筋が伸びた。
「皆さんよく頑張りました。全員レベル10に到達しましたので、次のステージへ向かっていただきます」
周囲がざわめいた。セリオンは続けた。
「レベル10到達の証として、皆様の職業に合わせた装備と武器をお送りします。こちらの星晶石に魔道デバイスをかざすと、収納魔法内に装備が収納されます」
神官たちが星晶石を持って召喚者たちの間を回り始めた。二階堂もデバイスをかざした。収納魔法の中に、何かが収まる感触があった。
セリオンは続けた。
「お部屋に戻り旅立ちの用意をして新たな装備に着替え、夕方こちらへお越しください。今までの装備と不要なものはそのままお部屋に置いておいてください。こちらで処分いたします」
二階堂はその言葉を聞いて、少し眉を寄せた。処分。その言葉が、妙に引っかかった。しかし周囲はすでに装備の話で持ちきりになっていた。二階堂は何も言わなかった。
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部屋に戻って、着脱の生活魔法を使って収納魔法内の新しい装備へそのまま着替えた。
鏡を見た。
収納魔法にしまわれた使い込んだ皮の鎧、初期装備の剣を取り出し部屋に置いた。召喚された日からずっと使ってきたものだった。
一秒だけ見てから、扉を開けた。振り返らなかった。
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夕方の神殿前には、すでに多くの召喚者が集まっていた。
それぞれが職業に合った装備を身につけていた。重厚な鎧の者、軽装の者、杖を持つ者。召喚された日の、全員が同じ簡素な装備をしていた頃とは別の景色だった。
二階堂は神殿の前に立って、その景色を眺めた。
ルーヴェ村を出る。それが、じわりと実感になってきた。




