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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第1章:「灯火の村と、始まりの嘘」
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第25話 声は、届いていなかった

 星冠の塔、王都の近郊にある大きな塔、その最上階には、窓がなかった。

 天井まで続く壁は石造りで、魔道具の明かりも灯されていない。それでも部屋の中は暗くなかった。床に刻まれた巨大な魔法陣が、青白い光を放っていた。

 魔法陣の中心に、光が浮いていた。

 よく見ると、その中に人がいた。

 

 ⸻

 

 蛍光灯。

 誰かの笑い声。窓の外を飛ぶ鳥。黒板に書きかけの文字。生徒たちの顔。突然部屋を包んだ光。見知らぬ場所の冷たい空気。セリオンと名乗った女の顔。

 断片が浮かんでは、消えた。

 五十嵐理香は膝を抱えて丸くなっていた。一糸まとわぬ姿のまま、光の中にいた。

 あれはついさっきのことだろうか。それともずいぶん時間が経ったのだろうか。分からなかった。自分の意識がはっきりしているのか、おぼろげなのかも分からなかった。眠っているのか起きているのかも、境界が曖昧だった。

 指先を動かそうとした。

 動いたのかどうか、分からなかった。

 

 ⸻

 

 1つだけ、はっきりしていることがあった。

 どこかに囚われている。

 それだけだった。

 この先どうなるのか、と考えようとした。思考が途中で霧散した。もう一度考えようとした。また霧散した。

 考えることをやめた。

 膝を抱える力だけが、かすかに残っていた。

 

 ⸻

 

 足音がした。

 遠かった。近づいてきた。止まった。

 光の外に、人影があった。

「もうすぐ他の皆さんは次のステージに向かうことになるわ」

 声がした。どこか遠くから聞こえるような声だった。

「よく頑張っているわね。ようやくあなたの力を発揮することができる」

 人影が動いた。微笑んでいるように見えた。

 足音が遠ざかった。扉が閉まる音がした。

 最上階に静寂が戻った。

 光の中で、五十嵐理香はただ丸くなっていた。声は、届いていなかった。

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