第25話 声は、届いていなかった
星冠の塔、王都の近郊にある大きな塔、その最上階には、窓がなかった。
天井まで続く壁は石造りで、魔道具の明かりも灯されていない。それでも部屋の中は暗くなかった。床に刻まれた巨大な魔法陣が、青白い光を放っていた。
魔法陣の中心に、光が浮いていた。
よく見ると、その中に人がいた。
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蛍光灯。
誰かの笑い声。窓の外を飛ぶ鳥。黒板に書きかけの文字。生徒たちの顔。突然部屋を包んだ光。見知らぬ場所の冷たい空気。セリオンと名乗った女の顔。
断片が浮かんでは、消えた。
五十嵐理香は膝を抱えて丸くなっていた。一糸まとわぬ姿のまま、光の中にいた。
あれはついさっきのことだろうか。それともずいぶん時間が経ったのだろうか。分からなかった。自分の意識がはっきりしているのか、おぼろげなのかも分からなかった。眠っているのか起きているのかも、境界が曖昧だった。
指先を動かそうとした。
動いたのかどうか、分からなかった。
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1つだけ、はっきりしていることがあった。
どこかに囚われている。
それだけだった。
この先どうなるのか、と考えようとした。思考が途中で霧散した。もう一度考えようとした。また霧散した。
考えることをやめた。
膝を抱える力だけが、かすかに残っていた。
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足音がした。
遠かった。近づいてきた。止まった。
光の外に、人影があった。
「もうすぐ他の皆さんは次のステージに向かうことになるわ」
声がした。どこか遠くから聞こえるような声だった。
「よく頑張っているわね。ようやくあなたの力を発揮することができる」
人影が動いた。微笑んでいるように見えた。
足音が遠ざかった。扉が閉まる音がした。
最上階に静寂が戻った。
光の中で、五十嵐理香はただ丸くなっていた。声は、届いていなかった。




