第22話 そんなのじゃありません
二階堂が立ち上がりながら言った。
「今日はもう帰ろうか」
「そうね」
三上も腰を上げた。一ノ瀬も荷物を手に取った。
「はい」
そのときだった。セーフティエリアの入口から数人の男子学生が入ってきた。
見覚えのある顔だった。高校からの内部進学者だ。向こうもこちらに気づいて、一人がにやりとした。
「あ、委員長たちじゃん」
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男の一人が一ノ瀬の方へ視線を向けた。口元に笑みを浮かべたまま、近づいてくる。
「最近さ、九十九だっけ。あの地味な奴とよく一緒にいるよね」
一ノ瀬は黙っていた。
「そういえばこの間、男子居住区から——」
「そんなのじゃありません」
自分でも思ったより早く声が出た。男は少し目を丸くしてから、また笑った。
「そんなのじゃって、どんなんじゃってね」
肩をすくめながら一歩近づいてきた。
「俺たちとも仲良くなろうよ」
手が伸びてきた。一ノ瀬の腕へ向かって。
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光が弾けた。
男の手が一ノ瀬の腕に触れる寸前、白い光が男たちを包んだ。次の瞬間、男子学生たちの姿が消えていた。
セーフティエリアに静寂が戻った。
「え、消えた」
三上が目を丸くしたまま、男たちがいた場所を見ていた。
「安全管理機構かしら」
二階堂が静かに言った。
「掴もうとしただけで発動するの?」
「行動だけじゃなくて意志も関係するとかじゃない?」
三上が首を傾けた。二階堂は少し考えるような顔をした。
「かもしれないわね。助かったけど、ずいぶん厳しいのね」
一ノ瀬はその会話を聞きながら、荷物を持つ手に力を込めた。さっき男が言いかけた言葉が、頭の中でまだ響いていた。
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三人でセーフティエリアを出て、帰り道を歩いた。
しばらく歩いたところで、二階堂が前を向いたまま言った。
「私たちはこういうことないけど、気を付けないとね」
「ほんとね」
三上があっさり返した。
「……そうですね」
一ノ瀬は前を向いたまま答えた。二階堂と三上がどこまで聞いていたのか、確かめる勇気はなかった。
三人の足音だけが、石畳に響いていた。




