第20話 続けた方がいい
今日は、なんだか違った。
いつもと同じはずなのに、胸の奥からじわりと温かいものが込み上げてきて、満たされたような気分がいつまでも続いていた。そのまま目を閉じたら、気がついたら朝になっていた。
はっと目を開けた。
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窓から差し込む光が、部屋の中を白く照らしていた。ベッドの中で上体を起こしかけて、視界の端に表示が浮かんでいることに気づいた。
レベルが、上がっていた。
まばたきをした。もう一度確認した。数字は変わらなかった。
横を見た。九十九がまだ眠っていた。
そっと鑑定を使った。
数字を見て、眉が寄った。前に確認したときより、レベルが下がっている。
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九十九の肩を軽く揺らした。
「……九十九くん」
九十九が目を開けた。天井を見て、それから一ノ瀬を見た。
「……一ノ瀬さん」
「起きてください、少し聞きたいことがあって」
九十九はゆっくり上体を起こした。髪が少し乱れていた。
「鑑定使いました」
「……うん」
「レベル、下がってますよね」
九十九は少し間を置いた。それから後頭部に手をやった。
「……レベル譲渡ってスキル、取ったんだよね」
「レベル譲渡」
「異性と関係持ったとき、条件によってレベルが上がることがあるって分かってたから。一ノ瀬さんのためになるかと思って」
「うん、スキルの説明に書いてあった」
「発動条件は」
「その……したときに、なんかの条件で発動するみたい」
一ノ瀬は自分のステータスを確認した。また九十九を鑑定した。
「スキルポイントは毎回増えて、レベルが上がるのは条件次第ってこと……ですか」
「……たぶん、そういうことだと思う」
一ノ瀬はしばらく黙っていた。窓の外で鳥の声がした。
「これ、すごくないですか」
九十九は一ノ瀬を見た。
「じゃあ」
一ノ瀬は言いかけて、口を閉じた。眼鏡のブリッジを人差し指で押し上げて、また口を開いた。
「続けた方がいいってことですよね」
九十九は何も言わなかった。一ノ瀬も何も言わなかった。部屋の中に朝の光だけが広がっていた。
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人目につかないように部屋を出た。九十九の部屋の扉が閉まる瞬間は、誰にも見られなかった。
でも、男子居住区を抜けるところで、視線を感じた。
振り返ると、数人の男子がこちらを見ていた。朝早い時間に女子が男子居住区から出てくる。それだけで十分だった。
一ノ瀬は前を向いて、歩く速度を変えなかった。耳の先が熱かった。




