第16話 魔法ってなんだろう
おかしい。
ダンジョンの通路を進みながら、ずっとそのことを考えていた。
前方に魔物が現れる。反射的に杖を構えて火の魔法を放った。直撃。魔物が光となって消える。
また魔法を使った。
また同じ疑問が浮かんだ。
「瑠奈、どうしたの? さっきから変な顔してる」
澪ちゃんが振り返る。
「変な顔してない」
「してるよ」と楓ちゃんが言った。
「……ちょっと考えてることがあって」
「何を?」
答えようとして、うまく言葉にできなかった。
「後で」
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セーフティエリアで休憩を取った。
石造りの壁に囲まれた小さなスペース。魔物は入ってこられない。三人で座って水を飲んだ。
「ねえ」
口を開いていた。
「魔法って、何だと思う?」
澪ちゃんが少し考えてから答えた。
「使えればいいんじゃない?」
「楓ちゃんは?」
「確かに不思議ですよね。なんで使えるのかって考えたことはあります」
「でしょ」
杖を膝の上に置いて、続けた。
「私、火と水の魔法が使えるじゃない」
「うん」
「同時に発動しても打ち消し合わないんだよね」
澪ちゃんが首を傾げる。
「そういうものじゃないの?」
「普通に考えたら打ち消し合うはずなんだよ。火と水なんだから。でも打ち消し合わない」
「……言われてみれば」
楓ちゃんが眼鏡の位置を直した。
「詠唱もしてないよね、私たち」
「そう。なんで発動できるのか、感覚では分かるんだけど理屈が分からない」
魔力を使う時の感覚は確かにある。何かを引き出すような、押し出すような感覚。でもそれが何なのか説明できない。
「魔力って何なんだろう」
誰も答えなかった。
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休憩を終えてダンジョンを進む。
戦闘をこなしながら、観察を続けた。
魔法を使うたびに気づくことが増えていく。発動する時の感覚。魔力が動く方向。炎が広がる形。水が流れる軌跡。
バラバラに見えて、どこかに規則性がある気がした。
まるで誰かがルールを決めて、そのルールの上で動いているみたいだ。
自然現象じゃない。
設計されている。
そんな気がした。
「瑠奈、また変な顔」
澪ちゃんの声で我に返る。
「してない」
「してる」と楓ちゃんまで言う。
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ダンジョンを出て、居住区へ戻る途中だった。
「魔法って」
また口が動いていた。
「誰かが作ったルールの上で動いている気がする」
澪ちゃんと楓ちゃんが顔を見合わせた。
「どういう意味?」
「分からない」
正直に答えた。
「でも気になる」
二人はそれ以上聞いてこなかった。聞いても答えが出ないと分かったのかもしれない。
部屋に戻って、杖を眺めた。
小さな炎を手のひらの上に灯す。揺れる炎を見つめながら、また考え始めた。
なぜこれが存在するのか。
なぜこのルールで動いているのか。
答えはまだ出ない。
でも観察をやめることができなかった。




