↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第1章:「灯火の村と、始まりの嘘」
14/62

第13話 私たち、何かおかしい

 二階堂澪には、聞くつもりはなかった。

 居住区へ戻る途中、歓楽街の近くを通りかかった時だった。男子学生たちの声が聞こえてきた。

「あの店さ、召喚者とはしなくていいって言われてさ」

「え、マジで?」

「得じゃん」

 得意げな笑い声が続く。

 思わず眉をひそめた。立ち止まるつもりはなかったのに、足が止まっていた。

 避妊が必要ない。

 その言葉だけが頭に残った。

 危険じゃないのか。そもそもなぜそんなことが分かるのか。召喚されてまだ1か月程度のはずなのに、なぜ断言できるのか。

 早足でその場を離れた。

 

 ⸻

 

 部屋に戻ってからも、頭から離れなかった。

 ベッドに腰を下ろして考えているうちに、ふと気づいた。

 そういえば。

 召喚されてから、月のものが来ていない。

 最初は環境が変わったせいだと思っていた。異世界に来たのだから、身体に影響が出ても不思議じゃない。でも1か月経っても来ない。

 それだけじゃない。

 髪が伸びていない気がする。

 召喚された時と同じ長さのままだ。爪も同じだった。切れば短くなるが、気づけばまた元の長さに戻っている。

 おかしい。

 髪や爪が伸びるのは細胞が増殖するからだ。切れば戻るということは、増殖していないのではなく……再生している?

 いや、待って。

 怪我をすれば治る。それは確認している。でもそれは治癒であって再生とは違う。髪や爪が元の長さに戻るのは治癒なのか、それとも別の現象なのか。

 新陳代謝が止まっているとしたら、月のものが来ないことも説明がつく。でも怪我が治るなら細胞は機能しているはずで……。

 頭が痛くなってきた。

 理屈は分かるのに、答えが出ない。

 一人で抱え込むのはやめようと思った。

 魔導デバイスを手に取る。

『ちょっと聞いていい? 部屋に来られる?』

 楓へメッセージを送った。

 ⸻

「月のもの、来てる?」

 部屋に来た楓に、単刀直入に聞いた。

 楓が目を丸くする。

「……来てない」

「やっぱり」

「澪さんも?」

 頷く。瑠奈にも連絡して、三人が揃った。

「髪、伸びてる?」

 瑠奈が自分の金髪を引っ張りながら首を傾げる。

「伸びてない……気がする」

「爪は?」

 三人で手を見合わせる。

「召喚された時と同じくらいだよね」

「切っても戻ってる」

 部屋の空気が少しずつ重くなっていった。

「私たち……何かおかしくない?」

 楓が静かに言った。

 誰も否定しなかった。

「子供も……作れないってことになるよね」

 瑠奈が珍しく真剣な顔で呟く。

 また沈黙。

「王国に聞いてみる?」

 言いかけて、止まった。聞いて答えてもらえるか分からない。そもそも答えを知っているのかも分からない。

「……今日のところは」

 楓が静かに立ち上がった。

「また三人で話しましょう」

 瑠奈も頷いて、二人は部屋を出た。

 一人になった部屋で、窓の外を見る。

 夜の空に星が出ていた。

「私たちって、何なんだろう」

 誰もいない部屋に、言葉だけが落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。