第100話 白に溶けていく
光が、視界のすべてを塗り潰していった。
通路の壁も、天井も、傍にいるはずの誰かの輪郭さえも、白の中に溶けていく。零司は目を閉じることもできないまま、ただその中に身を委ねていた。
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召喚された日の光景が、脳裏をよぎった。
講義室に満ちた光。見知らぬ村に降り立った瞬間。一人でダンジョンに潜っていた頃の孤独。整いすぎた環境への、拭えなかった違和感。
それらが、時系列を失ったまま、次々と重なり合っていく。
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鑑定スキルを使ってしまい、困惑していた楓の顔。
夜、テントの中で小さく震えていた手。
「協力します」という、あの日の声。
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委員長として気を張っていた澪の背中。
不格好なウサギのぬいぐるみを縫う横顔。
「私も手伝う」と告げた、震える声。
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手を離さなくていいと言った、あの日の瑠奈の体温。
ペンダントを選んでいた時の笑顔。
「零司、暖かい」と呟いた声。
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光の中で丸くなっていた先生の姿。
「絶対に、帰るのよ」という言葉。
震える指先で、それでも術式を繋ぎ止めようとしていた背中。
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すべての声が、言葉としてではなく、ただ響きとして零司の中に残っていた。繋いだ手の感触。体温。何度も交わした視線。
それらが、今、ひとつに重なっていく。
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身体の輪郭が、少しずつ薄れていく。怖くはなかった。ただ、静かに手放していくような感覚だった。
遠くで、誰かが自分の名前を呼んだ気がした。それが誰の声だったのか、零司にはもう分からなかった。
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すべてが、白に溶けていった。




