↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第4章:「還る場所、還らないもの」
100/101

第100話 白に溶けていく

 光が、視界のすべてを塗り潰していった。

 通路の壁も、天井も、傍にいるはずの誰かの輪郭さえも、白の中に溶けていく。零司は目を閉じることもできないまま、ただその中に身を委ねていた。


 ⸻


 召喚された日の光景が、脳裏をよぎった。

 講義室に満ちた光。見知らぬ村に降り立った瞬間。一人でダンジョンに潜っていた頃の孤独。整いすぎた環境への、拭えなかった違和感。

 それらが、時系列を失ったまま、次々と重なり合っていく。


 ⸻


 鑑定スキルを使ってしまい、困惑していた楓の顔。

 夜、テントの中で小さく震えていた手。

「協力します」という、あの日の声。


 ⸻


 委員長として気を張っていた澪の背中。

 不格好なウサギのぬいぐるみを縫う横顔。

「私も手伝う」と告げた、震える声。


 ⸻


 手を離さなくていいと言った、あの日の瑠奈の体温。

 ペンダントを選んでいた時の笑顔。

「零司、暖かい」と呟いた声。


 ⸻


 光の中で丸くなっていた先生の姿。

「絶対に、帰るのよ」という言葉。

 震える指先で、それでも術式を繋ぎ止めようとしていた背中。


 ⸻


 すべての声が、言葉としてではなく、ただ響きとして零司の中に残っていた。繋いだ手の感触。体温。何度も交わした視線。

 それらが、今、ひとつに重なっていく。


 ⸻


 身体の輪郭が、少しずつ薄れていく。怖くはなかった。ただ、静かに手放していくような感覚だった。

 遠くで、誰かが自分の名前を呼んだ気がした。それが誰の声だったのか、零司にはもう分からなかった。


 ⸻


 すべてが、白に溶けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。