正式な婚約06
クラウス様からの話では、リリアは子爵家の娘と言ってはいるものの、メイドとの間に産まれた子供らしい。
本妻の子供ではなく、妾腹の子供。
良くありがちな話だ事。
なん度か手を出され出来た子供だからか、彼女の母親は子爵のお気に入りだったのかしら?
子爵家と言えば、貴族の中でも階級は下の方。
とは言え、良くない噂は流されるだろう。
子爵家や男爵家の子息、令嬢からは文句は言われないだろうけど。
他の伯爵家や侯爵家、公爵家からは話のネタになっている事だろう。
「ゴメンなさい、アリス様に気安く声を掛けてしまって」
「私は良いわ、気にして居ないもの。リリアはこんなお茶会は初めてなの?」
「初めてです。今はまだ、家ではマナーなどを教えて貰っている最中ですから」
荒削りではあるものの、良く仕込まれている。マナーを教えてくれる家庭教師がよっぽど良いのね。
所作の一つ一つが良く出来ている。
リリアは私の視線に気づいて、首を傾げている。
「あの、どうかなさいましたか?」
「いいえ、なんでもないわ。クラウス様、私はそろそろ失礼させて頂きます」
帰る事をクラウス様に伝えると、もう帰ってしまうのと言いたそうな顔を一瞬したけど、何故かすぐにニヤッと笑われた。
…なにか企んでいらっしゃる顔だと言うのは、すぐにわかってしまった。
「クラウス様、なんですかそのお顔は」
「残念だけど、アリス。君はこの城に泊まる事が決まった」
後ろから失礼致しますと声を掛けてきたのは、アインハルトだった。
通りで、熟年の執事が私に付いててアインハルトの姿が見えないと思ったら。
「申し訳ありません、アリス様。クラウス様のたってのご希望でして。お父君には了承を頂きまして、執事たちにも連絡をさせて頂きました」
(――なにをしてくれちゃってんだ!)
内心大荒れになっているけど、顔は笑顔を貼り付けたままに。
アインハルトは焦っているけど、クラウス様は決まったからかにこにこしていらっしゃる。
「…意地悪な方ですのね、クラウス様」
「大丈夫ですよ、アリス様。スティーブ様もご一緒なら、とアリス様に付いていらした執事に頼まれまして。スティーブ様の方には、先に伝えさせて頂きました。スティーブ様もご了承下さってます」
大丈夫ではないけど、シャノンが気を利かせてくれたのね。
自分たちは泊まれないから、身内のスティーブが居れば安心だろうと。
安心できるのは家だけなのよ!
やだ、もう…帰りたい。




