正式な婚約03
お父様やお母様に見送られ馬車で一人、城への道を揺られていた。
途中、なにやら女の子の泣き声が聞こえた。
平民の女の子が、男の子に苛められている所だった。
…全く、何処の世界でもこう言う輩は居るのね。
「シャノン、停めてちょうだい」
「それは構いませんが、お茶会のお時間に間に合わなくなりますよ?」
「お茶会に間に合う事より、女の子を助ける方が優先よ」
馬車を停めて貰い、自らケンカを止めに行こうとする。
シャノンと御者として乗っていたアーノルドに止められたけど、私は聞かずに子供たちに近付いていく。
「――お止めなさい」
男の子の手が女の子に降り下ろされそうになった間一髪の所を、私は止める事が出来た。
あのまま降り下ろされていたら、女の子の頬は赤くなっていたに違いない。
男の子の手首を掴み、阻止できてホッとしたのも束の間、泣いている女の子と目が合った。
(…なに、この子。本能がこの子に近寄るなと言っているような…。…いえ、気のせいよね)
「誰だよ!お前は!」
「ただの通りすがりよ。…貴方たち、寄って集って一人の女の子になにをしているの?」
「んだよ!お前には関係ないだろ?!」
「えぇ、確かに関係ないわ。…男が女に暴力を振るうなんて、許される事ではないの。――さぁ、子供はお家に帰りなさい」
私の気迫に圧されてか、しどろもどろになりながら去っていった。
…子供といえども、悪い事は叱ってあげなければ。
「あのっ、ありがとう!私はリリア。貴女は?」
「名乗る程の者ではないわ。可哀想に…、怪我してるじゃない。…うん、これで良いわね。そのハンカチはあげるわ。私は良く此処を通るから、また機会があれば会えるかもしれないわね」
「お嬢様、お急ぎ下さい」
リリアに背を向け、馬車を走らせる。
…あの時、リリアから感じた悪い予感はなんだったのかしら?
「アリス様、あの少女にはあまり関わらない方が良いんじゃない?…嫌な感じがした」
「シャノンも感じたの。…なら、私の嫌な予感も正解かもしれないわね。はぁ…、どうしたものかしら」
外に聞こえない程度の声音で話していたのは良いけど、お城に着いたのはお茶会がもう中盤に差し掛かった頃だった。
「アリス!遅かったから心配していたんだよ。どうしたの?君が遅れてくるなんて、滅多にないのに」
クラウス様に謝り、さっきの事を話すと納得して下さった。
「アリスのそう言う所、良いと思うよ」
クラウス様は、笑顔でそう言って下さった。




