顔合わせ04
お兄様が罪な人になりそうと思ったのは、其処に惚れる人も出てくるだろうと思ったからなのだけど。
そんな事を思っている私は、今とてつもなく憂鬱なオーラを纏っている。
…クラウス様との対面の日が、すでに今日の事になっているから。
約束の時間に刻一刻と迫ってきている。
お父様とお母様は謁見の間に通され、先に挨拶をするとの事で、私だけ客間のような所で待たせて貰っている。
一人では退屈だからと、メイドさんたちがお菓子と紅茶を用意してくれた。
それを少しつまみながら待っている事、十分ちょっとした頃。
コンコンとノック音がして、誰かが部屋を訪れたみたい。
「何方ですか?」
声を掛けると、扉から男の子が顔を覗かせた。
あら、可愛らしい男の子だ。
貴族の子供かしら?
でも、今日は夜からパーティーを開くから、この城に子供が居るのは可笑しい。
この子はもしかすると――
「君は、誰?」
「私はアリスです。貴方のお名前は?」
男の子が口を開こうとした瞬間、また誰かが部屋を訪れた。
返事をすると、入ってきたのはメイドさんだった。
「失礼致します、アリス様。此方に何方かいらっしゃいませんでしたか?」
メイドさんが探しているのは、さっきの男の子だろう。
姿が見えないと言う事は、言わないでほしいと言う事なんだろうな。
仕方ない、ちょっと気が引けるけど、庇ってあげようじゃない。
「この部屋には、誰も来ていませんが。誰か探しているのですか?」
「いえ、それなら良いのですが。…何処に行かれたのでしょうか、あの方は」
それだけ呟くと、メイドさんは私に頭を下げて部屋を出ていった。
…メイドさんが出ていって、足音が遠退いた頃。
何処に隠れていたのか…男の子が出てきた。
「色々あって、メイドから逃げてたんだ。助けてくれてありがとう」
「いいえ。…貴方のお名前を聞いても良いですか?」
男の子は少し考えているような素振りを見せ、ニコッと笑って教えてくれた。
「僕の名前は、クラウス。宜しくね、アリス」
(――王子と同じ名前だけど、此処は気にしたら負けな気がする。お兄様の言っていたような雰囲気はないし。どちらかと言うと、可愛らしさが滲み出ている)
などと言い訳のように解釈し、クラウス様とのお茶を楽しむ。
「そう言えば…クラウス様は、何故メイドから逃げていらしたのですか?」
クラウス様は苦笑いをしながら、こう答えてくれた。
“婚約者が出来たから”、と。
…えっ、その話が本当なら相手は私…。




