閑話 襲来するまで後数時間
俺の従妹は、可愛い。
身内の目から見ても、その可愛さは歴然。
俺だけじゃなく、俺の兄弟、アリスの兄たちもアリスが可愛くて仕方ない。
…仕方ないとは言うものの、アリスの兄たちはアリスにつれない態度を取る。
賢いくせに、其処だけ馬鹿なんだと何度も思ったものだ。
「あら、スティーブ。貴方は本当に、アリスの事が大好きなのね」
母上にそう言われて気付いたのもある。
…けど、俺には誰にも言えない秘密がある。
結論だけ言おう、俺には前世の記憶がある。
アリスは前世からの縁があるのか、何故か“彼女”の面影を見る時もある。
容姿は全く似てないんだけどな。
(…まぁ、なんとなく嫌われてんなとは思うんだけど。嫌われてるのは、この笑顔か)
たまに言われる、胡散臭い笑顔。
それは記憶が戻ってから、向こうで使ってた笑い方が出てしまっているだけで、本当はこんな笑顔ではない。
記憶が戻ってからはどうしても、胡散臭い笑顔しか出来てないようで。
メイドにも言われてしまった。
“胡散臭いですよ、スティーブ様”とね。
本人である俺がわかってるから怒りはしないんだけど、はっきり言う人だなとはその時に思った。
そのメイドは母上のお気に入りで、母上に良く付き従っている。
まぁ、俺にも専属の執事が居るんだけど。
「スティーブ様、本日のご予定ですが…」
手帳に書かれている予定を逐一報告してくれてるのは良い、良いんだけどさ。
「…それ、昨日の予定だろ?今日はなにも入れるなって言ってあった筈だけどな?」
「あっ、申し訳ありませんでした。…はい、今日のご予定はなにもありませんが…。何故、今日なのですか?」
「あぁ、今から出掛ける。支度をしてくれ」
アリスの誕生日の翌日だからな。
父上と母上には、前もって伝えてある。
俺がこれから叔父上の所に行くんだ。
プレゼントも馬車に積み、ルーテシア家に行く事を伝える。
「スティーブ様、ルーテシア家にご用がおありだったのですか?」
「いや、俺の可愛い従妹に会いにな。昨日は家族水入らずで誕生会を開くと聞いていたから、日にちをずらしたんだ。…なんだよ、なんか言いたそうな顔して」
執事は笑いを堪えたような顔をして、此方を見ているのに気付いた。
なんだよ、なにが言いたいんだよ。
「いえ。ただ、スティーブ様は本当にアリス様がお好きなのだと思いまして」
俺は朝早くからアリスに会う為だけに、馬車を急かす。
本人には苦手意識を持たれてるから、素直になれないんだけどな…。




