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ローガンと別れてしばらく歩いていると、思わぬ人が前から歩いて来た。
ヴィンセント王太子と、友人のアレク・ローウェルだ。
ヴィンセントは相変わらず、歩くだけで輝く光を振りまいているような美しさだ。
その隣のアレクはつややかな黒髪を一つにまとめた、落ち着いた雰囲気の美形だ。
ヴィンセントのような華やかさはないものの、一度見たら目が離せなくなる。
エレノアは直ぐにまわれ右をして、二人から離れようとした。
別にどうという感情が湧くわけではないのだが、やはりあのようなことがあってからは、顔を合わせたいとは思わない。
気付かれる前に、逃げ出してしまおうとエレノアは思った。
しかし道は一本道。
二人は直ぐにエレノアに気が付いた。
ヴィンセントはエレノアを呼び止めると近づいて来た。
「元気そうだな」
どうして話しかけてくるのよ。
さすがに王太子を無視することはできない。エレノアは仕方なく返事をした。
「ヴィンセント様もお元気そうでなによりです」
作法にのっとって優雅に礼をする。
そんなエレノアをヴィンセントはうろんな目つきで見た。
「騎士を目指しているらしいな」
エレノアは少し驚いた。
まさかヴィンセントがエレノアのことを気にかけているとは思わなかったからだ。
「もともと体を動かすのは好きなので」
ヴィンセントは面白くなさそうにふんと鼻を鳴らした。
「そんな話、初めて聞いたよ」
「ヴィンセント様の婚約者としてはふさわしくない行動だと思っていたので、控えておりました」
「俺に嘘を付いていた、というわけだ」
エレノアは思わずヴィンセントの言葉に眉をひそめた。
ヴィンセントを見ると、かなり不機嫌そうな顔をしている。
どうしてヴィンセントが不機嫌になるのか、エレノアにはさっぱりわからない。
「私はヴィンセント様の婚約者として、私なりに精一杯してまいりました。
体を動かすことを黙っていたのも、ヴィンセント様が私の行動で恥をかかないためです。
それを嘘つき呼ばわりされるのは、心外です」
エレノアの真っ直ぐな言葉にも関わらず、ヴィンセントは冷たい視線を向けた。
「エレノアはいつも優等生の返事しかしないよな。
だけど女性騎士になりたいと言うのは建前で、本当は婚約者探しの一環なんだろう」
エレノアは驚きすぎて言葉が出なかった。
言い返してこないことをいいことに、ヴィンセントは続けた。
「イザベラも言っていた。
お前が女性騎士になりたいというのは建前だと。本当は俺に振られたことに焦って、優秀な騎士候補の中から新しい婚約者を見つけることが目的だと」
エレノアは痛くなるほど自分の手のひらを握りしめた。
こんなふうに腹が立ったのはいつぶりだろう。
例え王太子と言えども、自分の夢をこんな形で貶めるなんて許せない。
「いくらヴィンセント様のお言葉だとしてもあんまりです。
私はそんなつもりで騎士を目指しているわけではありません!」
エレノアはヴィンセントを思い切り睨みつけた。
その視線にヴィンセントは驚いてたじろぐ。
「どうしてそんなことを言われなければならないんですか。
私が騎士を目指そうが、貴方には何の関係もないじゃありませんか!」
言いながらも、目の奥が熱くなる。
だけどそんな弱いところを、ヴィンセントには見せたくなかった。
「失礼します」
声が震えるのを必死に我慢しながら、エレノアは顔を伏せて二人の前から走り出した。
馬車に飛び込むように乗ると、先にいたカイが驚いた。
「お、お姉様、どうしたんですか?!」
オロオロとするカイに何も言わないで、エレノアは悔しくて思いきり泣いた。
「どうしてあんなことを言っちゃうかな」
アレクは呆れたようにヴィンセントの背中に問いかけた。
「いくらイザベラが言ってたとはいえ、エレノア嬢がそういう人じゃないって言うのは、ヴィンセントがよく知っているんだと思っていたけれど」
そうだ。
あのド真面目なエレノアだ。
婚約者を探して騎士科に行くようなことはないことぐらい、誰よりもよく知っている。
だけど、たまたま見かけた騎士科の授業で、あまりにも楽しそうに笑うエレノアを見て、ヴィンセントは驚いた。
一瞬、誰か分からなかったぐらい。
ヴィンセントが知っているエレノアは、笑顔が少なく、常に緊張感が漂っていた。
そして、家庭教師のようにヴィンセントの行動に文句をつけるのだ。
人のうえに立つ人間はどうだとか、もっと周りをよく見て、公平に扱えとか。
ヴィンセントと一緒にいても、エレノアが楽しそうにしていたことはあまり記憶にない。
それなのに、たった一週間ほどの付き合いの奴らとは、見たことのない笑顔で笑うんだと思うと、プライドが傷つけられた。
だからと言って、泣かせたいわけではなかったのだが……。
「うるさい。
アレクはエレノアの味方なのか」
「いいえ。
だけれども、ヴィンセントらしくないなと思って」
ヴィンセントは唇を強く噛んだ。
どうしてこんなにイライラするんだ?
ヴィンセントはアレクを無視して、無言で歩き始めた。
※本作品は、ChatGPTなどのAIを補助ツールとして活用し、誤字脱字の確認や文章表現の整理を行っています。世界観・設定・ストーリー・登場人物はすべて作者によるオリジナルです。
※本作品は「カクヨム」と「小説家になろう」で同時連載しています。掲載内容は基本的に同一ですが、更新日時が前後する場合があります。




