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三ヶ月後、エレノアは久々に制服に袖を通し、カイと学園に降り立った。
今日から新年度ということもあり、カイも含めて多くの学生が入学してきた。
その中にはエレノアのことを知らない生徒も多い。
しかし、エレノアのことを知っている生徒は、彼女の姿をみたとたん、その変化に驚いて目を見張った。
エレノアは腰まで美しく伸びていた髪を肩までバッサリと切っていたのである。
髪の長さと美しさは、貴族の証しであり、美人の条件だ。
その姿に女生徒は言葉を失っていた。
「お姉様、大丈夫ですか?」
想像以上の注目にカイは心配そうにエレノアを見る。
そんなカイを安心させるように、エレノアは微笑んだ。
「大丈夫よ、カイ。安心して」
「同じ学年だったら、俺がお守りするのに」
「あいかわらず大げさね」
エレノアは笑顔で手を振ってカイと別れた。
教室に入ると、クラスメイトたちが一斉にエレノアを見た。しかし誰一人として話しかけてくる者はいない。
教室は言葉にできない緊張感に包まれた。
まあ、しかたないか。
そもそも特に親しい友人もいるわけではない。王子の婚約者、そして公爵家の令嬢という肩書きから、ほかの生徒とはもともと壁はあった。
その上での三ヶ月前の事件なので、クラスメイトとの距離がさらに広がってしまったのもしかたがないだろう。
だけれども、そんなことをいちいち気にしていられない。
別に友だちを作り直そうと思って学園に戻って来たわけではないのだから。
エレノアは何事もなかったように、静かに席に座ると、誰とも話すことなく午前の授業を終えた。
午前の授業が終わると、ゆっくりとした休憩時間がある。
今までならサロンや図書館で過ごすところだが、なるべく目立たないように中庭のさらに奥、誰もいないようなひっそりとした場所にエレノアはお弁当を持ってやってきていた。
気にしないようにはしていたけれど、午前中の授業は、さすがに緊張していたようだった。
やっとほっとひと息つくことができた。
午後に向けて、食事はしっかりととっておかないと……。
そう思って、お弁当を開けたときだった。木陰がガサガサと揺れ、エレノアはぎょっとした。
注意深く音のする方を見ていると、美しい女子学生が現れた。
どこを通って来たのか、白銀に近い金髪の髪に、葉っぱが付いている。
「フィラ、どうしたのこんな場所に」
「エレノア様、お久しぶりです。
教室では、ほかの方の目が気になって声をかけられなくて、申し訳ございません」
同じクラスのフィラは、どちらかと言うと一歩下がって皆に付いて行くようなタイプだ。だから話がしたくても教室ではとても話しかけられなかったのだろう。
「私、あの日のことを謝りたくて……」
「あの日のこと?」
フィラは青い目を伏せた。話そうとするが、緊張しているためか、声が震えている。
「エレノア様がヴィンセント王子に婚約を破棄された日のことです」
「ああ」
エレノアからすると、はるか昔のような感覚だ。
「そもそも私が原因で、エレノア様の婚約が破棄されたのですから。
エレノア様は私をかばって下さっただけなのに……」
落ち込むフィラにエレノアは笑いかけた。
「あなたが悪いんじゃあないのよ。
すべてヴィンセント王子が決めたことなのだから。
それに私あまり気にしていないのよ」
「でも……髪が……」
フィラは痛々しそうにエレノアの髪を見た。
「これはね。うっとうしいから切ったの。本当はもっと短くしたかったのだけれども、家族に止められてしまって」
この世界では、貴族の女性が髪を短くするなんて、考えられない話だ。それだけ美しく長く伸びた髪は美と財力の象徴なのである。
「でも私、女性騎士を目指そうと思ったから、長い髪なんて邪魔でしかたがないのよね」
「……女性騎士?」
フィラは聞いたことがない言葉に、首をかしげた。
「エレノア様は卒業されたら修道女になるとお聞きしましたが」
「……なんのこと?」
二人は顔を見合わせて、同じように首をかしげた。
「私が聞いた話では、エレノア様は婚約破棄が、あまりにもお辛くて、世をはかなんで修道女になると」
エレノアは驚きのあまり、口を大きく開きそうになった。さすがにそれははしたないと、手で口を押さえる。
どこ情報なのよ!
「私がなりたいのは女性騎士。
それに世をはかなんでもないわ。
弟が教えてくれたのよ。女性王族を守るための女性騎士がいるって。
だからそれを目指そうと思ったの」
「……あの、失礼ですが、エレノア様が剣を持って戦うということですか?」
エレノアはこくりと頷くと、フィラの顔が青くなった。
「おやめください、エレノア様! いくら婚約破棄がショックだったからと言って、そんなこと……!」
「だから、婚約破棄はいいきっかけにすぎないの。
そもそも私なんて王妃に付くような器ではないし、王子も好きな人と幸せになれるのならそのほうがいいでしょう」
「まあ、それはそうだと思いますけれど……エレノア様はそれでよろしいのですか?」
「だから、私はもういいんだって」
フィラは不思議そうにエレノアを見た。
「なんだかエレノア様、雰囲気がかわりましたね」
「……そうかもしれないわね。
私も王子との婚約者として気を張っていたから、少し厳しかったかも」
「ええ。本当に」
フィラの言葉にエレノアはぎょっとする。しかし彼女はふわりと美しい笑顔を浮かべた。
「でも、私は今のエレノア様も素敵だと思いますわ。
私、エレノア様を応援しますね」
「あ、ありがとう」
彼女は美しいお辞儀をすると、軽やかに去って行った。
なんだったのかしら?
エレノアは首をかしげ、再びランチを食べ始めた。
※本作品は、ChatGPTなどのAIを補助ツールとして活用し、誤字脱字の確認や文章表現の整理を行っています。世界観・設定・ストーリー・登場人物はすべて作者によるオリジナルです。
※本作品は「カクヨム」と「小説家になろう」で同時連載しています。掲載内容は基本的に同一ですが、更新日時が前後する場合があります。




