第20話 メイ姫一行救出作戦
ゼギアス大皇国の皇都と魔防都市メサルテを繋ぐ大街道。
これまで通った街道とは打って変わって、大理石? ってくらい綺麗な道が続いている。
「ここです。ここで襲われたのです」
そう言って、魔人族の若者のボンベさんが辺りを見渡す。
俺たちもつられて周囲をうかがった。
大街道の脇には光魔石を埋め込んだ柱がズラリと並び、短く刈り込まれた芝生が広がっている。
遠くには城壁が見えた。
皇都とメサルテの間、全てを囲んでいるそうだ。
「こりゃ奇襲されるとは……思わねえな」
隠れる所もなんもねえや。
溜息交じりに呟くと、マキマキとアグーが同意するように頷いた。
俺たちは二手に分かれた。
メイ姫とソマリさんの救出は、俺・マキマキ・アグー・アルセーヌさんで、
戦争を止める組は、シソーヌ姫・アルマ・ソレガシの旦那・サジーさん達だ。
シソーヌ姫はこっちに来たがったが、サジーさんにシソーヌ姫はこっちでやってもらいたい事があるって言われた。
しょうがなく向こうに回ったシソーヌ姫は「絶対メイちゃんを助けてね! 絶対だよ!」って、言っていた。
当然だよ。
メイ姫たちが狙われてんのは分かってたのにさ、ここまで来れば大丈夫なんて勝手に考えて、油断した。
「転移の魔術で現れたんです。多勢を転移させる事の出来る男、ただものではありません」
悔しそうなボンベさん。
俺は気になる事を、もう一度確認する。
「ボンベさん。襲ってきた奴らのリーダー格は、白い仮面を着けてたって言ったよな?」
「ええ。特徴のない、ただの丸い仮面でした」
「青っぽい服装の?」
「はい。自分より身長が低い、濃い藍色の軽鎧を着た男です」
俺はマキマキとアグーを見る。
「どう思う?」
「偶然でしょうか?」
「それにしては特徴が似すぎておる。同一人物とは限らんが、何かしらのかかわりがあると思って動いた方が良さそうぢゃの」
ガドニア侯国を扇動した、宰相チョーロク。
濃い藍色のローブと白い仮面を身に着けた、140センチくらいの男。
俺がぶっ倒した強敵だ。
細かい特徴は違うけど、同等の厄介なヤツが動いてると考えるべきか。
「転移で動いているとすれば、足跡をたどるのは簡単ではありませんな」
アルセーヌさんが馬車の上から声をかけてくる。
「ボンベ殿。襲撃してきたのはやはり、過激派の連中かの?」
「だと思われます……。昆虫人、樹人、鳥人など、原種主義が多数派を占める種族ばかりでした」
原種主義は他の種族と関わりを持たないんじゃねえのかよ。
何を群れてやがるんだ、くそ。
「転移の魔法って、距離に制限とかないのかな?」
「ございます。転移させる人数と術師の力量によりますが、大陸最高の転移術を扱うサイロス宰相でも100人の座標を合わせられるのは、200キロメートルが限度でしょう」
アルセーヌさんは博識だね。
200キロか。一応その辺を基準に考えるかな。
俺はゴソゴソと腰の袋から通信魔導具を出した。
「なんですかソレ?」
「通信魔導具だよ。メイさんが持ってんのと対になってんだって」
「え! カブラギさん、いつの間にメイ姫と……」
「いや! 違うって! まあ、今はいいじゃんか、な」
「……まぁ、それどころじゃないですけど」
この通信魔導具からは細いエネルギーがヒモみたいに伸びてる。
対になってんなら、エネルギーの先はもう一つの通信魔導具だろう。
「使うんですか?」
「まさか。掴まってる先で連絡なんてできねえだろ。万が一相手にバレたらメイさん達があぶねえし」
「ではどうするのかの?」
「コレでメイさんがどっちの方角にいるのか分かる。方角が分かれば位置が特定できんだけど……ちょっと遠いな」
細かい魔素の流れが見える俺だからこそだ。
でも今のままだと200キロはキツイ。
「通常フォームで探るのは無理だな、戦闘フォームならもう少し探る範囲が広がるけど……応援エネルギーがちょっと足りねえや」
「カブラギさん頑張って!」
「よし足りた」
ボッとガイアスーツが紅い光に包まれて、肩と肘のパーツと仮面のアイシールドの部分が鋭利に変化する。
「アスガイアー・アイ!」
ピピピとアイシールドが音を出す。
エネルギーが伸びている先、200キロを探ってみた。
これ情報量がめちゃくちゃ多いから酔いそうになるんだよね。
言ってる場合じゃねえけどさ。
お、いたわ。
見つけた。
「90キロくらい離れた場所の岩山だ。メイさんもソマリさんも、他の3人もいる。生きてる」
「おお!!」
ボンベさんが叫ぶ。
「3人は私を逃がすために残ったのです! 良かった!」
メイさんが生きているのは分かる。
人質だ。
交渉事があるんなら必要だわな。
ソマリさんと護衛の三人が生きてるのは何でだ?
……答えを知るのは簡単だ。
攫った奴らに聞きゃいいんだ。
力ずくでな。
「その辺りの岩山と言えば魔石の採掘場でしょう。労役刑に処された者が集まる場所で、過激派の収監者もそこに集まっているはずです。……過激派が隠れ家とするには合理的でしょう」
アルセーヌさんも納得みたいだ。
「何を企んでるのか知らねえけどさ、実行するヒマも与えねえ。俺たちの仲間に手を出したことを後悔させてやる」
「カブラギさん……」
ガイアスーツが少し、禍々しく歪んだ。
「行こう」
みんなで馬車に乗り込み。採掘場へ向かう。
◇◆◇◆
ここはゼギアス大皇国内にある、採掘場の一つ。
ハイウーツ鋼が稀に採掘されるが、主に取れるのは無属性の魔石の為に配備される人員は少ない。
直近に魔防都市メサルテがある為に、不測の事態にはすぐに対応できると考えられて常駐の警備兵は必要最小限に抑えられているからだ。
今回はそれが仇となった。
警備兵は現在、ゼロだ。
死んでいるから。
「くっふっふ。各々方、見事な手並みでした。おかげで作戦は順調に運んでおりまする」
深藍色の軽鎧を着た、凹凸のない仮面の男が三つの影に語りかける。
暗闇でぼんやりと光る明かりの中、採掘場の駐屯室で影の一つが男に応じる。
「殺すななんて、しち面倒臭い事いうから手間取っちまったじゃないのさ」
さらに応じる、もう一つの影。
「昆虫人の同胞がかなり手傷をおったぞ。回復薬は支給されるのだろうなブヨークン殿」
暗闇で仮面が揺れる。
「もちろんですとも、支援者から十分な物資を受け取っております。くっふっふ」
そのやり取りの中、駐屯室の隅で固まった5つの人影。
マルマリ子爵家のメインクーン公女と付き人のソマリ、護衛の魔人族3人が手足を縛られ、魔防障壁の牢獄に囚われている。
5人にブヨークンが歩み寄る。
「意識は戻りましたかな? くふふ」
「……なぜ生かしたままですの? 目的は?」
「お伝えする必要を感じませぬなぁ、くっふっふ」
「後悔しますわよ。ワタクシ共には強ーい味方がついておりますの」
「おお、こわいこわい。ではワタクシはお暇しましょうかなぁ。と、その前に」
ブヨークンが手を伸ばし、魔防障壁をとぷんとすり抜けるとメインクーン公女の胸元からネックレスを引きちぎる。
「それは!」
「大事な物なのでしょう? くっふっふ。では各々方、後はお任せ致しまする」
暗闇に立つ、三つの影が明かりの下に進み出て、姿が明らかになった。
原種至上主義連盟、13種族長が一席。
バッタに似た昆虫人のビーババダ。
もう一席。
無口な樹人のキュデ。
さらにもう一席。
釣りあがった瞳の女長、鳥人のフュラテア。
彼らは万全の準備を持って、大魔皇国と大共和国の争いが火蓋を切る時を待つ。
ストックが足りなくなってまいりました……。
毎日更新は厳しいやもしれません。




