第15話 復興会議の始まり
長くて細い通路を抜けて、小さな別棟に入った。
かなりのエネルギーが部屋を覆ってる。結界ってヤツだな。
曲者が入り込めないようにしてるわけだ。
ごつい扉の前に、執事のアルセーヌさんがいる。
俺たちが近づくと、綺麗に一礼してドアノッカーをゴンゴン鳴らした。
「ご到着されました」
声に魔力を乗せてんのか、響くような声だ。
一拍おいてアルセーヌさんが扉を開けると、ドアに手をかけたまま頭をまた下げた。
「入りましょう」
アルマに促される。
「お疲れ様でーす」
「あ、ありがとうございます」
みんなはそのままアルセーヌさんを横切り、俺とマキマキは挨拶して部屋に入った。
中はやたら広い。
外から見た別棟より明らかに広い。
これも魔法なんだろうな。
でかい長方形のテーブルが縦に伸びて、奥の席に右からマルク将軍、宰相のサイロスさん、魔王討伐の報告の時最初に入ってきた、魔法学者のバラックおじいちゃんが並んで座り、その後ろの床が一段高くなってるところで王様が立派な調度のイスにのっしり座ってる。
他の席は偉いんだろうなって服着た偉いであろう人達がズラッと並んでて、その人達の後ろにはそれぞれ一人ずつ騎士っぽい人や、個性的な装備を付けた人が立っている。
俺たちが入ると、全員がこっちを見た。
こわ。
「宰相殿。待ち人とはやはり異界人の方々ですか」
溜息交じりに上座のほうにいる、口髭の立派なゴツいおじさんがサイロスさんに話しかける。
「そうですゴラモ候。姫様はこちらへ」
サイロスさんが空いてるイスにシソーヌ姫を促す。
「わたくしはこちらで構いません」
……なんか怒ってる?
シソーヌ姫とアルマは俺たちと一緒に立ちっぱだ。
「この国の今後を話し合うのに、この国の者でない彼らを同席させる必要はないのでは?」
今度は別の、神経質そうで体格の細いチョビ髭おじさんがサイロスさんに聞く。
「ジャラミ伯。彼らの帰還に助力することを陛下は約束されました。しかし、すぐに人員を割くことは難しい事を理解していただく為、国の復興を話し合うこの場にお呼びしたのです」
ウソだ。
前もってその話を俺たちは聞いてるし、ね? こんなに大変そうでしょ?
なんてアピールされなくても、俺たちがそれぐらい理解できないワカランちんじゃない事ぐらいサイロスさんは知ってるはずだ。
なら、俺たちをこの場に呼ぶことが目的か。
なんでだ?
「……失礼を承知で申し上げます。異界人の方々が間者でない、確固たる証拠はございますか?」
下座の方の、比較的若い男が疑問を投げかける。
「言葉が過ぎますぞラムーベ卿。魔王軍の間者ならば我らに手を貸す必要はなかった、彼らがいなければ国都は堕ちていたわけですからな」
「何も魔王軍の間者とは限りません。他国からの者ならば地上人の為に協力もするでしょうからな。しかし此度の戦で七大国のうちシュウ大帝国が衰退し、ザバナン大連邦国も多大なる被害を被ったと聞いております。国力が拮抗していたからこそ成り立っていた七国協定が、今後も維持されるのか疑問視される声もありますからな」
「姫君の召喚術を疑うのですか!」
「言い伝えが先行する不確かな術であることは周知でしょう」
なるほどね。
これから一致団結して国を立て直そうって時に、こんな雰囲気じゃ足並みが乱れちまう。
俺たちを擁護してくれてんのはアベイル隊長とか知ってる顔が多いから、あの戦いを見ていた勢。
懐疑的なのが後々で会議の為に合流した、地方の代表ってとこね。
強気で発言出来るって事は自分の領地が割と無事なんだろうか?
俺たちの帰還方法を探すんなら、地方の協力は絶対いるけど……。
こんな心象じゃ厳しいから、この機会にイメージアップさせようって事かな。
んー……。
俺って一方的に喋るのは慣れてるけど、説得とか売り込みは苦手なんだよ。
販売はイケるけど営業はダメ、みたいな。
俺が喋りあぐねてマキマキがオタオタしてると、アグーが一歩分前に出て、討論の合間を縫って声を上げる。
「発言をお許しいただきたいですぢゃ!」
偉い人達の大多数が、怪訝な顔でアグーを伺う。
サイロスさんが後ろを振り返ると、その先に座る王様が鷹揚にうなずいた。
「発言が許されました。どうぞ」
アグーが宙に浮いたまま前のめりに傾く(多分おじぎ)。
「おほん! 私は妖精アグーと申します。皆々様がご意見、いちいちごもっとも。今は大陸の情勢が不安定な時。国外に情報が渡る危うさを考慮される、その心構えはさすが慎重と名高いジャラミ伯爵閣下ですぢゃ。ただ第三者の視点だけでなく、我々異界人側の情報もあった方がよりご判断の精度も上がろうというもの、いかなるご質問にもお答え致しましょう。海千山千の皆様方なら答えの真偽も見極めて下さると考えておりますぢゃ。その上で我らが帰還の助力を改めて慮っていただきたく存じます」
めっちゃ流暢に喋るやんこの毛玉さん!
見た目に依らず、ハキハキ通る声で話すアグーにみんな多少驚いたみたいだ。
最初にさっきラムーベ卿って呼ばれてたオメーラ間者ちゃうけ?って言ってた男の人が声を出す。
「では私から質問させていただきましょう」
「どうぞ」
いけ! アグーさんバシッと言っちゃって!
個性的な装備を付けた人たちは護衛役の冒険者です。




