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最強番長TS転生で非力から  作者: 塩レモン
第1章 黒牙編

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第5話 修行

「隙あり!」


カレンの木剣が俺の脇腹を直撃した。


「ぐぇっ!」


脇腹に走る痛みに顔を歪め、


後ろへ飛び退く。


強くなると決めたあの日から数日が経った。


俺は家の庭で今日もカレンの特訓を受けている。


「ねぇ、手加減って知ってる?」


脇腹を抑えながらカレンを睨む。


カレンの動きは段々見えるようになってきた。


しかし、体は追い付いてくれない。


防具を着けていても木剣の衝撃はとても痛い。


「強くなるんでしょ?頑張って!」


カレンが笑顔で治癒魔法を俺にかけた。


痛みは引いていくが、疲労は溜まったままだ。


それに比べてカレンは息一つ乱していなかった。


笑顔で木剣を振り回しているが、


とても女の子のものとは思えない一撃だ。


この世界に来る前の俺でも、


こんな動き出来なかっただろう。


「今のソフィは家畜魔獣よりも弱いんだから、もっと頑張らないとね~」


(家畜って...ちょっと言いすぎじゃないか?)


だが、それを否定できないのが悔しい。


実際、まだ俺の木の短剣は一度もカレンに届いていなかった。


「でも初日よりは動けてるし、そんなに焦らなくても大丈夫だよ!」


「でもさぁ...おかしくない?」


カレンはきょとんとした顔で首をかしげた。


「こんなに重い木剣を、あんなに早く振れるなんてさ。」


ずっと気になってはいた事がある。


それは、カレンの細い体のどこにそんな力があるのかだ。


「そりゃぁ魔力で身体強化してるし...あれ、言ってなかった?」


「最初に教えるべきでしょ普通!!」


「まぁまぁ、早いうちに知れて良かったじゃん?」


最初に教えてくれたらもっと早く知れただろって思ったが、


これ以上言っても無駄な気がしたので黙っておく。


「で、その身体強化ってどうするの?」


「魔力を全身に込めるだけだよ!」


「簡単にいうけどさぁ、魔力を込めるって...」


とりあえず全身に力を込めてみるが、


特に変わったことはなかった。


そもそも魔力というのが感じられなかった。


「そもそもさぁ、魔力ってのが良く分らないぞ」


「う~ん...ここから力が流れる感覚って言えばいいのかな」


自分の下腹部を指でさし、そう言った。


「集中して魔力が流れるのをイメージしてみて!」


目を閉じ自分の下腹部に集中した。


(魔力の流れをイメージ...)


しかし何も感じなかった。


ただ暗闇の中で、自分の内側を探るだけだった。


「何も感じない、もしかして魔力がないんじゃないの?」


「それは無いよ、魔力はどんな物にもあるからね。」


「もっと力を抜いてみて!」


再び目を瞑り、深く深呼吸した。


力を抜き、体から魔力が流れあふれるイメージをする。


最初はさっきと同じで何も感じなかった。


しかし、その時確かに下腹部に何かが流れる感覚がした。


「どう?何か感じた?」


「うん、少しだけ。」


「そう!それが魔力だよ!」


カレンが嬉しそうに飛び跳ね声を上げた。


「次は魔力を腕に送るイメージ!」


「腕に...」


その感覚を忘れないうちに、


腕へと流し込むイメージをした。


木の短剣を握る手に、微かな熱が集まる。


そして、そのまま短剣を振り下ろした。


その時、空気が唸った。


木の短剣とは思えない風圧が巻き起こり、


周囲の草が大きく揺れる。


前髪が風に煽られ、思わず目を見開く。


「え?」


ただ振っただけだった。


だが、その直後。


全身から力が抜けるような感覚に襲われた。


足に力が入らず、俺はその場に倒れ込む。


思わず自分の手を見た。


「ソフィ!大丈夫!?」


カレンが慌てて駆け寄ってくる。


その顔は、とても焦っているように見えた。


「魔力の込めすぎだよ!」


「込めすぎ?」


息を整えながら聞き返した。


「身体強化は少しずつ魔力を流すものなの!」


カレンは呆れたようにため息をついた。


「初めてだからって、いきなり全部流し込む人なんて初めて見たよ...」


「魔力を使い切ったら最悪死んじゃうんだから気を付けてよね!」


「先に言ってくれよ……」


俺は寝ころんだまま、思わずそう呟やく。


青い空はいつの間にか赤く染まり始めていた。


全身は疲れ切っていた。


それでも、ほんの少しだけ前に進めた気がした。


それから数日。


俺は毎日のように剣術と魔力を調節する練習を続けた。


最初は魔力を抑えすぎたり、


逆に流しすぎて動けなくなったりと苦戦の連続だった。


それでも繰り返すうちに感覚は掴め、


段々と調節が出来るようになっていた。


「ほらほら、今日も訓練するよ!」


カレンはいつものように笑顔で木剣をぶんぶん振り回していた。


その姿だけ見れば無邪気な女の子だ。


だが、その木剣が当たると洒落にならないほど痛い。


「今日こそ一発入れてやる!」


下腹部に流れる魔力を全身に巡らせる。


体は軽くなり、木の短剣を持つ手が楽になる。


「それじゃ、いくよ!」


カレンが木剣を構えた。


次の瞬間、カレンが地面を蹴る。


俺は木の短剣でカレンの木剣を受け止めた。


以前なら見えていても動けなかった、だが今は違う。


俺はカレンの動きに対応できるようになっていた。


受け止めた勢いのまま短剣を振るい、カレンに反撃をする。


カレンはヒョイと体を傾け攻撃を躱した。


「だいぶ動き良くなったね~」


そう言いながら、続けざまに放った俺の攻撃も軽々と受け流していく。


何度か打ち合い、


木の短剣で木剣を弾く。


カレンの脇が僅かに空いた。


俺は迷わず踏み込み、


間合いを一気に詰める。


届くと思った。


だが、カレンの姿は既にそこになかった。


空を切った短剣の勢いで、体が前へ流れる。


そのまま俺の背中に衝撃が走った。


「うっ!」


衝撃に息が詰まり、


俺は前のめりに倒れる。


振り返ると、


カレンはいつもの笑顔を浮かべていた。


「うん、これなら大丈夫かな」


カレンが小さく呟いた。


「いや~惜しかったね~!」


そう言いながらカレンが顔を覗き込んだ。


「そろそろ次の段階に進もうか。」


「次の段階?」


「実戦だよ。」


「実戦?」


嫌な予感がした。


カレンは満面の笑みを浮かべてる。


「その笑顔が一番怖いんだけど!?」


「大丈夫大丈夫! 弱い魔獣だから!」


カレンは軽い調子で言う。


だが、カレンの『大丈夫』は全く信用できない。


恐る恐るカレンに聞いてみる。


「ちなみに、その弱い魔獣って?」


「う~ん...牙で人くらいなら簡単に噛み砕く程度だよ!」


「全然弱くないだろ!」


カレンはケラケラと笑った。


どうやら俺に拒否権はないらしい。


明日が来るのが、少しだけ憂鬱だった。

読んでいただきありがとうございます。

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