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最強番長TS転生で非力から  作者: 塩レモン
第4章 迷宮編

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第39話 たられば

――この世界に来た時、俺は路地裏に逃げた。


そして弱さを思い知らされて汚されて俺は奴隷として売られた。


痛くて気持ち悪くて汚い。


そんな日々だった。


何度逃げようと思ったか分からない。何度助けを求めようとしたか分からない。


それでも俺は男だった。


自分が男である事だけは諦めたくなかった。


使われ殴られ蹴られ孕んで。


体がボロボロになっていった。


何もできない自分が嫌だった。


抵抗する力も、逃げ出す力も、もう残っていなかった。


そして、いつしか力も入らなくなって、瞼が重くなって。


俺は死んだ。


あの時、路地裏に逃げなければ...


そんな後悔を残して俺は死んだ。


――俺はカレンと買い物をしていた。


服を買って、短剣を買って、すっかり日が暮れていた。


俺はこれから始まる新しい人生が少し楽しみだった。


なんせ異世界だ。不安もあったけれどワクワクした。


知らない街、知らない人、知らない世界。


ここなら、今までとは違う生き方ができるかもしれない。


そんな期待を抱いていた。


そして家に戻る時、背後から声がした。


あの路地裏にいた金髪の男だ。


男が投げたナイフが俺の頭蓋を貫いた。


そして俺は倒れた。


何が起きたのか理解する暇もなかった。


カレンは泣いていた。


そのままカレンの頭もナイフが貫いた。


俺は死んだ。


あの時、油断してなければ...


そんな後悔を残して俺は死んだ。


――俺とカレンは森に来ていた。


カレンにこの世界で良く抜く為、守る為の術を教わった。


日が昇っているのに森の中は薄暗くて、肌寒い。


木々の隙間から差し込む光だけが、足元をかろうじて照らしていた。


初めての実践に緊張しながらも森の奥へ進んだ。


森の奥には角の生えた狼とソックリな魔獣が居た。


ただ野生の魔獣は予想以上に危険だった。


無数の光る眼が俺を睨んでいる。


俺は1歩後ずさると枝を踏んでしまった。


その音を合図に魔獣は俺を食い尽くしていった。


逃げなければと思った。けれど、体が思うように動かなかった。


生きたまま腹を顔を食われた。


俺は死んだ。


あの時、もっと集中していれば...


そんな後悔を残して俺は死んだ。


――今日は遂に黒牙との決戦。


俺は心強い仲間と共に砦に向かった。


カーネルとカイン、オルガ、シェリー、レーンが手下を足止めしている。


その間に俺とカレン、ミルネが砦に入る作戦だった。


仲間たちを信じて、俺たちは一直線に砦に向かって走った。


走って走って俺は躓いて転んだ。


無数の魔法の光が俺の体を貫いた。


肉体は簡単にグチャグチャになった。


俺は死んだ。


あの時、ちゃんと足元に気を付けていれば...


そんな後悔を残して俺は死んだ。


――砦の2階、俺とミルネとカレンはロイと戦っていた。


ロイの激しく動くナイフに俺たちは翻弄されていた。


一瞬の油断も許されない戦いだった。


そして隙を突かれたカレンの腹にナイフが深く突き刺さった。


俺はすぐカレンの元へ駆け寄った。


治癒魔法のスクロールを使ったが傷はふさがらなかった。


その時、ロイのナイフが飛んできた。


俺の喉を大きく切り裂いた。


血が溢れ肺に溜まっていき呼吸ができなくなった。


声を出すことも、助けを呼ぶこともできなかった。


俺は死んだ。


あの時、ちゃんとロイに注意していれば...


そんな後悔を残して俺は死んだ。


――砦の3階、俺とミルネとカレンとオルガとレーンはアベルと戦っていた。


未来を見れるアベルは強敵だった。


カーネルは爆発に巻き込まれ戦闘不能。


ミルネの右腕も吹き飛んだ。


そしてミルネに駆け寄ったレーンの首を氷柱が貫いた。


オルガは俺の魔力を込めて放つ技に巻き込まれて重傷。


気を取られた俺はアベルの攻撃を食らい気絶。


気が付くとカレンは1人で戦っていた。


そしてカレンも吹き飛ばされた。


まともに戦えるのは俺だけ。


まさに絶体絶命だ。


仲間たちは傷つき、倒れ、もう誰も俺を支えられなかった。


俺は全魔力を込めて短剣を振り抜いた。


砦を大きく破壊しアベルの体も風圧で引きちぎれた。


そして俺は魔力切れで倒れた。


薄れていく意識の中最後に見たのは夕日だった。


俺は死んだ。


あの時、俺が後少し俺が強ければ...


そんな後悔を残して俺は死んだ。


――ある日、俺とカレンは今日も騎士団の訓練場に向かっていた。


他愛もない会話、綺麗な青空。


全てがいつも通りの平和な街並みだった。


昨日と同じような朝だった。明日もきっと同じような朝が来る。


そう思えるほど、何も変わらない日常だった。


だが平和は続かなかった。


街は破壊されカレンも重傷を負った。


俺は痛む体を無理やり動かし、カレンを背負い安全な所へ向かった。


しかし、安全はなかった。


そこには魔女信教徒の葬法司、アニルが居た。


俺は必至に逃げたが結局、アニルの炎に包まれた。


俺は死んだ。


あの時、もっと動けていれば...


そんな後悔を残して俺は死んだ。


――死んで、死んで、死んで、沢山の俺が死んだ。


痛くて、冷たくて、苦しくて、悲しくて、悔しくて、死んだ。


沢山、沢山、沢山、俺は死んでいた。


あの時、こうしていれば。


あの時、ああしていれば。


何度も考えた。


何度も悔やんだ。


何度もやり直したいと思った。


けれど、どれだけ願っても死んだ俺は戻らない。


どれだけ後悔しても、過ぎ去った時間は戻らない。


守れなかった仲間も、救えなかった命も、失ったものも。


何1つ戻ってはこなかった。


俺はまた死ぬ。


遠い未来で近い未来で死ぬ。


生きているから死ぬ。


今の俺も最後は死ぬ。


運がいいだけで時が来ていないだけで。


必ず死ぬ。

読んでいただきありがとうございます。

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