↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強番長TS転生で非力から  作者: 塩レモン
第4章 迷宮編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/49

第40話 第十三代教皇

「っあぁ!」


今のは何だ...記憶がハッキリと残っている。


知らない記憶のはずなのに感覚が体に焼き付いている。


痛みも、苦しみも、死ぬ瞬間の感覚も。


まるで本当に自分が経験したかのように、鮮明に思い出せる。


「今のは、今の記憶は何なんだ...!」


「すべて実際にあった事ですよ。」


少女は静かに答えた。


「と言っても違う世界ですが。」


「...違う世界?」


「はい。」


少女は当たり前のことを説明するように頷いた。


「貴方が今まで生きてきた世界とは異なる世界です。」


「そこでも貴方は生まれ、生きて、そして死にました。」


「ふざけるな...!」


俺は少女を睨みつけた。


「そんな話を信じられるわけがないだろ!」


俺は確かにこの世界で生きてきた。


通り魔に刺されて、この世界に来て、カレンと出会った。


そして騎士団に入った。カーネルたちと過ごした。


仲間と戦って、笑って、ここまで歩いてきた。


その記憶に嘘はない。


けれど、さっきの記憶もまた、嘘だとは思えなかった。


奴隷として扱われた苦痛も。


カレンの頭をナイフが貫いた瞬間も。


魔獣に食い殺された恐怖も。


仲間たちが倒れていく光景も。


どれも、俺の中に残っている。


「...お前、何をしたんだ。」


「記憶をお返ししただけですよ。」


「貴方に足りなかった記憶を。」


少女は俺の目を見つめた。


その瞳には、怒りも悲しみも見えなかった。


ただ、俺の反応を確かめているようだった。


「私は記心魔法を扱います。」


「記心魔法...?」


「記憶を消すことも、増やすことも出来る一族に伝わる血統魔術の1つです。」


「...何だよ、それ。」


あまりにも突拍子もない話だった。


記憶を消す。増やす。


人の過去も人格も変えられるだろう。


疑うべきだ。


目の前の少女が言っていることを、簡単に信じてはいけない。


そう思っているのに、俺の中にある記憶がそれを許さなかった。


俺は死んだ。


何度も、何度も。


そしてそのたびに、後悔した。


もっと強ければ。


もっと注意していれば。


あの時、別の選択をしていれば。


けれど、何度考えたところで、失ったものは戻らなかった。


「...何で俺にそんな記憶を見せた。」


声が震えた。


「何でそんなものを見せた...!」


少女はすぐには答えなかった。


やがて、小さく息を吐く。


「貴方も知る必要があったからです。」


「なんでだ...?」


「私たちの計画に必要な事ですから。」


「...お前は、誰なんだ。」


俺はようやく、それを口にした。


「俺の記憶を知っていて、こんな魔法まで使える。お前は一体...」


少女は、初めて少しだけ表情を変えた。


微笑みだった。


「申し遅れましたね。」


彼女は静かに一礼した。


「私はルミナス・アリア。」


その名を告げる声には、先ほどまでとは違う重みがあった。


「魔女信教最高指導者。第十三代教皇です。」


「計画って...まさか。」


ルミナスの口が大きく歪む。


「魔女様の復活の計画ですよ。」


「...ふざけるな。」


俺はルミナスを睨みつけた。


魔女の復活。


魔女信教が進めている計画。


ローズベルの予測は当たっていた。


「復活なんてさせない!」


思わず声を荒らげる。


ルミナスは表情を変えなかった。


「どの世界でも貴方は変わりませんね。」


拳を握り締める。


「またいつかお会いしましょう、ソフィ。」


ルミナスの言葉と同時に、視界が揺らいだ。


「おい、何だこれ...!」


白い空間が歪んでいく。


ルミナスの姿が遠ざかる。


「待て、まだ聞きたいことが...!」


声が届いているのかも分からない。


彼女はただ、静かにこちらを見つめていた。


「お体には気を付けてくださいね。貴方は大切な魔女様の器ですから。」


その声を最後に、視界が真っ白に染まった。




「っは...!」


目が覚めると俺は倒れていた。


迷宮の隠し部屋。


ルミナスは既に居なかった。


「魔女の器...」


また俺はそう呼ばれた。


魔女の復活に俺はどう使われるのだろうか。


「そんな事よりカレン...!」


どのくらい気を失っていたのか。


早くカレンと合流しないと。


「カレン! 聞こえるか!」


声を張り上げる。


返事はない。


嫌な想像が頭をよぎる。


俺が倒れている間に、何かあったんじゃないか。


もし魔獣に襲われていたら。


もし、俺を探して迷宮の奥へ進んでいたら。


「...頼むから、無事でいてくれ。」


足を速める。


あの嫌な記憶が不安を大きくさせていく。


「フレイム。」


俺は火を頼りに部屋の奥へ進んだ。


迷宮は奥へ進むほど、空気が冷たくなっていった。


「カレン!」


返事はない。


足音だけが石壁に反響する。


普段なら、カレンは俺の声が聞こえればすぐに返事をする。


離れていても、何かあれば大声で呼び合える距離にいるはずだった。


それなのに、今は何も聞こえない。


「くそっ...!」


焦る気持ちを抑えながら、俺は周囲を警戒する。


考えたくもない可能性ばかりが浮かんでくる。


その時だった。


「...ソフィ?」


聞き慣れた声がした。


「カレン!」


よかった無事だ。


ようやく肩の荷が下りた気がした。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、

ブックマークや評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。