第30話 第六部隊
俺は第六部隊の隊長になった。
俺の活躍が認められた訳ではなく。
ただ前の第六部隊が全滅し、その穴埋めとして俺が任命された。
「...俺が隊長?」
「ああ。」
ローズベルは淡々と答えた。
「お前は死なないからな。」
「...」
「隊長が死ねば部隊は崩れる。お前なら多少無茶をしても生き残る。」
「そういう理由かよ。」
「嫌なら断っても構わん。」
俺は少し考えた。
そして。
「...やるよ。」
「そうか。」
それだけだった。
こうして俺は、第六部隊の隊長になった。
だが。
隊員は誰もいなかった。
前の第六部隊は全滅した。
つまり、俺一人しかいない。
新しく隊員を集める必要があった。
数日後。
俺は騎士団の訓練場にいた。
そこで、見覚えのある水色の髪が目に入った。
「カーネル様!」
ミルネがこちらへ駆けてくる。
「聞いたっすよ! 第六部隊の隊長になったんすね!」
「ああ。」
「すごいっす!」
「別にすごくねぇよ。前の隊長が死んだから俺になっただけだ。」
「それでも隊長は隊長っす!」
ミルネは嬉しそうに笑った。
俺は少し黙った。
そして。
「...ミルネ。」
「なんすか?」
「お前、俺の部隊に来ないか?」
「え?」
ミルネの動きが止まった。
「第六部隊に?」
「ああ。」
「自分が?」
「お前以外に誰がいるんだよ。」
「...」
ミルネはしばらく俺を見ていた。
「でも、自分はまだ弱いっすよ?」
「知ってる。」
「剣もまだまだっす。」
「それも知ってる。」
「足引っ張るかもしれないっす。」
「なら、強くなれ。」
ミルネは目を丸くした。
「...本当にいいんすか?」
「ああ。」
「本当に?」
「何度聞くんだよ。」
ミルネは笑った。
「行くっす!」
「そうか。」
「自分、カーネル様の部隊で頑張るっす!」
「なら一つ頼みがある。」
「なんすか?」
「副隊長になってくれ。」
「...副隊長?」
「ああ。」
「自分が?」
「俺一人じゃ部隊にならねぇからな。」
ミルネは驚いた顔をした。
「でも、自分に務まるっすかね...」
「今すぐ全部できる必要はねぇ。」
「...」
「一緒に覚えればいい。」
「...やるっす!」
「頼んだぞ。」
「任せてくださいっす!」
こうして。
第六部隊に、初めて二人の隊員が揃った。
隊長、カーネル。
副隊長、ミルネ。
だが。
俺たちだけでは、任務には出られない。
そこで騎士団は、新しい隊員を配属することにした。
さらに数日後。
俺たちの前に四人の新人騎士がやってきた。
「失礼します!」
最初に入ってきたのは、真面目そうな顔をしている青年だった。
「カインです。よろしくお願いします。」
その隣には、少し眠そうな目をした少女。
「私の名前はレーンです。よろしくお願いします。」
その後ろから、少年が顔を出す。
「俺の名前はオルガ!よろしく頼む!」
そして最後に。
少し緊張した様子の少女が入ってきた。
「わ、私の名前はシェ、シェリーです。よ、よろしくお願いします。」
四人が並ぶ。
俺は一人ずつ顔を見る。
「カイン。」
「はい!」
「レーン。」
「はい。」
「オルガ。」
「はい!」
「シェリー。」
「は、はいっ!」
「今日からお前らは同じ部隊の仲間、すなわち家族だ。」
「分かりました!」
カインは真っ直ぐに答えた。
レーンも小さく頷く。
オルガは少し緊張した顔をしている。
シェリーは周囲を見回していた。
俺は四人を見ていた。
まだ弱い。
まだ何もできない新人。
でも。
昔の俺とは違う。
こいつらには俺がいる。
仲間がいる。
それから数日。
俺たちは訓練場にいた。
カイン、レーン、オルガ、シェリー。
四人ともまだ騎士としては未熟だった。
剣の振り方も。
魔法の使い方も。
実戦での動き方も。
まだまだだった。
「遅ぇ。」
俺が言うと、四人が動きを止める。
「もう一度。」
「はい!」
四人が再び木剣を構える。
俺はその様子を見ながら、自分が昔受けていた訓練を思い出していた。
誰も教えてくれなかった。
だから俺が教える。
「カイン。力を入れすぎだ。」
「はい!」
「レーンは足が止まってる。」
「分かりました。」
「オルガ。振り切った後に隙ができてる。」
「はい!」
「シェリー。怖がるな。相手をちゃんと見ろ。」
「は、はい!」
隣ではミルネも訓練している。
「みんな頑張るっすよ!」
「ミルネ、お前もだ。」
「自分もっすか!?」
ミルネは慌てて木剣を構え直した。
訓練が終わる頃には、四人とも地面に座り込んでいた。
「疲れた...」
オルガが呟く。
「当たり前だ。」
ミルネが笑いながら言った。
「大丈夫っすよ。自分も最初はこんな感じだったっす!」
「ミルネも?」
シェリーが驚いた顔をする。
「もちろんっす!」
「じゃあ、私たちも強くなれますか?」
レーンが聞いた。
俺は四人を見る。
「なれる。」
迷わず答えた。
「ただし、楽じゃねぇぞ。」
「はい!」
四人が返事をする。
その声を聞きながら、俺は思った。
以前の俺には、誰もいなかった。
教えてくれる人も。
一緒に訓練する仲間も。
守りたいと思える誰かも。
でも、今は違う。
俺の隣にはミルネがいる。
そして、目の前には四人の新人がいる。
「...悪くねぇな。」
小さく呟いた。
第六部隊は、まだ始まったばかりだった。
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