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最強番長TS転生で非力から  作者: 塩レモン
第3章 騎士団編

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第29話 男は男らしく

ミルネと出会ってから1年。


俺の生活は少し変わった。


ミルネは俺の過去を知っても慕ってくれる。


「カーネル様~」


今日もミルネは俺に抱き着きに来た。


短かったミルネの髪も肩辺りまで伸びている。


ミルネは髪を括ったり編んだり自分の髪を気に入っているようだ。


「お前は本当に距離が近いな...」


「だって~カーネル様は命の恩人っすからね~」


「だからって毎回抱き着くな。」


「嫌っすか?」


「...別に。」


「じゃあいいっすね!」


「よくねぇよ。」


ミルネは楽しそうに笑った。


ミルネは騎士団に来てから、俺の後ろをよくついてくるようになった。


最初はただの子供だった。


だが、一年も経てば少しずつ変わっていった。


騎士団の生活にも慣れ、剣の訓練にも参加するようになった。


「カーネル様、今日も訓練するっすか?」


「ああ。」


「じゃあ自分も行くっす!」


ミルネは木剣を持ち上げる。


構えはまだまだ素人だった。


それでも、必死に俺の真似をしている。


「こうっすか?」


「違う。足はもう少し開け。」


「こう?」


「もう少し。」


「こうっすか?」


「...まあ、それでいい。」


「やった!」


ミルネは嬉しそうに笑った。


俺は木剣を構える。


そして、いつものように振った。


一回。


二回。


三回。


ミルネも隣で木剣を振る。


「はぁ...はぁ...」


「疲れたか?」


「まだまだっす!」


そう言いながら、ミルネは木剣を振り続ける。


俺はそんなミルネを見ていた。


昔の俺とは違う。


俺には、誰かと一緒に訓練するという経験がなかった。


何かを教えてくれる人もいなかった。


だから。


「...無理はするなよ。」


「カーネル様?」


「怪我したら治るとはいえ、痛いもんは痛い。」


「カーネル様も痛いんすか?」


「当たり前だろ。」


「でも、いつも平気そうにしてるっすよ?」


「慣れてるだけだ。」


そう言うと、ミルネは少しだけ黙った。


「...カーネル様。」


「なんだ?」


「自分、強くなるっす。」


「...そうか。」


「カーネル様を守れるくらい。」


俺は少しだけ目を見開いた。


「馬鹿言うな。俺はお前に守られる必要なんてねぇよ。」


「でも、いつか絶対守るっすよ!」


ミルネは笑った。


その笑顔を見て、俺も少しだけ笑った。


だが。


周囲からは相変わらず俺への悪口が飛んでくる。


「また肉盾とミルネちゃんが一緒にいるぞ。」


「仲良しごっこか?」


「男のくせに髪なんか伸ばして、気持ち悪ぃな。」


「騎士ならもっと男らしくしろよな。」


ミルネの足が止まった。


「...」


いつもの笑顔が消えていた。


握っていた木剣に、少しずつ力が入っていく。


「おい、聞こえてんのか?」


別の騎士が笑いながら言った。


「女みたいな格好して、女みたいな喋り方してよ。騎士団は遊び場じゃねぇぞ。」


「...」


ミルネは何も言わなかった。


ただ、俯いていた。


水色の髪が顔にかかって、その表情が見えなくなる。


俺は騎士を睨んだ。


「...もう行くぞ、ミルネ。」


「はいっす...」


ミルネは笑おうとした。


「大丈夫っすよ。いつものことっすから。」


だが、その声は少し震えていた。


俺は何も言わず、訓練場を離れた。


しばらく歩いたところで、ミルネが口を開いた。


「...カーネル様。」


「なんだ?」


「自分って、そんなに変っすか?」


俺はミルネを見る。


ミルネは水色の髪を肩まで伸ばしていた。


今日は髪を後ろで一つに結んでいる。


騎士団の男たちは短髪が多い。


髪を伸ばしている騎士など、ほとんどいなかった。


それだけじゃない。


ミルネは男だ。


だが、服装も仕草もどこか女の子らしい。


髪を気に入って手入れしている。


話し方も柔らかい。


笑うときも、どこか女の子のような仕草になる。


本人はそれを気に入っていた。


だからこそ。


「変じゃない。」


俺はそう答えた。


「本当っすか?」


「ああ。」


「でも...」


ミルネは自分の髪を触った。


「切った方がいいっすかね。」


「なんでだ?」


「...みんな、笑うから。」


ミルネは髪を握った。


「自分、これ好きなんすけど...」


最後の言葉は、小さかった。


俺は少し黙った。


「変じゃない。」


もう一度、そう言った。


「髪を伸ばして何が悪い。」


「...」


「女みたいな服を着て何が悪い。」


ミルネが顔を上げる。


「お前が好きでやってるなら、それでいいだろ。」


「...でも、自分浮いてるっす。」


「俺だって浮いてる。」


少しの沈黙。


カーネルはミルネを見る。


水色の髪。


肩まで伸びた髪を、ミルネは大切そうに触っている。


「...好きなんだろ?」


「好きっす。」


「なら、切る必要なんかねぇだろ。」


「...」


「男らしくしろって言われたからって、お前が好きなもの捨てる必要はねぇよ。」


ミルネは目を丸くした。


「カーネル様...」


「俺には似合うかどうかなんて分からねぇ。」


「...」


「でも、お前がそれを好きなら、それでいいだろ。」


ミルネは髪を握っていた手をゆっくり離した。


「...自分、この髪好きっす。」


「ああ。」


「この喋り方も好きっす。」


「ああ。」


「女の子みたいって言われるのも...嫌じゃないっす。」


「なら、そのままでいろ。」


ミルネはしばらく黙っていた。


そして。


「...はいっす!」


いつもの笑顔に戻った。


「じゃあ、切らないっす!」


「最初からそうしろ。」


「カーネル様も肉盾って呼ばれても気にしないっすもんね!」


「それとこれとは話が違ぇだろ...」


「同じっすよ!」


「全然違ぇよ。」


ミルネは楽しそうに笑った。


カーネルも小さく笑う。


その日の帰り道。


ミルネは何度も自分の髪を触っていた。

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