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最強番長TS転生で非力から  作者: 塩レモン
第3章 騎士団編

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第28話 水色髪の少年

騎士団に拾われてから5年が経った。


俺はそのまま騎士団の一員として日々を過ごしていた。


俺を見る周囲の目は変わっていない。


「よぉ!肉盾!」


騎士の一人が俺の背を蹴る。


「っ...」


「なんだよ?どうせ何しても治るんだろ?」


周囲から笑い声が聞こえる。


俺は何も言わず、その場を離れようとした。


「おい、肉盾。どこ行くんだ?」


「訓練だよ。」


「お前が訓練なんかしてどうすんだ?」


「...強くなるためだ。」


そう答えると、騎士は鼻で笑った。


「お前が?」


「お前は十分役に立ってるじゃないか!盾に囮に自爆でさぁ!」


その言葉を背中に受けながら、俺は訓練場へ向かった。


扉を開けると、そこには数人の騎士がいた。


俺が入ってきた瞬間、何人かがこちらを見る。


「...また肉盾が来たぞ。」


「今日は何回死ぬんだろうな。」


聞こえてくる声を無視して、俺は木剣を手に取った。


強くなる。


それだけを考えて、木剣を振る。


一回。


二回。


三回。


「...っ」


腕が痛む。


それでも振る。


俺には才能がない。


剣を振っても、他の騎士より遅い。


力も弱い。


だからこそ、鍛えるしかなかった。


ある夜、とある村が魔女信教徒に襲われていると騎士団に通報があった。


「魔女信教だと?」


騎士団内に緊張が走る。


「村人からの通報です! 既に何人もの死傷者が出ているとのこと!」


「討伐隊を編成しろ!」


次々と騎士たちが準備を始める。


俺も装備を整え、集合場所へ向かった。


「おい、お前も来るんだろ?」


「ああ。」


「なら先頭に立てよ。」


そう言って、そいつは笑った。


「お前なら死んでも問題ないからな。」


また周囲から笑い声が上がる。


俺は何も言わず、馬車へ乗り込んだ。


村へ向かう道中。


俺は窓の外を眺めていた。


魔女信教。


その名前を聞くたびに、胸の奥が重くなる。


俺の家族を殺した宗教。


そして、俺自身を「魔女の祝福を受けた者」として扱った奴ら。


俺は拳を握った。


「...今度は、誰も死なせない。」


誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。


やがて、村が見えてきた。


しかし。


「...なんだ、これ。」


村の入口には、既に大量の血が流れていた。


建物はいくつも壊され、炎が夜空を赤く染めている。


「急げ!」


騎士たちが村へ駆け込む。


俺もその後を追った。


その瞬間。


「来たぞ! 騎士団だ!」


魔女信教徒の一人が叫んだ。


複数の信徒がこちらへ振り返る。


「騎士団...!」


「私たちの邪魔をするな!」


信徒たちが一斉に襲いかかってくる。


俺は剣を抜いた。


一人目の攻撃を受け止める。


二人目の剣が脇腹を貫いた。


「ぐっ...!」


痛みが走る。


だが。


「その程度か」


俺は剣を握り直し、相手を斬り伏せた。


「はぁ...はぁ...多すぎる。」


先頭に立ち仲間を庇いながら信徒を対処する。


それが俺の役目。


それが俺の存在意義だ。


斬っても、斬っても、信徒共は減らない。


「くそっ...!」


俺の脇腹から血が流れている。


だが、傷は既に塞がり始めていた。


「肉盾が前にいるぞ!」


「構わん! こいつを盾にして進め!」


背後から声が飛んでくる。


俺は振り返らなかった。


まただ。


俺が傷つくことを前提にしている。


騎士たちが俺の横を抜けていく。


俺は一人で信徒の群れと向き合った。


「....来いよ」


剣を構える。


怖くない。


死なないから。


そう思っていた。


けれど。


「ぐっ...!」


腹を貫かれる。


「がっ...!」


肩を斬られる。


「ぐあっ!」


背中を焼かれる。


何度も倒れる。


何度も立ち上がる。


傷が治るたびに、また前へ出る。


信徒の一人が呟いた。


「何度斬っても立ち上がってくるぞ...」


「魔女様の祝福...!」


「あぁ!なんてこと!貴方はあんな所に居るべきじゃないわ!」


信徒は両手を前に突き出し一歩前へ踏み出した。


「大丈夫、魔女様は全てをお許しに...」


俺は剣を振りかざし頭を真っ二つに切り裂いた。


「...っ」


頭が割れた信徒が、その場に崩れ落ちる。


俺は自分の手を見る。


返り血で真っ赤になった手。


信徒の付けた傷はもう塞がっている。


何者なんだ、俺は。


魔女信教にいた頃は、魔女様に選ばれた存在。


騎士団に来てからは、肉盾。


どこへ行っても、俺自身を見てくれる奴はいなかった。


「...関係ない。」


俺は剣を握り直した。


「俺は俺だ。」


後ろには村人がいる。


守らなきゃいけない。


それだけだった。


信徒たちが再び襲いかかってくる。


剣。


槍。


魔法。


次々と攻撃が飛んでくる。


俺は避けなかった。


避ければ、後ろにいる誰かへ攻撃が向く。


だから。


全部、受けた。


「ぐっ...!」


胸を貫かれる。


「がぁっ!」


炎に包まれる。


「まだだ!」


倒れても、立つ。


立っても、また倒れる。


それでも。


「誰も...殺させない...!」


俺は剣を振った。


一人。


また一人。


信徒たちを斬り伏せていく。


気づけば、周囲の信徒たちはほとんど倒れていた。


「終わった、のか?」


荒い息を吐きながら、俺は周囲を見渡した。


燃える家。


倒れた騎士。


傷ついた村人。


そして。


「遅かった...」


誰かが呟いた。


救えなかった人たちがいる。


俺は剣を下ろした。


「...くそ」


拳を握る。


その時崩れた家の中に縮こまって震えている水色髪の子供を見つけた。


俺は崩れた家へ駆け寄った。


「大丈夫か!」


その子は俺を見ると、怯えたように身体を縮こませた。


「...お父さん...お母さん。」


その言葉に、胸が締め付けられる。


「もう大丈夫だ。」


自分でも驚くほど、自然にその言葉が出た。


「騎士団が来た。もう、お前を傷つける奴はいない。」


「俺は、お前を助けに来た。」


その子は俯いた。


そして、小さな声で呟いた。


「...そっか。」


その一言だけだった。


俺はその子を抱き上げた。


「名前は?」


「...ミルネ。」


「ミルネか。」


その名前を、俺は覚えた。


その日。


俺は一人の少年を救った。


読んでいただきありがとうございます。

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