↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強番長TS転生で非力から  作者: 塩レモン
第2章 魔女信教編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/49

第21話 またね。

「この子は...魔女様の器なんだから。」


アニルのその一言で、時間が止まったように感じた。


「渡すわけねぇだろッ!!」


カーネルが怒号と共に地面を蹴る。


石畳が砕け、一直線にアニルへ肉薄した。


「イグ・ラズマ!」


紫電を纏った剣が横薙ぎに走る。


だがアニルは炎へと姿を変え、刃をすり抜けた。


「残念。」


背後から炎の腕が伸びる。


「甘ぇ!」


カーネルは振り向きざまに肘を叩き込み、炎の腕を散らした。


その瞬間だった。


「えいっ♪」


リニアが石畳を軽く踏む。


大通りそのものが持ち上がり、地面が波のように盛り上がる。


「なっ...!」


カーネルの足元が崩れ、身体が宙へ浮いた。


待っていたようにアニルが笑う。


「そこ。」


炎の拳が腹へ叩き込まれた。


「ぐあぁっ...!」


カーネルは三階建ての建物へ突っ込み、壁を二枚突き破って姿を消した。


「カーネル!」


俺が叫ぶ。


「ソフィ~ちゃんっ!」


リニアが嬉しそうに手を振った。


「次は君ね!」


彼女が指を向ける。


崩れた時計台の残骸が震え始めた。


瓦礫が浮く。


石像の頭。


折れた柱。


屋根瓦。


全部が宙へ浮かび、俺へ狙いを定める。


「いっけぇ!」


弾丸のように飛来した。


「くっ!」


俺は横へ転がる。


石像が背後の家屋を粉砕し、柱が道路へ突き刺さる。


一歩遅ければ終わっていた。


「ソフィ!」


ミルネが俺の隣へ滑り込む。


「屋根に上がるっす!」


「了解!」


俺達は崩れた商店の看板を足場に跳び、二階の屋根へ飛び移る。


下を見る。


街はもう街じゃない。


道路は裂け、建物は半分崩れ、炎があちこちで燃えている。


リニアがにこっと笑う。


屋根が動いた。


「は?」


俺達の立つ屋根そのものが隆起し、巨大な土の竜みたいにうねり始める。


「うわぁ!」


屋根瓦が滑り落ちる。


俺は煙突へ飛びついた。


ミルネは屋根の端を蹴って隣の建物へ飛ぶ。


その直後。


屋根全体が崩壊した。


轟音と共に家屋が潰れ、土煙が舞い上がる。


「逃げるの上手だね~!」


リニアが拍手した。


「でもまだまだ~!」


彼女が両手を広げる。


崩れた建物の壁が剥がれ、巨大な石板となって空へ浮かんだ。


五枚。


十枚。


二十枚。


まるで巨大なトランプのようだ。


「押し潰れろ~!」


石板が四方から閉じる。


「ミルネ!」


「任せるっす!」


ミルネが両手を突き出す。


「ウォークア!」


激流が横へ噴き出す。


水流が石板を押し返し、一瞬だけ隙間が生まれる。


「今!」


俺達はその隙間へ飛び込んだ。


直後。


石板同士が激突し、粉々に砕け散る。


破片が雨のように降り注ぐ。


「ソフィ!」


俺は短剣で飛来する石を弾く。


だが一本だけ避けきれなかった。


「ぐっ!」


肩へ石片が突き刺さる。


熱い。


血が流れる。


「大丈夫っすか!」


「平気!」


そう言った直後。


道路の向こうから紫電が走った。


「イグ・ラズマァッ!!」


カーネルだった。


崩れた建物から飛び出し、雷撃を地面へ流し込む。


紫電が道路を駆け抜ける。


リニアの足元まで届く。


「きゃっ!」


地面が弾け、彼女の身体が少し浮く。


「ソフィ!」


「分かってる!」


俺は瓦礫を蹴り、崩れた橋を走る。


リニアまであと五メートル。


四。


三。


「このっ!」


短剣を振る。


「わぁ!」


リニアは慌てて後ろへ飛ぶ。


刃がローブを掠めた。


黄色いペンダントが揺れる。


「惜っしい~!」


彼女は笑う。


だがその笑顔のまま、地面へ手をついた。


「大地さん♪」


街全体が震えた。


地鳴り。


「まずい!」


カーネルが叫ぶ。


次の瞬間。


道路が崩落した。


俺達の足元が一気に抜ける。


「落ちる!」


「ソフィ!」


ミルネが俺の腕を掴む。


二人まとめて地下へ落下した。


背中から石床へ叩きつけられる。


「いってぇ...」


薄暗い。


湿った空気。


古いレンガ造りの通路。


「地下水路...?」


上を見る。


崩れた穴から夕日に近い光が差し込んでいた。


「二人とも無事か。」


カーネルが着地する。


血まみれだ。


それでも立っている。


「まだ戦える。」


「無茶っすよ...」


ミルネが息を切らす。


その時。


上から幼い笑い声が響いた。


「あははー!見つけた!」


リニアだった。


穴の縁から顔だけ覗かせている。


「逃げちゃダメ!」


彼女が手を振る。


地下水路の壁が膨らんだ。


「壁が!」


岩の腕が通路を突き破る。


「散れ!」


カーネルが斬る。


岩腕は砕ける。


だが一本では終わらない。


左右。


前。


後ろ。


狭い通路全部から岩腕が伸びてくる。


「通路ごと潰す気か!」


「ソフィ!」


ミルネが叫ぶ。


俺は天井を見る。


古い支柱。


「あそこだ!」


短剣を投げ、支柱へ刺す。


「ミルネ、水!」


「はい!」


水流が支柱へ叩きつけられる。


腐食していた支柱が折れた。


天井が崩落する。


大量の瓦礫が地下水路を塞ぎ、岩腕ごと押し潰した。


土煙が充満する。


「走るぞ!」


俺達は崩れた瓦礫を登る。


上へ。


地上へ。


夕日の光が近付いてくる。


地上へ出た瞬間。


街が赤く染まっていた。


「もう夕方...」


炎と夕日が混ざり、街全体が朱色に染まっている。


リニアは少しだけ目を細めた。


「きれい。」


アニルも空を見上げる。


「長く遊んだね。」


カーネルは剣を構え直す。


「まだ終わってねぇ。」


「ううん。」


アニルが首を振った。


「今日は終わり。」


「逃がすか!」


カーネルが踏み出そうとする。


だが足が止まる。


身体が限界だった。


再生を繰り返した代償。


膝が震える。


リニアは俺を見つめた。


さっきまでの無邪気な笑顔じゃない。


少しだけ真面目な目。


「ソフィ。」


「...なんだ。」


「またね。」


胸がざわつく。


アニルが微笑んだ。


炎が風に舞う。


二人の姿が夕焼けの中へ溶けていく。


「待て!」


俺は叫ぶ。


返事はない。


残ったのは、燃え尽きた街と夕暮れだけだった。



読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、

ブックマークや評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。