第17話 反撃
「ど~ん!」
「っあぁ...!」
真横で壁が炎を上げ弾けた。
爆風に煽られ、肌が焼ける。
「ぐっ...!」
爛れた皮膚が衣服に張り付く。
それでも俺は、カレンを離さなかった。
「あ~痛そう!ねぇ痛い?痛いよね?」
「でも安心しなよ!君は殺しはしないさぁ!」
「背中の子は殺すけどねぇ!!!」
やばい。
やばい。
やばい。
どこまでも追ってくる。
逃げられない。
カレンが殺される。
「あっ...」
足がもつれてしまった。
追いつかれる。
足に力が入らない。
「い、嫌だ...」
背後から、足音が近づいてくる。
「あはっ、もう終わりかなぁ?」
「残念だったねぇ頑張ったのに守れなかった!」
「やだっ...やめ、やめてくだっ....」
「だ~め。」
アニルがカレンに手を伸ばす。
俺は結局守れないのか...
守れるように強くなりたかったのに。
結局ここで...
俺はぎゅっと強く目を瞑った。
その時何かが目の前を通り過ぎる気配がした。
「残念、邪魔が入っちゃった。」
「待たせたな。」
「っ...カーネル!」
「ほら早く立てよ、守るんだろ?」
「...!」
「っ...ありがとうカーネル!」
俺はこの場をカーネルに託しカレンを背負い直し走った。
「行かせないよ~!」
カーネルの剣がアニルへ突きつけられる。
「空気読めねぇなお前、童貞だろ。」
「はぁ?」
「司祭のコスプレして童貞の言い訳しやがって。」
「何?お前、頭おかしいの?」
「僕、お前みたいな変な人と話してる暇ないんだけどっ...!?」
背後からミルネがアニルの右足を斬りつけた。
バランスを崩したアニルをすかさずカーネルが蹴り飛ばす。
「ぐぉっ!」
アニルが壁へ打ち付けられた。
「イグ・トールッ!!」
カーネルの腕から雷光が走りアニルへと突き進む。
雷光が壁へ稲妻の亀裂を作り破裂する。
粉塵が壁の周囲を包み込んだ。
「やったっす!」
「よくやった、ミルネ!」
「不意打ちとか酷いじゃないか...」
宙に舞う粉塵が一瞬で燃え尽き、視界が晴れる。
その向こうからアニルが姿を現した。
「まぁ、そんな簡単には行かねぇよな。」
「エル・フレイム」
アニルの手の平から巨大な炎が噴き出した。
「っ!」
カーネルが咄嗟に前へ出る。
「ミルネ下がれ!」
「了解っす!」
「エル・トールッッ!!!」
アニルの炎と同等の大きさの雷光が地面を割る。
雷光は炎を纏いながらアニルに一直線へと走った。
アニルは背中から炎の腕を生やし、瓦礫を掴む。
そのまま身体を引き寄せ、雷光を紙一重で躱した。
「おっと、意外だなぁ君も上級魔法使えるんだ。」
「随分余裕そうだな。」
「だって本気出してないもん。」
「ちょっとだけ...君に興味が出てきたよ。」
「...そりゃどうも。」
カーネルは剣を構え直した。
「俺はお前みたいな男にチリ一つの興味もねぇけどな。」
「ふふっ、そういうところも好きだよ。」
アニルが一歩踏み出す。
「じゃあ、もう少しだけ遊ぼうか。」
カーネルが剣先をアニルへ向ける。
アニルがにやりと笑う。
「行くぞミルネ。」
「了解っす!」
アニルが勢いよく飛び出した。
アニルの手の平がピッタリとカーネルの胸にくっ付いた。
「エル・フレア」
「っ...!」
轟音と共に、カーネルの身体が燃え上がる。
「カーネル様っ!」
ミルネが叫び、剣を握り直した。
「よそ見はダメだよ?」
アニルの笑顔が目の前まで迫る。
「イグ・フレイム!」
炎弾が放たれる。
「くっ...!」
ミルネは身を捻って避けるが、肩を掠めた炎が制服を焦がした。
「熱っ...!」
「弱い弱い! もっと楽しませてよ!」
アニルは子供のように笑いながら、炎の腕を何本も生み出す。
「ほら!待てよ~」
「邪魔っす!」
ミルネが炎の腕から逃げ回る。
カーネルが剣を大きく横に切り払う。
アニルが自身の腹を炎に変えカーネルの剣をすり抜ける。
「わぁ凄い!生きてる!」
「当たり前だろ。俺は騎士団第六部隊隊長カーネル様だぞ。」
アニルが傷一つないカーネルをマジマジと見る。
そしてニヤリと口元をゆがませた。
「なぁんだ君も魔女様に選ばれた側じゃん。」
「俺の能力を気色悪ぃ言い方すんじゃねぇよ!」
カーネルの鋭い回し蹴りが軽くアニルに受け止められる。
「同じ選ばれた人間同士仲よくしようよ!」
アニルが止めたカーネルの足先から炎が体に広がる。
「エル・トールッッ!!」
「あがっ...!?」
カーネルが自身ごとアニルに電撃を浴びせた。
カーネルの身体から凄まじい電撃が迸る。
その電撃は、触れているアニルへも容赦なく流れ込んだ。
「ぐっ...!」
二人の身体が激しく痙攣する。
「カーネル様っ!」
ミルネが叫ぶ。
やがて電撃が止まり、カーネルが膝をついた。
「はぁ...はぁ...」
「カーネル様!」
ミルネが駆け寄ろうとする。
その時。
「ふふっ。」
「...?」
アニルが笑った。
「やっぱり面白いなぁ。」
焼け焦げた服の隙間から、アニルがゆっくりと顔を上げる。
「傷がすぐに治るからって自分まで巻き込むなんてさぁ。」
「...うるせぇ、俺のやり方に口出すんじゃねぇよ。」
カーネルが立ち上がる。
「お前をぶっ殺せるなら、多少痺れるくらいどうってことねぇよ。」
アニルは目を細める。
「やっぱり君、好きだなぁ。」
「気色悪ぃんだよ。」
「ふふっ。」
アニルの周囲に炎が渦巻く。
「じゃあさ、もっと見せてよ。」
その瞬間、炎が一気に膨れ上がった。
空に、キラリと光が走った。
「...え?」
アニルが目を見開く。
次の瞬間。
両腕が落ちた。
「やぁ...おかえり。」
「待ってたよ、お嬢ちゃん。」
「ソフィ!」
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