第8話:選別される者たちと、交差する運命
翌朝。
まだ眠気の残る空気の中。
学園全体が、どこかざわついていた。
(……昨日のせい……?)
視線を感じる。
知られている。
あの測定結果は——隠せるものじゃなかった。
⸻
「ねえ、今日クラス分けだって」
リナが小声で言う。
「クラス分け……?」
「うん。測定結果で振り分けられるの」
胸が、ざわりと揺れる。
(……評価される)
その言葉だけで、息が詰まりそうになる。
案内されたのは、大講堂だった。
高い天井。
整然と並ぶ生徒たち。
前方には教官陣。
そして。
少し離れて——
黒い影。
(……あれ?確か昨日も……)
けれど。
周囲の生徒は、誰も気づいていない。
「これより、クラス分けを発表する」
教官の声が響く。
「本学園では、能力に応じて階級を分ける」
ざわめき。
「上位より——特別科、第一科、第二科、第三科」
(……特別科……?)
嫌な予感がよぎる。
名前が、次々と呼ばれていく。
第一科。
第二科。
リナの名前も呼ばれた。
「第二科……か」
少し悔しそうに笑う。
「でも、頑張るよ」
その言葉に。
ほんの少しだけ救われる。
そして。
「最後に——特別科」
空気が変わる。
「該当者は二名」
ざわめきが爆発する。
「ノア・ルミエール」
納得のどよめき。
そして——
「ミラベル」
(……え……)
思考が止まる。
周囲の視線が、一斉に集まる。
「測定不能の魔力量」
淡々とした声。
「無詠唱・無媒介による術式発動」
「前例なし」
「よって特別科へ編入とする」
逃げ場は、なかった。
足が震える。
怖い。
目立つことが、怖い。
その時。
視線を感じた。
ノアが、こちらを見ている。
逸らさない。
昨日と同じ目。
だが——わずかに違う。
(何だろう、この感じ。やっぱり怖い)
思わず視線を逸らしてしまう。
⸻
「特別科は別棟だ。案内に従え」
ざわめきの中。
足が動く。
逃げられない。
これは——自分で選んだ道。
講堂を出る。
通路は静かだった。
誰もいないはずの場所で。
ふと、足が止まる。
気配。
振り向く。
そこに——黒い影があった。
輪郭だけが、空間から切り取られている。
近いのに。
遠い。
触れられないもの。
「守護」
それだけを残し。
影は消えた。
⸻
(……今の、何……)
呼吸が乱れる。
意味は分からない。
でも、確かに“自分の何か”が見られていた。
特別科。
選別。
守護。
すべてが、静かに動き始めている。
私はまだ知らない。
“守護”という言葉の意味も。
それが——何を呼ぶのかも。




