第55話 強さの向こう側
——学園・医務室
「数日は戦闘訓練禁止です」
「……」
ガルドは不満そうに黙る。
「影の暴走による魔力損傷」
「完治するまでは使用禁止」
「分かった」
意外にも。
今回は素直だった。
⸻
——特別科訓練場
ガルドは見学席に座っていた。
いつもなら。
あそこにいる。
ノアの隣。
前衛として。
だが今日は違う。
四人を見る。
ノア。
セレス。
エルフィナ。
ミラベル。
以前なら見えなかったものが見える。
ノアは一人で戦っていない。
セレスは全体を繋いでいる。
エルフィナは命令ではなく、調整している。
そして。
ミラベル。
誰よりも周りを見ている。
「……」
ガルドは拳を握る。
(俺は)
(ずっと勝つことしか見てなかった)
(自分が強ければいいと思ってた)
でも。
違った。
強さは一人で証明するものじゃない。
⸻
訓練終了後。
ミラベルが近づく。
「体、まだ痛む?」
「別に」
「そっか……」
少し笑う。
ガルドは黙る。
そして。
「……昨日」
「悪かった」
ミラベルは驚く。
「俺のせいで」
「お前を傷つけた」
「……」
「もう少しで」
言葉が詰まる。
ミラベルは首を振る。
「でも」
「ガルドは止めようとしてた」
「……」
「それは見てたよ」
ガルドは目を逸らす。
⸻
その帰り。
ガルドは一人で歩く。
いつもなら。
孤独だと思っていた道。
でも。
今日は違う。
少し離れた先に。
仲間の声が聞こえる。
「ガルド!」
ミラベルが呼ぶ。
「明日も見学?」
「……」
少し考える。
「……ああ」
「でも」
「早く戻る」
ミラベルが笑う。
「待ってる」
⸻
ガルドは空を見る。
まだ問題はある。
影のこと。
自分自身のこと。
でも。
初めて思った。
戻りたい。
あの輪の中へ。




