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地獄の毎日から目覚めた少女は、元王家の生き残りでした 〜新しい運命の扉を開く〜  作者: 白椿(しろつばき)


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第53話 揺れの中心

――学園・特別科訓練場


「みなさん、まずは前衛と後衛を決めましょう」


エルフィナが淡々と告げる。


「通常時の基礎体形を決めておけば、緊急時にも臨機応変に動けます」


前回の失敗を踏まえた改善案。


誰かが欠けた時。

判断が遅れた時。


それでも崩れない形を作る。


それがエルフィナの出した答えだった。


しかし。


「……はっ」


ガルドが鼻で笑う。


「そんな基礎、言われなくてもできるだろ」


ノアが返す。


「互いが認識しておく意味はある」


「そりゃそうだろ」


ガルドは肩をすくめる。


「でもよ」


「そんな当たり前の確認してる暇があるなら、実戦で経験積んだ方が早い」


空気が少し重くなる。


セレスが苦笑した。


「これはまた……」


エルフィナは表情を変えない。


「今回は私が指示役です」


「まず実践してください」


「問題があれば、その後で聞きます」


ガルドは不満そうに見る。


それでも。


「……勝手にしろ」


と呟いた。


「前衛はノア、ガルドさん」


「後衛は私とセレス」


「ミラベルは援護をお願いします」


「ああ」


ノアが頷く。


「わかった」


セレスも続く。


「了解」


「ったく……」


ガルドは渋々返事をした。


ミラベルはペンダントを握る。


「……うん」


――


訓練場。


魔物を模した的を使った連携確認。


ノアとガルドが前へ。


エルフィナとセレスが後方から援護。


「右から来ます」


エルフィナの指示。


ノアが動く。


ガルドも合わせる。


魔法が当たり、的が倒れる。


「次」


エルフィナが言う。


奥から三体。


ノアが魔法を放ち、動きを確認する。


その瞬間。


「待て」


ガルドが止まる。


「何だ」


ノアが見る。


「動きもしねぇ的相手に、急に想定で動けって言われても無理があるだろ」


「イメージで補うしかありません」


エルフィナが答える。


「校内で実際の魔物を使った訓練は授業以外では許可されていません」


「だからこの方法しかありません」


ガルドはため息を吐く。


「そういうところだよ」


「?」


「机の上で考えた方法ばっかりだ」


空気が止まる。


セレスが口を挟む。


「ガルド、言い方」


「事実だろ」


ガルドは続ける。


「実戦じゃ何が起きるかわからねぇ」


「こんな予定通りの練習に、どれだけ意味があるんだよ」


ミラベルが不安そうに見る。


「ガルド……」


エルフィナは静かに返す。


「意味はあります」


「連携とは、事前に決めることで――」


「だから!」


ガルドの声が響く。


「そういうところだって言ってんだよ!」


影が揺れる。


ミラベルが息を飲む。


「二人とも、待って」


しかし。


「もういい」


ガルドは背を向ける。


「やってられるか」


そのまま訓練場を出ていく。


残された空気は最悪だった。



しばらく沈黙。


エルフィナは俯く。


「……私の指示が悪かったですね」


セレスが見る。


「エルフィナ?」


「改善します」


「今回の問題点は、ガルドさんが固定された役割に合わせにくいこと」


「なら」


エルフィナは考える。


「前衛、後衛という区分をなくします」


「自由に動ける形に変更します」


セレスの表情が曇る。


「それだと……」


「……ガルドは、また」


そこまで言って飲み込む。


エルフィナは気づかない。


「善は急いだ方がいいです」


「ガルドさんも、ミラベルも行ってしまいました」


顔を上げ、


「今日は解散しましょう」


「帰って改善案をまとめます」


そう言って歩き出す。


ノアが声をかける。


「おい、あいつら二人のことはいいのか?」


エルフィナが止まる。


「私が追いかけても火に油でしょう」


「私は、私のやるべきことをやります」


力強く答える。

意思は固いようだ。


そして去って行った。


残されたノアとセレス。


二人は顔を見合わせた。


「……」


「……」


セレスが呟く。


「すごいな」


「何が」


「自分の問題に集中すると、周りが見えなくなる」


ノアは返事をしない。


ただ。


ミラベルが消えた方向を見る。


「……嫌な予感がする」



――その頃。


「ガルド!」


ミラベルが追いつく。


「……何で来た」


「迎えに来た」


「帰れ」


「嫌」


即答。


ガルドの眉が動く。


「……」


ミラベルは言う。


「一人にしたくない」


その言葉が。


逆に。


ガルドの奥に溜まっていたものを刺激する。


「……」


「何も知らねぇくせに」


ガルドの声が震える。


「俺がどれだけ……」


言葉が止まる。


その瞬間。


足元の影が、本人の意思とは関係なく広がった。


ミラベルは息を飲む。


「……ガルド?」


黒い影は、まるで彼の代わりに怒りを叫ぶように形を変えた。

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