表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の毎日から目覚めた少女は、元王家の生き残りでした 〜新しい運命の扉を開く〜  作者: 白椿(しろつばき)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/56

第46話 国境線任務

——国境付近・森の麓


小さな集落。


火が上がっていた。

だが、それは自然の火ではない。

何もない空間から、“滲むように”生まれた炎。

燃え広がらない。


だが、消えもしない。

異質な火。


「……自然じゃない」


白髭の老人が呟く。


「何かが起こりよるわい」


風が森へ流れる。


火が、わずかに揺れる。


老人は森の奥へ視線を向ける。


その先にはただ深い森が続いていた……


——学園・特別科教室(翌日)


再び、五人は教室に集められていた。


教官は淡々と告げる。


「二年生最初の課題を伝える」


空気が引き締まる。


「国境付近の森の調査だ」


一瞬、教室の空気が揺れた。


「この森は外界に近いにも関わらず、魔力干渉が極めて少ない安定領域だ」


「だが最近、その均衡に乱れが確認されている」


教官は続ける。


「加えて、麓の集落で原因不明の発火現象が発生した」


ミラベルの胸が跳ねる。


(……集落で火事?

お爺さんは無事?)



ノアが低く呟く。

「外側の境界、か」


セレスは目を細める。

「国境付近なのに魔力が安定してるのは珍しいね」


エルフィナは静かに言う。

「合理的な任務です」


ガルドは舌打ちする。

「結局、現場仕事かよ」


エルフィナは淡々と返す。

「任務は評価ではなく結果です」


ガルドはそれ以上何も言わなかった。


ミラベルは小さく息を吐く。


(森……あの場所)

“目覚めたときにいた場所”

偶然ではない。

胸元のペンダントが、かすかに熱を帯びる。


ノアが横目でミラベルを見る。

「行くしかないな」


「うん……」

ミラベルは短く答えた。


セレスが伸びをする。

「じゃ、準備だね」



——国境街道


一行は王都を離れ、国境方面へと向かっていた。


途中、商人の馬車に同乗し、時には徒歩で進む。


街道を抜けるほどに、空気は変わっていく。


魔力の流れが薄くなり、静けさが増していく。


ノアが小さく呟く。

「……確かに、学園や山とは違うな」


セレスは周囲を見回す。

「魔力の密度が低い。こういう場所は珍しい」


ミラベルは黙って胸元に触れる。

ペンダントは、まだ微かに脈打っていた。

まるで、何かに近づいているかのように。



——夕暮れ・国境の村


日が傾く頃、一行は小さな村に到着した。


質素だが、どこか温かい空気がある。

だが同時に、どこか張り詰めてもいた。


村の奥から老人が手を振った。

「おお、ミラベルか。元気にしておったか」


ミラベルの表情がわずかに緩む。

「お爺さん……よかった。無事だったんだね」


老人は笑いながら頷いた。


「火はあったが、たいしたことはなかったわい」


一瞬、間があった。


「……ただな」


老人は視線を森の方へ向ける。


「火が“消えん”のじゃ」


「消えない?それって……」

ミラベルは困惑した。


「今日は遅い。明日見に行ってみよう」

ノアが言う。


「そうだね。明るくなって、様子を見に行こう」

セレスも賛同した。



その夜は村で休むことになった。


ミラベルとエルフィナは村長宅の空き部屋へ。


ノア、セレス、ガルドは別の古い建物へ。


静かな夜が流れていく。


虫の音も、風の音もある。


だがどこか、ひとつ“足りない”。


——音が、奥まで届かない。


ミラベルは目を閉じる。


胸元のペンダントが、わずかに脈打った。


まるで、外の何かと呼応するように。



翌朝。


五人は森の前に立っていた。

森は静かだった。

あまりにも静かすぎる。


ノアが低く呟く。

「……ここは、瘴気の山とは違うな」


セレスは見渡しながら返す。

「そうだね。あっちは内側、こっちは外側」


エルフィナは無言のまま森を見ている。


ガルドも言葉を失っていた。


ミラベルは胸元に手を当てた。


ペンダントが——強く脈打つ。


「……っ」


息が詰まる。


風がざわりと揺れた。


木々の奥。


何かが“動いた気がした”。


だが、姿はない。


(ここは——外側の境界)


ミラベルは、確かにそう感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ