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地獄の毎日から目覚めた少女は、元王家の生き残りでした 〜新しい運命の扉を開く〜  作者: 白椿(しろつばき)


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第30話 池底の歪み

——訓練場奥の池


黒い水面が、不気味に波打っていた。


次々と這い出してくる魔物。


小型だが数が多い。


一体倒しても、

すぐ次が現れる。


「っ……!」


ミラベルは光を放つ。


守護魔法が弾け、

飛びかかってきた魔物を吹き飛ばした。


だが——止まらない。


水面が揺れるたび、

新たな影が生まれる。


(キリがない……!)


呼吸が乱れる。


魔力の消耗も激しい。


守護魔法は防御と浄化に優れている。


けれど、

連続戦闘には向かない。


押し切られる——


その瞬間。


背後の茂みが揺れた。


「っ!?」


黒い影が飛び出す。


鋭い牙。


一直線に、

ミラベルへ迫る。


避けきれない。


そう思った瞬間——


閃光。


光弾が魔物を撃ち抜いた。


「ぼーっとすんな」


低い声。


ミラベルの前へ、

ノアが滑り込むように立つ。


続けて炎が走った。


セレスの魔法が、

池際の魔物をまとめて吹き飛ばす。


熱風が霧を散らした。


「無茶しすぎ」


セレスが苦笑する。


「二人とも……!」


張り詰めていた呼吸が、

少しだけ戻る。


だが——


池はなおも、

不気味に脈打っていた。


「数が減ってない」


ノアが水面を睨む。


倒しても倒しても、

次が湧く。


セレスも表情を引き締めた。


「発生源があるはずだ」


炎を放ちながら続ける。


「こんな湧き方、自然じゃない」


その言葉に、

ミラベルの胸元が熱を持った。


ペンダント。


じんわりと震える。


池の奥。


“何か”がいる。


ミラベルは目を閉じた。


意識を集中する。


黒い流れ。


渦巻く魔力。


その中心——


(……深い)


池の底。


強い魔力が脈打っている。


「……あった!」


ミラベルが顔を上げる。


「池の底……! 強い反応がある!」


「場所は!?」


セレスが叫ぶ。


「中央より少し奥!」


言い終わる前に——


ノアが駆け出した。


「えっ」


そのまま勢いよく、

池へ飛び込む。


——ザバァッ!!


大きな水音。


「ちょっ、ノア!?」


セレスが目を見開く。


だがノアは止まらない。


黒い水の中へ、

一直線に潜っていく。


水面の下で、

魔物たちが蠢く。


次の瞬間。


水中で、

光が弾けた。


鋭い閃光。


——バキンッ!!


何かが砕ける音が響く。


同時に、

池全体が大きく揺れた。


黒い紋様が、

水中に浮かび上がる。


魔法陣。


歪んだ術式が、

音を立てて崩壊していく。


「……っ!」


魔物たちの動きが止まった。


瘴気が揺らぐ。


一体。


また一体と、

影が崩れ落ちていく。


やがて——


池は静けさを取り戻した。


波紋だけが、

ゆっくり広がっていく。


数秒後。


——バシャッ!


ノアが水面から上がる。


びしょ濡れのまま、

無言で岸へ戻ってきた。


「……終わった」


短い声。


ミラベルは呆然と瞬きを繰り返す。


セレスが深く息を吐いた。


「いや、普通飛び込む?」


ノアは濡れた髪をかき上げる。


「場所分かってたなら、壊す方が早い」


「雑なんだよなぁ……」


呆れるセレス。


けれどその表情には、

安堵も混じっていた。


ミラベルは、

思わず小さく笑ってしまう。


さっきまで張り詰めていた空気が、

少しだけほどけた気がした。


——そのとき。


岸辺に、

教官たちの足音が響く。


「無事か!」


駆け寄ってきた教官が、

黒く濁った池を見て眉をひそめた。


「……これは、魔法陣の暴走か?」


セレスが小さく息を吐く。


「おそらく。ですが、術式がかなり歪んでいました」


教官は険しい顔のまま、

崩れた魔法陣の残滓を見る。


「誰がこんなものを……」


低い呟き。


だが、

答える者はいない。


ただ——


ミラベルだけは、

胸の奥に小さな違和感を残していた。


(……違う)


ただのイタズラ。


そんなふうには、

思えなかった。

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