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第128話 ちぐはぐな連帯感

訓練場には、魔法がぶつかり合う音が響いていた。


「右だ!」


ノアが叫ぶ。


「分かってる!」


ガルドが魔法を放つ。


しかし、その直後――


「そこじゃない!」


フェリクスの声が飛んだ。


「は?」


ガルドが振り返る。


「今のは左から回り込むべきだっただろ」


「だったら先に言え!」


「言う前に突っ込んだのは君だろう」


「てめぇ……!」


二人の間に、険悪な空気が流れる。


その隙に、敵の魔法が迫った。


「っ!」


セレスが咄嗟に防御魔法を展開する。


「危ない!」


魔法が障壁にぶつかり、激しい衝撃が走った。


リシェルは少し離れた場所で、杖を握ったまま動けずにいた。


「……あの、次はどうすれば……?」


けれど、誰からも指示が飛んでこない。


ガルドはフェリクスを睨み。


フェリクスはガルドを睨み返している。


「……やっぱ、合わねえ」


ガルドが吐き捨てるように言った。


「こっちのセリフだ! いつもこんなんでよくやってるな」


フェリクスは眼鏡を上げながら言う。


張り詰めた空気の中、セレスは二人を止めようとしたとき、

その状況を見ていたノアが、静かに口を開いた。


「……いや」


低い声だった。


それだけで、全員の動きが止まる。


「いつもなら、こうはならない」


フェリクスが眉をひそめた。


「……どういう意味だ?」


「俺たちは普段、相手の動きをある程度分かってる」


ガルドが割って入る。


「そうだ!いつもならこうはならない」


ノアが続く。


「でも今日は違う」


セレスが言葉を足す。


「初めて組んだんだから、当然じゃない?」


セレスはガルドとフェリクスを見ながら困ったように笑った。


「だからこそ、今は喧嘩してる場合じゃないよ」


「……」


フェリクスが黙る。


ガルドも舌打ちをして、前を向いた。


「とりあえず、今は目の前に集中しよう」


セレスが二人を交互に見る。


そして。


「ノア、指示を」


「……分かった」


ノアは一度、深く息を吐いた。


前方には、再び魔法陣が展開されている。


「ガルド、前衛」


「おう」


「フェリクスは右。攻撃の準備をしてくれ」


「了解」


「セレスは二人の援護。リシェルは――」


ノアがリシェルを見る。


「全体を見てくれ。誰かが危なくなったら、すぐ知らせてほしい」


「……分かった!」


リシェルが頷いた。


「俺は全体を見る」


ノアが前を向く。


「勝手に動くな。それだけ守ってくれ」


「それだけって……」


フェリクスが苦笑する。


「結構難しい注文だね」


「だから頼んでる」


「……なるほど」


フェリクスが眼鏡を押し上げた。


その瞬間。


「来るよ!」


セレスが叫ぶ。


複数の魔法陣が同時に起動する。


「ガルド!」


「任せろ!」


ガルドが前へ飛び出した。


大きく腕を振り抜く。


迫っていた魔法を弾き飛ばした。


「フェリクス!」


「今!」


右側から魔法が放たれる。


敵の動きを狙い撃つ。


「まだだ!」


ノアが叫んだ。


フェリクスの動きが止まる。


次の瞬間。


敵の魔法が、ガルドの横を掠めた。


「っ!」


「ガルド!」


セレスが防御魔法を展開する。


「助かった!」


ガルドが体勢を立て直す。


「リシェル!」


「はい!」


リシェルが杖を振る。


淡い光がガルドを包み込み、動きを補助する。


「今だ!」


ノアの声が響いた。


「――いけ!」


フェリクスが魔法を放つ。


直撃。


敵の魔法陣が大きく揺らいだ。


「よし!」


ガルドが拳を握る。


だが。


「まだ来る!」


ノアが叫ぶ。


「え?」


リシェルが顔を上げる。


魔法陣が再び展開された。


「……次は、もっと多い」


セレスが呟く。


ガルドが苦笑する。


「勘弁してくれよ……」


「文句は後」


フェリクスが構える。


「今は――」


一瞬。


二人の視線が重なる。


先ほどまでなら、そこでまた言い争っていた。


けれど。


「……行くぞ」


ガルドが言った。


「分かってる」


フェリクスも答える。


二人が同時に前を向いた。


ノアはそれを見て、ほんの少しだけ口元を緩めた。


「……そうだ」


これでいい。


まだ完璧じゃない。


けれど。


少しずつ、噛み合い始めている。


「全員、行くぞ!」


「おう!」


「了解!」


「分かった!」


「はい!」


五人の声が重なった。


再び魔法が飛び交う。


今度は――


先ほどよりも、確かに連携が取れていた。


その様子を監督官たちは黙って見つめていた。

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