第126話 興味深い魔法
「――始め!」
監察官の声と同時に、魔法陣が起動した。
地面が震える。
模擬地形がせり上がり、視界を遮る。
「来る!」
ミラベルが声を上げた。
同じタイミングでレオニスが構える。
次の瞬間。
正面から魔力の塊が飛んでくる。
「任せて!」
ミラベルが手をかざした。
空気が揺れる。
魔法が弾けたが、ミラベル魔力がそれを防いだ。
ただ、それだけではない。
衝撃そのものが押し返され、前方の地面を大きく削った。
「……」
エルフィナの目がわずかに見開かれる。
(……やっぱり)
以前とは違う。
魔力の立ち上がり。
術式の展開速度。
そして、出力。
どれも、以前のミラベルとは明らかに違っていた。
「ミラベル」
「なに?」
「今の……」
エルフィナは一瞬言葉を選ぶ。
「前より、強くなってる」
「そう?」
ミラベルは自分の手を見る。
「自分ではあんまり分からないんだけど」
「私は分かるよ」
エルフィナは静かに答えた。
「かなり違う」
初めて見たミラベルの魔法にカインが、口を開いた。
「すごいな」
素直な驚きだった。
ルークは目を輝かせる。
「わぁ」
楽しそうに笑った。
「これは興味深いね」
ミラベルが首を傾げる。
「そう?」
「うん。今の一撃、かなりの出力だったよね?」
「たぶん?」
「たぶんって……」
ルークが面白そうに笑う。
一方。
レオニスは微動だにしていなかった。
腕を組んだまま、ミラベルを見る。
「……それがどうした」
カインが振り返る。
「レオニス?」
「魔力が強い。それだけだろう」
淡々とした声。
「それで戦場を制せるとは限らない」
ミラベルは少しだけ目を丸くした。
「なるほど」
「感心するところか?」
「うん。確かにそうだね」
あっさり頷く。
レオニスの眉がわずかに動いた。
もっと反発してくると思っていたのかもしれない。
その横で、ルークがくすくす笑う。
「面白いなぁ」
「何が?」
「いや?」
ルークはミラベルを見た。
「君、もっと鼻にかけてもよさそうなのにね」
「鼻?」
「自分の力」
「うーん」
ミラベルは少し考える。
「強いのかどうか、自分じゃよく分からないから」
軽く笑う。
「……」
その言葉に、エルフィナだけが静かにミラベルを見る。
(分からない、か)
けれど。
確かに変わった。
以前なら、今の一撃を出すのに少し時間がかかっていた。
それを今はほとんど迷いなく使っている。
エルフィナは小さく息を吐いた。
「……ミラベル」
「ん?」
「少しだけ、気をつけて」
「何を?」
「あなたの力に」
ミラベルは首を傾げる。
「……私の力?」
「おーい、サボってないで、こっち!」
ルークの声が聞こえた。
「ええ!今行くわ」
エルフィナは振り返ることなく声の方へ歩いていった。
「あっ、待って」
ミラベルは言葉の意味を理解できないまま後を追う。
観察席から向けられている視線だけは、先ほどより明らかに強くなっていた。




