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第124話 交わる異物

監督官の後を追い、五人は校舎の奥へ進んだ。


普段、生徒が立ち入ることのない一角だった。


やがて、一枚の大きな扉の前で監督官が足を止める。


「ここだ」


扉が開く。


その先に――五人の生徒がいた。


誰一人として、こちらを見て驚く様子はない。


まるで、最初から待っていたかのようだった。


「遅かったな」


中央に立っていた少年が口を開く。


整った身なり。


背筋は伸び、こちらを見る目には迷いがない。


「レオニス・ヴァルハルト」


監督官が紹介する。


「王家の推薦により、本日から特別科に加わる」


レオニスは五人を見渡した。


「よろしく頼む」


言葉は丁寧だった。


だが、その目には明らかな優越感があった。


「……なんか、偉そうだな」


ガルドが呟く。


レオニスの視線が向く。


「事実、僕たちは王家に選ばれている」


「だから?」


「だから、相応の期待をされているということだ」


「……気に入らねぇ」


ガルドが顔をしかめる。


その横で、別の少年が口を開いた。


「うるさい」


短い一言。


黒髪の少年が壁にもたれている。


「カイン・レグナード」


監督官が告げる。


カインはガルドには興味を示さず、ノアへ視線を向けた。


「……お前」


「俺?」


「強いのか?」


ノアが眉を上げる。


「さあな」


「そうか」


カインはそれだけ言った。


けれど、視線は外さない。


二人の間に、妙な緊張が走る。


「……何だこいつ」


ガルドが呟く。


「君よりは静かだね」


今度は別の声。


眼鏡をかけた少年が、手にしていた本を閉じた。


「フェリクス・エーデル」


監督官が紹介する。


フェリクスはセレスを見る。


「君がセレスか」


「……知ってるの?」


「少し調べた」


「僕も同じだよ」


セレスが答える。


フェリクスが薄く笑った。


「それは楽しみだ」


二人の間に、静かな火花が散る。


その横では。


「へえ」


軽い声がした。


少年がミラベルたちを眺める。


「これが、噂の特別科か」


「ルーク・アシュベル」


監督官が紹介する。


ルークは笑っている。


一見すると、人懐っこい。


「仲良くしようぜ」


そう言いながら。


その目は、五人を値踏みするように動いていた。


「……」


最後に。


一人の少女が、ミラベルを見つめていた。


淡い髪。


冷たい瞳。


「リシェル・ディアヴェル」


監督官が告げる。


「……」


リシェルは何も言わない。


ただ、ミラベルから視線を逸らさなかった。


「何?」


ミラベルが尋ねる。


「……別に」


リシェルは静かに答えた。


けれど、その目には明らかな警戒があった。


エルフィナが一歩、ミラベルの前に出る。


「何かあるの?」


リシェルがエルフィナを見る。


「あなたには関係ないわ」


「……」


空気が変わった。


ノアがミラベルを見る。


セレスも黙って二人を見ている。


そんな中。


レオニスが口を開いた。


「君がミラベルか」


「……そうだけど」


「昨日、王家管理棟へ行ったそうだな」


ミラベルの表情が変わる。


「……知ってるの?」


「当然だ」


レオニスは淡々と言った。


「王家に関わることなら、僕たちが知らないはずがない」


「……」


「一つ聞きたい」


レオニスがミラベルを見る。


「なぜ、そこまでして第二科の生徒を庇った?」


「友達だから」


即答だった。


レオニスの眉がわずかに動く。


「それだけ?」


「それだけで十分でしょ」


ミラベルはまっすぐ見返す。


「……そうか」


レオニスは目を細めた。


「君は、ずいぶんと感情で動くんだな」


「感情?」


「王家が決めたことに対して、個人的な感情を優先した」


「……」


ミラベルは黙った。


レオニスは続ける。


「それが正しいと思っているのか?」


ミラベルは、少しだけ考える。


そして。


「正しいかどうかは分からない」


「ただ」


まっすぐレオニスを見る。


「目の前で困っている人を、見捨てたくないだけ」


レオニスの表情から笑みが消えた。


リシェルも。


ルークも。


そして、カインまでもがミラベルを見る。


誰も口を開かない。


やがて。


「……なるほど」


レオニスが呟いた。


「……君、変わってる」


ミラベルの眉が動く。


「何が?」


「その考え方だ」


レオニスは静かに言った。


その言葉に。


ミラベルは、何も答えなかった。


ただ。


一歩も引かなかった。

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