第123話 不穏な加入
翌朝。
学園には、何もなかったかのような空気が流れていた。
第二科は、なくなっていた。
昨日までそこにいた生徒たちも。
教室も。
掲示されていた名簿さえも。
最初から存在しなかったかのように、綺麗に消えている。
二科について触れる者はいなかった。
「……おかしいだろ」
ガルドが呟いた。
「何でだ?」
昨日まで、他の連中が話していたから。
ガルドも、何となく知っていた。
それだけだった。
だからこそ。
「……なのに、誰も何も言わないってのは……」
ガルドは周囲を見回した。
「おかしいだろ?」
エルフィナは黙っていた。
今朝になって、ミラベルからリナのことを聞いた。
その目は、泣き腫らして赤くなっている。
「……リナ」
小さく名前を呟く。
セレスは腕を組んだ。
「僕なりに情報は集めた」
ガルドが顔を向ける。
「何か分かったのか?」
「少しだけ」
セレスは声を落とした。
「でも、これを学園で共有するのはやめておく」
「なんでだ?」
「誰かに聞かれたら厄介だからね」
ガルドが黙る。
その横で。
ミラベルは、まっすぐ前を見ていた。
「……ミラベル」
ノアが声をかける。
「昨日のこと……」
ミラベルは答えなかった。
ただ、前を見つめている。
その横顔には、昨日のような涙はなかった。
「セレス、教えて」
「……え?」
「どこだって関係ない。私は聞くよ」
ミラベルは、まっすぐ前を見たまま続ける。
「助けるためなら」
「私は、何も知らないままにはしたくない」
その言葉に、セレスがわずかに目を細めた。
その時だった。
廊下の向こうから、足音が響く。
五人が振り返る。
そこにいたのは、王家監察局の監督官だった。
「お前たち」
監督官が五人を見渡す。
「特別科の五名だな」
「……だったらなんだよ」
苛立ちを抱えたガルドが答える。
監督官は淡々と告げた。
「来い」
「どこへ?」
「王家から指示が出ている」
「何の指示だよ?」
監督官は五人をまっすぐ見つめた。
「特別科に、新たな生徒が加わる」
「……は?」
「五名だ」
ガルドが眉をひそめる。
「五人も?」
「王家が選んだ者たちだ」
監督官はそれだけ告げると、踵を返した。
「案内する」
五人は顔を見合わせる。
第二科が消えた、その翌朝。
今度は特別科に――
王家が選んだ五人が加わる。




