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第九章

レイワマンションの新規ご契約ありがとうございます?~第九章




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Scene. 31  誰が宇宙人アルパカ ?


卓上のアールグレイは既に冷め切っている。

コンシェルジュ☆ヤソキチはレミママとの思い出を胸に秘め、虚ろにもヨダレも垂れんばかりに宙を見やる。なんとも情けない体裁で。


誰もが事の成り行きに呆然としている様子。

と、エミが口火を切った。



「ええと、今思い出したのですが、父は私が小さい頃に、よく八ヶ岳の天文観測所に連れて行きました。


そして冬の寒い夜に観測所から見える無数の星星の中でふと、こんなことを呟きました。


「嗚呼、あの星にもう一度連れて行っておくれ・・・」と。


私には何やら理解することすら出来ませんでしたが、今のお話から思えば、それは火星に有人ロケットで始めてたどり着いた人類として正直な言葉だったのかもしれませんが・・・」



一同は想いを巡らす。

誰しも想像すらできない火星への想い。

それをもしかしたらエミの父親はかみ締めていたのかもしれない。


そしてまたもや一同に深い感慨が訪れる。

静まり返ったリビングに振り子時計のノックする音がこだましている。

原田女史は冷めた紅茶を片付ける。

夜も深まって行く午前2時。



と、夏子も思い出したように過去を振り返ると呟く。


「私もレミちゃんとよく旅行をしたけど、あの頃のあの子、そんなスパイするような悪びれたところなんて微塵も見せなかったわ。


それどころか、まぁ売れっ子のアイドルだったから、食事とかいろいろとご馳走もしてくれたの。景色を見ながら気分よさげに鼻歌なんて歌っていたっけ・・・なつかしいなあ。


あの頃に戻りたい・・・ヤソキチさん!ウソでしょっ、こんなでっち上げ!あの子がスパイだなんてできっこないわ!」



コンシェルジュ☆ヤソキチはとぼけでもするように、尚も天井を見上げる。

困り果てた様子のヤソキチの妻がやっとのことで口を開く。



「そうかも知りませんがね・・・あのう、皆さんもご存知でしょう、「レイワマンション」の霊現象にも似た不思議な出来事。


耳元で囁かれたり、玄関で誰かが監視しているような気配がしたり・・・


その現象ですが、どうやらレミさんの彼氏、そう元彼が辺りをウロついていたようなんです。実はうちではセキュリティーのために各所に監視カメラを据えつけていまして・・・

そしてその方に似た人影は幾度と無く記録されているのは事実なのです。


それから、変な音の件については通信の不具合で盗聴している側の音声が盗聴機から発せられることが考えられないでしょうか。


これらからやはり主人の言っていることはあながちウソだとばかりは申せないと思います。


実のところ「宇宙関連の国家プロジェクト」についてはヤソキチが家族にも内密にしていたので、私達家族も殆ど知らされてはいませんが。レミさんと主人との関係の件も判りかねます・・・」



妻の言葉に一同は聞き入るのみ。

そこへ新たにお茶を沸かしてきた原田女史が参上する。

おのおのに今度は暑いキリマンジャロを配ってゆく。



「お母さん、大変だったわね・・・だけどいいの。私がお父さんの望みを全て託されたのだから・・・大丈夫。皆さんにはちゃあんと説明しますから。


父は「次元移転装置」の開発に当たって、私の主人にその指揮を一任していました。


それというのも、部下としての絶対的な信頼を託していたこともあり、それよりも、自分の大事な娘との関係も承諾するほどの間柄でしたから・・・


主人は私がこちらへ移住する前からこの地における構想にずっと取り組んでいました。


私はほぼ完成された段階で5年間こちらの「姫百合島」に暮らしてきましたが、主人はとっくに実験を終えた「次元移転装置」をリニアに装着し、あらゆる場所や次元へトラベルすることを成しえていたのです・・・


私がそれを知ったのはつい1年くらい前のことですが。

エミさんのお父さんが火星に人類初着陸したのも1年程前のことなのですよ。


確かにレミさんの行動には不振なところが多いと主人も存じ上げていました。そしてレミさんの別れた彼氏がこの地にも潜伏しているようだとも申しております。しかし証拠となることは未だ見つかってはいません。


父との関係も含め一概に否定は出来ませんが、スパイ行動についてはレミさんも彼氏に利用されていた節があります。あの人ももしかしたら可哀想な人なのかもしれません・・」



渡されたキリマンジャロが丁度良く冷めたところで一同がすする。

やっと我に帰ったのか、ヤソキチが皆を怪訝に見回す。

サトルがこれまでの話のまとめにでも入るように話し始める。



「皆さんの言い分はわかりました。今回のレミママ探しは一旦終了しませんか?エミや豊島さんにしても明日の仕事が有るでしょうし、スパイの可能性のあるレミさんを探す意味が僕にもわからなくなってしまいましたから・・・ヤソキチさんもお歳で支離滅裂になっているようですし、国家プロジェクトでお忙しいでしょう。ヤソキチさん、ひとまず僕らをマンションまで返して貰えないでしょうかね・・・」



それを聞くやヤソキチが語り始める。


「サトル君、そして皆さん。お気持ちはよーく判ります。ですがね、明日の仕事よりももっと重要なことはあるのですよ。良いですか、先ほどあなた方には覚悟を決めて貰ったはず。そう、もう後戻りは出来ないのです!」



ことの様子をジッと伺っていた夏子が吐き捨てるようにそれを遮る。



「だからダメなのよ、昔からな~んにも変わってないわね、ほんと。ヤソキチさんって、いつも空想みたいなことばっかり言ってたっけ。誰が信じるのよ、こんなでっち上げ。そろそろネタバレしてもいいかしらね・・・ヤソキチさ~ん、あのこと。」



それを聞くやヤソキチの頬がポツと赤らむのに一同が気付く。

動揺を隠せないヤソキチはモジモジしてみせる。



「なななナッチャン、人が悪いよ・・・」



一同がその様子を見守る。

夏子の眼が一瞬、ギラッと輝く。



「もういいじゃない、ここまでくれば隠したって使用が無いでしょう・・・そうなの、この人、レミちゃんとは深い間柄なのよ。そして奥さんもご存知よね!」



その言葉にヤソキチの妻に同様が走る。

娘の原田女史も何故かうつむいている。



「実はねぇ、レミちゃんって、この人の初恋の人なの。そして奥さんも片想いしていてね、ヤソキチさんって、どういうわけかモテモテだったのよ。中学生の頃はね!」



ヤソキチの顔は瞬間湯沸かし器の如く真っ赤に沸騰する。

もう湯気も出んばかりに!

ついにヤソキチもいきり立つ様に言い放った。



「ああ、そうさ!俺はモテタからな。それがどうしたって言うんだ!いいさいいさ、こうなったら全てぶちまけてやるさ!


そうさ、俺はボケてなんかいないさ。そしてお前らを利用するために「レイワマンション」の人選をやったまでのこと。私の目的のために全て利用させていただいたのさ!何か悪い?


先ず、金回りの良さそうな芸能関係者や商社、政界や金融関係に調査を掛け合ったまで。そして私の「国家プロジェクト」を成就するために「レイワ信託銀行」で一括管理させていただいたまでさ。もう私が牛耳っているも同じ、全て私のコントロール下にあるのさ!」



ヤソキチの突飛な言葉に一同が唖然とする。

誰しも利用されていたことに驚きを隠せずにいる・・・・





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Scene. 31  誰がウソツキ ?



ヤソキチは続ける。


「エエイッ!もうよい!洗いざらいぶちまけてやるさっ!お~い、レミちゃん。もう出ておいで!」



ヤソキチの一言で戸外から、なんとあのレミママが参上する。

一体どういう展開?

一同はあまりの事の成り行きにひるむ・・・

何事も無かったかのようにレミはヤソキチの隣に座る。



「どうだ、驚いたかい?ああそうさ、レミママはここに居るぞ。何か文句あっか?」



どういう訳か、ヤソキチの投げやりな態度に一同が口をポッカリあける。

そして参上したレミママが、とうとう呟き始める。



「皆さんお揃いですね。驚かせてしまって、ゴメンなさい。こんなところにお呼び立てしたのも誠に申し訳ないのですが・・・そうなんです、私、ヤソキチさんとは幼馴染で、そして奥さんは私の後輩なのよ。

結局ヤソキチさんは彼女に取られちゃいましたが・・・でもそれも昔の話。


お話の一部始終は裏で聞かせていただきました。

スパイの件は私ではなく、ヤソキチさんの仕業です。あなた方を管理、もといセキュリティーのためにやっていたのです。もちろん法律に触れない範囲で。


で、先ほどはヤソキチさんが興奮状態であなた方を利用していると言っておりましたが、そんなことは在りません。人選は確かに金銭面で豊かな方を選んでいますが、決して利用するためではありませんので悪しからず。


そして今回私が失踪する体裁をとったのは、あなた方をここ「姫百合島」へ呼び込むための手段だったのです。というのも、国家プロジェクトがいよいよ軌道に乗ったから成しえたわけで・・・そして私も含め選ばれたマンション住民はここの居住者となるのです。」



サトルは黙って聞いていたものの腑に落ちない様子。

エミにも事の成り行きが理解できずに居る。

やはり納得できない豊島も口を開く。



「あのう、勝手に色々と決めてもらっては困ります。私達はただ単に便利な住環境として「レイワマンション」の住民になったに過ぎないのですよ。国家プロジェクトに利用されるのも持っての外、勝手にこちらへの移住を勧めないでほしいな。」



ヤソキチはキッと睨むように豊島を見つめる。

何かを封じ込めようとするような威圧感が老いぼれであることを忘れさせた。



「君達が理解できようと出来なかろうと、そんなの関係ないね。このワシがルールじゃ!」



もう誰も暴君ヤソキチと化した目の前の老いぼれを、家族でさえも止めることなどできないままに従うしかない空気が漂っていた。




~ To Be Continued ! ~




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