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第10章

レイワマンションの新規ご契約ありがとうございます?~第10章




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Scene. 32  レミママと海


かつてのコンシェルジュ☆ヤソキチが今や暴君ヤソキチに豹変したことに一同は言葉を失う。そして夜も更ける頃、今夜は解散の運びとなった。



~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~



明くる朝、ヤソキチの奥さん、ウメ子の呼びかけで遅めの朝食に案内されるサトルとエミ。

ダイニングには既に朝食が並べられ湯気が漂う。


席にはまだ他の人影は無い。

やはり訳のわからぬ旅路のつかれと夜分遅くまでの問答によって皆疲れ果てていたのだから無理も無い。


ウメ子奥さんは熱めのキリマンジャロを二人の前に置いた。


「夕べは主人があんな調子で済みませんでした。あの人、このごろ時々我を忘れたようにあんなふうに怒り出してしまうので困っているのですよ、これも年のせいかしらね。」


温和な奥さんの人柄に幾らか癒された気がする二人。

支度を終えるとウメ子も席に着く。


「さあ、召し上がって。お熱いうちに。」


まだ眠気が覚めやらぬままのエミがウメ子に質問する。


「ところで、夕べのお話でレミママとヤソキチさん、そして奥さんは同級生だったと言ってましたが、ある意味、恋敵のようですね。初恋とはいえ内心複雑なのでは?」


唐突でどぎつい質問をするエミをサトルが遮る。


「おいエミ、朝っぱらからそんなこと聴くなよ!」


「ええ、いいのよ。気になさらないで。そんなこと遠い昔の話しですよ、ホホホ。もっとも、結婚するまでは、内心複雑でしたが・・・でもそのうちにレミさんが歌手としてスカウトされて、そっちのほうが忙しくなったし、そのうち彼氏も出来たとウワサに聞いていたから安心していました。まあやだ、朝からこんなこと話すなんて・・・」


すかさずまたもや失礼にもエミが切り出す。


「それにしても「レイワマンション」にかつての初恋の人を住まわせて、しかもスナックまで作って、レミさんって変わってるわね。ヤソキチさんにしてもデリカシーすら無いわよね。だってレミさんのスナックに入り浸ってたんだもの。しかも彼氏が居る事を知っていながら・・・ある意味不倫よね。そして原田女史だって娘として知らない訳もなかった筈よ。私だったら耐えられないわ、そんなオヤジ!」


これにはサトルも同情の表情を浮かべている。


「エミさん、まだお若いのね。夫婦てのはそんなに軽い間柄じゃないのよ。そうね、もしかしたら子供が出来たことによってそんな心配が無くなったのかもしれない・・・子供が強い見方になってくれるから、ダンナが何をしようとも心配すらなくなるものよ。それよりも子育ては大変だし、夫婦の夢は全て子に託されるものだからね。多少のことは大目に見れるような懐がすわちゃうんだから、不思議ね。」


「ですが、娘さんのことを思ったら気の毒で・・・」


「ああ、うちの子は無頓着なのよ、そういうの。そのせいかダンナまで主人が面倒見たくらいだし、もっともヤソキチは原田に絶対的な信頼を持っていたから、ある意味ヤソキチに押し切られた形ね。」


そこへのそのそと起きてきたレミママに3人はたじろぐ。

何ともウワサの張本人のご登場だから・・・


「あら、オハヨウございます。今日はいい日和ね。そういえばこの島の海の眺めは最高よ!」


「海」の言葉にエミは先ほどまでのウワサのことさえも忘れたかのように食いつく。


「え、海ですか?私、昔から海が大好きでして・・・連れて行ってもらえませんか?」


「ええ、いいわよ。私、朝はいつもコーヒーだけだから、朝食抜きで。コーヒー飲み終わったら早速出かけましょう!」


サトルとウメ子はどぎまぎしながら二人の会話に釘付けになる。

エミって一体?


朝食を取り終わると3人はそそくさと支度を始める。

レミママはウメ子も誘ったが、他の人の食事の支度があるからと丁重に断った。


3人は原田女史の大きな屋敷を出ると海へと続く畦道歩き始める。

天気は快晴。散歩には少し熱いくらいの日差しが3人を照らす。


丘の上の屋敷の裏手から15分くらい畦道を下ると、草原からいよいよ待ってましたと言わんばかりの海原がポッカリと顔を出す。

風に乗って潮の香りが包み込んでゆく。


海。


そう、エミにとって海無し県で育った憧れも手伝って、思い入れが大きい。

サトルは海の近くで育ったので慣れっこでは有るが、やはり好き。

やがて真っ白な砂浜に辿りつく3人。

はしゃぐエミはさざなみの中へと駆け出してゆく。



海~☆~☆~☆~☆~



遠巻きに水遊びを始めるエミを他所にサトルは傍らのレミママに尋ねる。


「あのう、実際昨日の話の続きにもなるのですが、何故あなたは「レイワマンション」から忽然と姿を消してしまったのですか?」


唐突なサトルの質問に少し戸惑ったようなレミママは、しかし遠い眼で海原を楽しそうに見つめている~☆~☆~☆~


「あのね、人って、一筋縄じゃないのよね。ある意味気まぐれだったのかもしれないし、深い理由があるような気さえする。しかしね、最終的に決めるのは自分なんだし・・・」


どうも意味不明な言葉を並べるレミママにサトルは困惑する。

レミママは続ける。


「私が始めてヤソキチさんに此処へ案内されたとき、それこそ感動したものよ。というのもヤソキチさんの言う「国家プロジェクト」だったかもしれないこの姫百合島の美しい景色に一目ぼれしてしまったの。


私がいた芸能界なんて、それこそ窮屈な世界だった・・・海にも自由にいけないし、スケジュールもビッシリ。何十年かぶりに海に来たけれど、何か忘れ物をやっと見つけたような気がしたの。


昨日はあなた方を此処へ呼び込むためと言いましたが、この景色を享受できることがどれほど幸せかって知ってほしかったのも事実よ。私ももうお年寄りになってしまって、何のために生きているのか、それは人よりやりたいことが叶ったかもしれない人生だったけど、生きがいをあまり感じていなかったのかもしれない。


今だから判るの、人は生きるためにはどんな形であれ、生きがいが重要だってことを。誰に指図されるわけでもなく、それは自分で見つけるものかもしれないわね。


サトルさん、どう?ここで皆で仲良く暮らすってのは。ヤソキチさんからの指令もあるかもしれないけれど、この島、悪くないと思うんだなぁ・・・ほら、エミちゃんだって、あんなふうにはしゃいでいるし・・・」



サトルはレミママの言葉を一生懸命に噛み砕いて理解しようとしていた。

果たしてオレの望みに叶う人生って、生きがいって、一体なんだろう・・・

確かに一筋縄では行かないかも。

しかし最終的にシンプルに自分が判断するのみ。

そうかも知れないね・・・




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Scene. 33  姫百合島へのあこがれ


豊島は考えても見なかった。

こんなふうにこれまでの人生が操られてしまうことになろうとは・・・


仕事に忙殺されていたのも確かにいけなかったのかもしれない。

しかし、何も同意も得ずにヤソキチの一存でこの地に連れ込まれて、ましてや隔離までされることには納得などできない。

これではまるで小屋の中のブロイラーのように管理されてしまうようなものではないか?


豊島が朝食を食べ終わる頃、夏子が現れる。


「豊島さん、どう思う?夕べのヤソキチさんの話。勝手に連れ込まれてしまったようなものね!」


「ええ、私も同感です。しかし私達はまだ明確な回答を得られないままでいるのも事実。そしてヤソキチさんの言う「国家プロジェクト」の本来の意味すら曖昧なままで。」


「そうよね、そもそも「レミママ探し」が本題だったし、私達の目的は達成したのだから。でもある意味ヤソキチさんに騙されたってことになりはしないかしら?」


「確かに。アイツは詐欺師なのかもしれない。火星探索のための技術開発が国家プロジェクトの一部であることは疑いようは無いが、「レイワマンション」の住民が利用されて、既に僕らの生活はヤソキチの監視下に置かれていたようではあるが、これはある意味誘拐でもあるのではないでしょうか?」


「もっとも悪意のある誘拐とはちょっと違うと思うのですが・・・」


「これは・・・つい失言だったかもしれませんね。しかしこの隔離社会をヤソキチさんが牛耳ろう者ならば、それこそヤソキチはこの地の「独裁者」にも成りかねませんがね。」



そこへ原田女史が合流する。

豊島が女史に詰め寄る。


「原田さん、お父さんって一体何を考えられているので?」


「父の最近の言い回しは、何かしら誤解を招かないとも言い切れませんよね。


ですが、私の知っている限りでは、父は国家プロジェクトとリンクした技術開発をこの島で繰り広げており、今や完成の域に至ったのかもしれません。


娘だから言うわけじゃないですが父は生きがいを持って望んでいるのは確かなのです。私からも是非そこのところをご理解いただき協力いただきたいのですが。」



そこへ、まるで聞きつけたかのようなタイミングでコンシェルジュ☆ヤソキチが現れる。



「嗚呼これはこれは!夕べはだいぶ白熱していまい、誠に申し訳なく感じています。悪しからず・・・」


面目なさそうな、昨日とは打って変わって異なるその横顔。

豊島は思わず信じないわけには行かなかった・・・









~ To Be Continued ! ~




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