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第七章

レイワマンションの新規ご契約ありがとうございます?~第七章

作: 大丈生夫 (ダイジョウイクオ)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Scene. 27  ナッチャン



レミママの失踪のことが気に掛かる二人。

それにしてもコンシェルジュ☆ヤソキチのやつ、こんな大事なこと俺達に黙っていたなんて!


サトルは怒りに燃える。

と、エミが何かひらめいたように


「そうだ、困ったときのナッチャンよ!」


そういうやそそくさと電話をするエミ。



「あ~ら、おはようゴザイザマスゥ~!」



異様な夏子の声に思わずエミはスマホを落としそうになる。

まだ夕べのお酒が残っている様子。

それにしても変ね、ヤソキチの話と違う様子・・・とりあえず聞いてみる。


「あのう~着かぬことお聞きしますが・・・」


「何よ、エミちゃん。夕べとテンション違うのね。」


「で、ですよね。夕べ確かにレミママの・・・」


「うん、楽しかったわね。久々に舞い上がっちゃって、私ったら(笑)」


サトルもエミの様子を隣で見守る。


「そ、そうですよね。確かに一緒に盛り上がりましたよね。」


「ええ・・・それがどうしたの?」


「今朝、ちょっと用事があってB9Fに行って来たのですが、無いんです。」


「は、何が?」


「ですから、スナック☆南国が・・・」


「え、ウッソゥ!やだわ、エミちゃん朝からそんな・・・」


「いいえ、確かに。」


「何言ってるのよ、大丈夫?あなたパカ?」


「パカって・・・そうじゃなくて。」


「じゃなんでそんなこと言うのよ。」


「あのう~今からそっち行ってもいいですか?」


「いいわよ、いらっしゃいよ。」



電話は不機嫌そうに変わった夏子の方から切れた。

エミがサトルにナッチャンの様子を話す。



「やはり、またしてもヤソキチの奴。騙したな!」


「ま、いいわ。行きましょう!」


エミに促されてB12Fのナッチャンの部屋へ向かう。


到着するとナッチャンが出迎える。


「それで、どうしたのよ。」


「ええ、ですから夕べのお店無いんですよ。」


「そんな筈ないわよ。だって私カラオケ歌ったし、皆で盛り上がったじゃない。」


「そうですよね、ですが無いんです。」


「エミちゃん、あなた二日酔いでエレベーター押し間違えたんじゃない?」


「いいえ、サトルと一緒に確認しました。そして・・・」



エミは先ほどのヤソキチからのレミママが亡くなった話を始める。

聞き終えるとナッチャンはプリプリとしながら部屋を出る。

暫くして戻ってくるやいきなり、


「さ、行きましょう!」


やはり起こっている様子の夏子に言われるがままに部屋を出る。

そしてエレベーターの「2F」を押す。

これって・・・サトルとエミは顔を見合す。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


やがてエレベーターが到着する。

そう、そこはヤソキチ夫婦の部屋のある場所。

サトルとエミたちは初めて訪ねる。


それにしてもこの階はエミたちのフロアと違って古いアパート然としている。



「ゴメン下さいっ!」


昨日のカラオケのように大きな声で夏子が叫ぶ。

まるで外まで聞こえそうな迫力。



すると中からヤソキチが出てきた。

なにやら申し訳なさそうな顔つき。



「あのう、夕べのこと覚えています?」


「はて、何のことやら・・・」


ナッチャンはヤソキチをキッとにらむ。


「あら、やぁねヤソキチさん、とぼけちゃって。」



ヤソキチの背後からその様子を聞きつけた奥さんが現れる。


「ちょ、ちょっとお入り下さい・・・」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


一同は居間の円卓に腰を下ろすと奥さんがお茶を沸かす。

間の前のヤソキチは中を見つめている。

何かおかしい・・・これって一体?


そして奥さんが円卓に着く。


「夕べこの人すごく酔っ払って帰ってきてね、それからおかしいの。」


「え、おかしいって?」


「前から薄々症状が出ていたんだけど・・・」


サトルは何かピンと来た様子で身を乗り出す。


「ええ。かわいそうなのよ、この人。病院でも言われていたのだけど、とうとう来ちゃったの。」


「はあ。来ちゃったと申しますと?」


たまらず夏子が問いかける。


「に、認知症。」



な、なんということだヤソキチ。

一体どうしたというのだ、夕べはあんなに・・・


「時々変なことを言うんだけど、特にお酒飲んだ次の日は酷くて。」


3人は少しの間黙り込む。

サトルは今朝のヤソキチからの話を奥さんに伝える。

そしてB9Fのスナックが忽然と消えたことも。



「そうなんですか。私もそんな気がして・・・」


「と申しますと?」


「レミさん、ここの所家賃を滞納していて。大変だったのね。」


「も、もしかしてそれって夜逃げ?」


「多分ね。それで動揺した主人が変なこと言い出したんじゃなかったのかしら。」



一同が神妙に奥さんの話に聞き入る。

そうだったのか、あの店も大変だったんだ。


「でね、これがポストに入っていたの。」


奥さんは後ろの引き出しから一枚の便箋を取り出す。

そして読み始める。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ヤソキチさん


夕べはアリガトウ。本当に楽しかった。

でもね、私ってもうダメなの。

ソロソロ潮時ね。


お店頑張ってやって来たけど、もう時代遅れみたい。

だれも私のことなんて忘れてしまったのね。

でもね、夕べは楽しかった。久しぶりに。

ナッチャンも元気だったし。


ゴメンなさい、私旅に出るわ。

実はね、私の彼が呼んでくれているのよ。

それでね、彼の元に行こうと思って。

行き先は言えないわ。

私を探さないでください。

勝手を言ってごめんなさい。

もうしません、だからお願い。

もうコレッキリね。

じゃ、皆さんグッバイ!


by. レミママ



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



最後のふざけた調子にぽかんとする一同。

またもよだれが垂れそうになるのを必死で抑えるエミ。

ヤソキチはただ呆然としている。

そうか・・・やはり夜逃げだったのか!レミママ・・・

夏子は遠い目になる。

そう、親友として長年ともに歳を重ねてきたのだから無理も無い。


と、なんということだろう・・・

急にヤソキチは立ち上がるや、円卓を引っくり返す。

それから、いきなり泣き出す。

そして大きな口を開けると天井を見つめて言い放った。



「レ、レ、レ、レミちゅわん~むぅ・・・」



その大声でエミもあごが外れんばかりの大きな口を開く。

夏子も同様に大きな口をポッカリと開ける。

サトルは・・・口からヨダレを垂らす。何ともお粗末。

奥さんだけがクスクスと笑っている。



「ね、困った人でしょう、この人。そうなの、この人毎晩のようにレミママのところ通い詰めていたのよ。バカよね。」


一同は呆れた表情でヤソキチを見つめる。

ヤソキチは鼻汁を垂らしながら泣き続けている。

なんともお粗末・・・


「そうなの。それ本当?」


ナッチャンはそういうとちょっと微笑む。


「私も薄々感じて居たんだ、ヤソキチさんレミママにお熱だって事!そして多分ね、レミママの彼氏のことを嫉妬してあんなことサトルさんに言ったのね。きっとジェラシーよ!」






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Scene. 28  勇敢な冒険者たち



一同はヤソキチノ部屋を後にする。

そして再び夏子の部屋に集まる。

夏子はアールグレイを二人に注ぐ。

サトルが切り出す。



「それにしても腑に落ちないんだ・・・夕べのこと。」


「え、どうしたの?」

夏子が聞き入る。


「でも確かに聞いたんだよ、声を・・・」

そしてサトルは夏子に夕べ聞いた男の声のことを話す。


「あらやだ、それって幽霊ね。」

そういうとクスクス笑い出すナッチャン。

呆気にとられるサトルとエミ。


お茶を一口すすると落ち着きをとり戻す夏子。


「それって・・・私も経験あるの。」


「え、で、どうなさったの?」


「そしてね、色々と調べてあることに気がついたのよ!」


そう言うやサトルのスマホを見つめる夏子。



「ちょっといい?」


そういうとスマホを取り上げる。

そして何やらスクロールし始める。


「ええと、あ、ヤッパリ。」

夏子は何か見つけた様子。


「これよ、これっ!」

そう告げるや画面をサトルの目の前に突き出す。

画面は「レイワ信託銀行」のホームページの設定画面になっていた。


「これ、銀行のサイトが犯人よ。私もやられたの。」


「ど、どういうことなんですか?」

エミが夏子に迫る。


「うん、。ちょうど私の仕事が下火になった頃、口座への入金が滞ってしまってね。それで何やら取り立て機関に自動でアクセスしたらしく、その嫌がらせが「幽霊の声」なのよ!もしかして入金とか大丈夫?」


そういうと、夏子は口座を確認するように促す。

すると・・・残高を見たサトルが凍りつく。


「これって・・・」

そしてエミがサトルからスマホをむしりとる。

二人は眼を丸くする。

続けてエミが読み上げる。


「姫百合島ツアー代金、500万円。スナック☆南国お食事代、300万円?」

引き落としの督促が警告されている。

大きな金額の引き落としにはこのようなアラートが掛かることは知っていたが、これはいったい・・・


それを聞いたナッチャンも青ざめ、慌てて自分の口座を確認する。

するとレミママから同様の請求金額が入っていた。


と、突然エミのスマホが鳴り出す。

事もあろうにボケたヤソキチからだった。


「あのう、にゅうきんまだですか?」

ヤソキチの間の抜けた声。

どうやら完全に呆けている様子。


サトルが溜まらず電話に出る。

「ヤソキチさん、あなた一体どういうことですか?」


「え、だから旅行代と飲み代の請求じゃよ。」


「それにしても金額が変ですよ。」


「ワシャ知らん・・・豊島君の会社経由だから。」


どうやらヤソキチのハナシでは、一緒にリニアに乗って旅した豊島がこのようなツアーという形で今回の旅を企画したのだった。


「でもヤソキチさんそのこと一言も言ってませんでしたよね?」


「そうかもしれないね。」


「というと?」

「ワシャ知らん。」

「何を?」

「旅行代と飲み代。」

「いつから?」

「前から。」

「いつまで?」

「さっきまで。」

「その心は?」

「神さんに聞いとくれ。」

「何故に?」

「ボケたから。」

「アナタ、ウソツキアルカ?」

「そうかもね。」

「どうして?」

「こうして。」

「どうもこうも?」

「いやはや、何とも。」

「そしてどうなの?」

「わしゃしらん。」

「レミママは愛人?」

「わしゃしらん。」

「アナタウソツキアルカ?」

「わしゃしらん。」

「もしかしてとぼけてる?」

「わしゃしらん。」

「あなたパカあるか?」

「わしゃしらん。」

「それって、ボケた振り?」

「アルパカかもね。」

「ほぅら、うそつきヤソキチ!」

「神さんに聞いとくれ」

「ウッソウゥ!」

「UFO!・・・あ、ばれたかアルパカ・・・」


電話はヤソキチから切れた。

あのジジイ、ボッタクリめ。

ボケた振りして、さては神さんもグルか?


二人は顔を見合わせる。


夏子は事情を知ると、一瞬胸を撫で下ろす。

しかし、3人は苛立ち始める。

そして、再びヤソキチの部屋へ向かう。


「もしもし、開けなさい!」

ナッチャンはいきり立って叫ぶ。


サトルも鉄扉をドンドンとノックする。

エミは二人の形相にあっけに取られ、よだれが垂れる。

しかし、いつまでたっても応答が無い。

次にエミは再びヤソキチに電話するも着信拒否。

家電も留守電。さては・・・


「ア・イ・ツ・ラ~トンズラか?」

サトルがヤカンのように沸騰する。


「さ、行きましょう!」

そういうやナッチャンはエレベーターへと向かう。

そして「B20F」を押す。


「それって・・・ナッチャン?」


「は、決まってるじゃない、豊島よ。あいつもグルよ!」


そう言い放つとナッチャンは悔しそうな顔をしている。

そしてエレベーターハ静かに「B20F」へと降りて行く。

そこにはこの間サトルとエミが旅して依頼のリニアの駅が、あの時のままに広がっているのであった。

再び不思議な冒険が始まろうとしているのを3人は気付かないままに・・・




~ To Be Continued ! ~









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