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長い夜だった、以下略




次の日、サラを呼んでパーティの取り決めを行う


基本的にマリアは留守番で、工房と孤児院の防衛を担当


戦闘能力の低いマリアでも、巨大ゴーレムを使えばそうそう負ける事は無いだろう


ポーションの販売も手伝ってくれるのが特に助かる


時間帯の関係で客のほとんどはマリアが対応しているため、実質看板娘のようなものだった


これは本人の意向でもある


「この体は戦闘には耐えられませんから、しばらくはおとなしくしています。楽しみは後にとっておくことにしますので」


との事だ




サラはメティスの街での諸々を請け負う係だ


ギルドの依頼に関しては独断で決めてよいが、危険性の高いものは応相談


報酬は全てサラのもの、ただしモンスターの素材はタツキやシンシアの物となる


そして報酬総取りの代わりにタツキ達の素材採取は無償で手伝って貰う


錬金術やゴーレムに使わない素材の売却や街にでの買い出しや、モンスターの情報を集める役目も担っている


当面は俺と2人で組んで依頼や素材採取をこなす




シンシアはしばらく留守番になる


しばらくと言うのは、少ない魔力でゴーレムを運用する方法を模索する時間が必要だからだ


「お主の優しさに甘えてばかりは居られぬ。伴侶として相応しい実力をつけるのじゃ」


と意気込んでいた


伴侶と聞いた時のサラの顔は、なんというか喜色満面といった感じだ


小声でマリアに話しかけ、それに気づいて慌てたシンシアに部屋へ引っ張られていった




話し合いの後、俺は自室のベッドサイドに腰かけていた


昨夜、マリアの策によりすっかり外堀が埋まってしまった


あの場でマリアがサラを擁護すれば、シンシアは落ち込み、必然的に俺が慰めることになる


「はぁ、完全にやられた。マリアがシンシアを悲しませる様なやり方をする訳がないのにな…」


それに途中からは俺も雰囲気に流されて、今思えばかなり恥ずかしい事を口走った気がする


それに内堀まで自分で埋めてしまったから、もうどうしようもない


「うう、己の青さが憎らしい」


つい独り言を呟いてしまう


「この世界に来た時に、できれば恋愛もしたいなぁと漠然と思っていたけどさ。いや不満は無いんだけど」


ここに俺の自由意志があるのかと思うと微妙なところではある


しかしまだ短い間ではあるが、シンシアとは家族同然な付き合いをしていた


考えてみると、これからもずっと一緒にいると当たり前のように思っていた


早かれ遅かれこの結末にたどり着いた、そんな気はする


シンシアの性格は俺と相性が良かったし、根っこにある不遇への反骨心は共感すら覚える


それに本来の姿に戻ると凄い美人なのだ


「あれは反則だよな…」


シンシアは普段から美少女ではあるが、その残念な性格と年寄りくさい話し方から、色気を感じる事は皆無である


だが本来の姿は大人の魅力で溢れており、女性経験の皆無な俺に抗う術はなかった


正直、魅了の魔法を疑うレベルだったが、俺に状態異常は効かない


その事はただ単にシンシアの魅力に負けてしまった事実を俺に突きつけてくる


「ぐうぅ、シンシアに手玉に取られる日がくるとは…」


「メロメロでしたからね」


「メロメロじゃない、はずだ……いつからそこに?」


「『己の青さが』…からです」


「ほとんど最初からじゃねぇか」


マリアが扉を少し開けて覗いている


「フィー、マリアが近づいたら教えてくれって言ったろう」


あたりを見回すとフィーがいない


何故かマリアの頭の上に乗り、一緒にこちらを覗いていた


「…なんでフィーがそこにいる」


「主の幸せを願う者同士ですので。私達は紳士協定で結ばれております」


「…マジかよ」


マリアとフィーが組んだ以上、こちらに勝ち目は無い


「諦めてマスターと幸せになるのですね。ああ見えて意外と尽くすタイプですよ?今なら私とフィーもついてきますし」 


「…なんでフィーがそっち側なんだよ。俺の使い魔だろ」


半目でマリアを見ると、フィーと何やら遣り取りしている


「主様、年貢の納め時ですよ、ケケケ。と申しております」


「そこまで正確に分かるのかよ…しかもケケケって。別に女性絡みで悪い事した訳でもないのに、年貢の納め時なんて…」


あの反応を見る限り、おそらくその通りの事を言っているだろう


実のところ、フィーは結構調子の良い奴だ


初めの頃は大人しくしていたが、あれは猫を被っていたようだ


もし発声器官があったり念話が使えたら、さぞかし賑やかだったろう


この家にいる時は全員に見えていて、感情豊かに飛び回っているのだ


(シンシアだけで無くマリアとも良く一緒にいるようだったが、まさかここまで仲良くなっているとはな…)


シンシアはマリアによく造反されていたが、フィーが俺に反旗を翻すとは思ってもいなかった


明日は我が身とは良く言ったものだ


「…お前まさか昨日の、覗いてないよな?」


「もちろんです。覗きなど浅ましいですよ」


「この状況でよく言い切ったよ、全く。…なら聞いていたな?」


「……眠れる獅子とは良く言ったものです」


「勘弁してくれよ……」


俺は頭を抱えるしかなかった


この2人が組んだ以上、俺にプライバシーは無いも同然である




シンシアの部屋


2人はベッドサイドへ並んで腰掛けていた


「シンシア様、伴侶なのですね?パートナーではなく、伴侶なのですね?」


「そう何度も言うでない、恥ずかしいではないか」


興奮気味のサラは、嬉し恥ずかしなシンシアを質問攻めにしていた


「昨夜あの後なのですね?」


「う、うむ」


「どういった流れでそのような?」


「その…な…」




シンシアは生い立ちやサラへの羨望を包み隠さず話した


「シンシア様に、そのような過去が…それに私のせいで辛い思いをさせて…すみません」


「良い。お主に非が無いのはわかっておる。儂が憎いのは無力な自分自身じゃ。それでもな…」


シンシアは潤んだ目で続ける


「タツキは儂が隣にいると嬉しいと…ずっと一緒だと言うてくれた」


「まあまあ!タツキさんたら!」


サラの興奮はいきなり最高潮だ


「それで、シンシア様は?」


「こんな嬉しい事は生まれて初めてじゃった。儂もその気持ちに応えてやりたくてな」


「やりたくて?」


「儂は普段このペンダントに魔力を溜めておる。その副作用でこの様な幼い姿なのじゃ」


「ふむふむ」


「それを解除して本来の姿でな…その…」


「その?」


「ち、契りを…」


「きゃーーーー!シンシア様ったら!それでそれで?」


「その…だ、駄目じゃ…これ以上は無理じゃ!」


「あーーー!シンシア様が可愛すぎてもーーー!」


サラは興奮さめやらぬままに、シンシアに抱きつく


「じゃあじゃあ、せめてシンシア様の感想だけでも!」


「か、感想…それもかなり恥ずかしいのじゃが…」


「お願いします!一言だけでいいので!」


「そうじゃなぁ…ケダモノ?」


「きゃーーーー!タツキさんあんな朴念仁みたいな感じなのに!」


「そうなんじゃ、あやつ急にがっついてな…」


「ヤダもーーーー!それでそれで?」


ガールズトークはまだまだ続いていく

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