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サラのパーティ加入による細々とした取り決めは明日にして、一旦解散した
シンシアが少し落ち込んでるので、そのフォローを優先したかったからだ
サラは孤児院に戻り、マリアは台所で片付けものをしている
「そう落ち込むなよ。マリアはシンシアのためにサラを加入させたかったんだから」
リビングの長椅子にシンシアと並んで座る
俺はこれからも薬の材料を求めて危険なモンスターと戦う
そしてシンシアは付いてこようとするだろう
防衛用としているあの巨大ゴーレムを操ればシンシアは敵無しだが、あんなデカブツは連れて歩けない
自我の無いゴーレムはインベントリに入れての持ち運びが可能だが、それでもやはり大き過ぎて目立つので、目当てのモンスターに逃げられる可能性が高いのだ
だがシンシアの戦闘能力はゴーレムがいないと並以下なのは事実でもある
サラの加入により、シンシアの安全性が高まるのは間違い無い
「……マリアの考えくらいわかっておる」
「なら…」
「わかっておるが、悔しくての」
「何が悔しいんだ?」
「お主の隣に居るのは儂でありたかった。しかし儂はゴーレム無しでは弱い。それが悔しくてのう」
気がつくとシンシアは目に涙を浮かべている
「昔からそうじゃった。儂は魔族の中ではかなり弱い。魔法は不得手でも屈強な肉体を持つ者、その逆に並の体じゃが強い魔力を持つ者。魔族の特性はどちらかになる事が多いが、儂はそのどちらでも無い」
俺は黙って耳を傾ける
「広範囲にわたる繊細な魔力操作。それが儂の魔力特性じゃ。ゴーレムマスターには最適じゃが、儂には致命的な欠陥がある。総魔力量が圧倒的に少ないのじゃ。その辺の人間と変わらぬ程しかない。おそらくお主より少ない。これでは能力の低い小さなゴーレムしか作れん」
そう言うと胸元からペンダントを取り出した
「儂の魔力の少なさを不憫に思ってな、父様と母様が大変な苦労をしてこれを用意してくれた。儂の魔力を毎日少しずつ蓄えてくれるのじゃ。副作用で幼い外見になってしまうがの」
「じゃあ、シンシアは本来もっと大きいのか?」
「……前にもそう言ったはずじゃが、さてはお主覚えておらぬな?」
「……ああ、うん、言ったね、うん」
「……まあ良い。それで儂の場合はペンダントの魔力が最大になるまで大体1年かかる。その蓄えた魔力を使って作るゴーレムはどんな魔族も認める程の出来映えじゃった」
「やはりマリアやカルポは魔族から見ても高性能なんだな」
「そうじゃ。しかし1年に1体しか作れないと聞くと皆笑うのじゃ。『やはり半人前の魔族だ』と。これでは父様と母様の苦労も報われぬ。儂は独り立ちできる歳になってすぐに家を出た。そして魔族のいない土地を求めてここへたどり着いたのじゃ」
「…両親はなんて言ってるんだ?」
「儂を誇らしいと言ってくれた、素晴らしいゴーレムマスターじゃと。しかし儂には我慢ならんのじゃ。儂のせいで父様と母様が笑われてしまう事に耐えられぬ」
シンシアの目からはとめどなく涙が流れている
「父様と母様は儂の魔力が少ないせいで笑われてしまう。儂のゴーレム達は儂が愚かな為にほとんど壊れてしまった。そして今、儂が弱いからお主と共に戦えぬ。どれも儂が至らぬからじゃ。それが悔しくて悔しくて仕方ないのじゃ」
そう言って涙を拭うが、涙は次から次へと溢れてくる
「そうか、それは悔しいな」
ベストを尽くしても結果の出ない事など珍しくもない
理不尽に嘆いても仕方ないと頑張っても、どうにもならない事ばかりだ
俺は諦めずに全力で生きても、結局ベッドから起き上がる事すらできなかった
「でも今の話を聞いて、俺は思うんだ」
「……?」
「やっぱり俺のパートナーはシンシアだなって」
「ほ、本当か?」
「シンシアは不自由を知っている。だからいろいろと工夫するだろ。その考え方は俺と同じだ」
「同じ?」
「普通によく知られたやり方では、人並みにすらなれない。だから工夫したり考え抜く。俺達は一緒じゃないか」
「そうか、儂らは一緒か?」
「ゴーレムと錬金術は同系統にされる事のある分野だし、共通点もある。相性もいいだろ」
「そうじゃな!」
「この先もずっと一緒なんだから、その内に戦闘についてこれるゴーレムを作っていけばいいだけの話だ」
「…ずっと…一緒…」
「それにゴーレムは状態異常が効かないから、俺と組むのにかなり都合がいい。接近戦だと俺は毒を振り撒いたりするからな、サラだと巻き添えを喰らいかねない」
「そ、そうじゃな」
「な、俺のパートナーはシンシアがぴったりだろ?」
「わ、儂がぴったり…」
「サラは大事なメンバーだが、シンシアはパートナーだ。俺の隣にお前がいてくれると嬉しい」
「……タツキ」
「そのくらいにしてくださいね、マスターが沸騰しちゃいそうです」
「ひゃぁぁ!」
いつの間にか側に控えていたマリアが割って入る
シンシアは慌てて飛び跳ね、少し離れて座っていた
「………いつから?」
「『何が悔しいんだ?』のあたりです」
「ほとんど最初からじゃねぇかよ…」
「さすがはタツキ様です、マスターは完全に落ちましたよ」
「何だよそれ」
「忌まわしき過去を打ち明け、全てをさらけ出したマスターを受け入れる。その流れに乗ってプロポーズとは見事としか言いようがありません」
「え?」
シンシアに視線を向けると見た事の無いほど赤くなっている
「マリア?」
シンシアには聞こえ無い様に小声で話す
「『ずっと一緒』がそれに該当しますね。『俺の隣に』のくだりでトドメです」
「……あ〜」
あの意味を今ここで正す事は、シンシアのこの状態を見る限りできそうにない
俺もシンシアは一緒にいて心地良いから、そういう関係もやぶさかではないのだが…
シンシアは成長すれば美人なのは間違いないだろう
(しかし年齢差が100歳以上あるし、見た目だけは10歳だし、なんと言うか問題が多いな…)
俺が少し考えていると、マリアがシンシアへ耳打ちする
「マスター、タツキ様はやはり幼い見た目が気になる様です。今日くらいは良いのでは?」
「う、うむ。しかしそれではマリアの体を作るのが遅れてしまうのじゃ…」
「マスターが行き遅れる方が問題です。タツキ様を逃したら次はありませんよ?」
「わ、わかっておる…」
そう言うとシンシアはペンダントを外してマリアに渡す
一瞬眩しく光り、その後に現れたのは20代半ばほどの美女だった
「ふう、この体は久しいのう」
まさしく妖艶と言った感じの女性は驚く俺をみて嬉しそうに微笑む
「どうじゃ?本来の儂の姿も悪くないじゃろう?」




