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「これは53番のじゃな」
解体に使った斧を見たシンシアが持ち主を教えてくれた
「どんな奴だったんだ?」
「儂のゴーレムの中でも指折りの力自慢じゃ。ただ加減が下手でな、戦った後は壁も床もめちゃくちゃになってしまうのが欠点じゃった。その惨状にマリアがよく頭を抱えておったな」
「パワータイプなら器用さが足りなくても仕方ないか。この斧はかなり重いし」
俺はシンシアが隠れてしまう程に大きな斧を見る
「そのためにいつもは人形館の奥に配置してあるんじゃが、時折マリアの目を盗んでは玄関ロビーで仁王立ちしてる事があってな。そんな時にやってきた冒険者は、53番を見ただけで恐怖に震えておったそうな。儂のゴーレムの中では大きな方で、かなり迫力があるからの。ほとんどの奴がロクに戦わずに逃げていくと言っておった」
「そりゃあな。こんな斧を構えているデカいゴーレムとか、出会い頭に会ったら戦意も吹き飛ぶだろうよ。ランク査定に来て53番と鉢合わせた奴らは気の毒だったろうな」
「ふん、勝手に人の家を査定の場にする方が悪いのじゃ。53番としては、いつぞやのゴールド級パーティと再戦したかったらしくてな、それで玄関にいたらしい。あやつらに負けるまでは無敗を誇っておったから、相当に悔しかったようじゃ。ついぞその想いは果たせなかったがの…」
そう言ってシンシアは寂しげに斧を触った
その仕草からもゴーレム達へたくさんの愛情を注いでいた事がよく分かる
俺はこう言う話をシンシアから聞くのが何故か好きだった
「折り入って相談したい事があります」
いつもの夕食後、サラが真剣な表情でやってきた
何事かと話を聞くとパーティについてだと言う
「前回、アンフィスバエナを討伐した事で私も思う事がありまして」
「ほう、申してみよ」
何故かシンシアが仕切るが、面倒なのでそのままにしておく
サラは滔々と語り始めた
派閥争いに敗れたサラは教会を離れ、獣人の孤児を集めて孤児院を開き、資金繰りの為に冒険者になる
修行代わりにとメティス周辺でモンスターを素手で倒していたサラは、冒険者の間では既に名が知られていたので問題なく登録できた
しばらくは他の冒険者ともうまくやっていたが、サラが教会に睨まれている事を知られてからは、パーティを組む冒険者はほとんどいなくなる
パーティに欠かせない回復役の僧侶はほとんどが教会関係者なので、その影響を恐れたのだろう
とは言え一人で攻撃も回復もこなせるサラはソロでもなんとかなるので、一抹の寂しさを感じながらも報酬が全て手に入ると前向きに思っていた
大抵のモンスターなら正面から捻じ伏せ、ダメージや毒を受けても回復魔法を頼りにゴリ押す
そう言うやり方だけでここ2年過ごしてきた
しかしレアモンスターなどの強敵相手には、魔力切れの為に撤退する事があると言う
そんな中で、先日のアンフィスバエナ戦は考えさせられたとの事だ
「タツキさんの敵に実力を出させない戦い方に感銘を受けました。情報の重要性は私も認識していましたが、このような使い方はしていませんでしたから」
「まあ、サラはゴリ押せる実力があるからな。俺はこういう戦い方でないと勝ち目が無いから苦肉の策なんだ。今回は俺の方ではほとんどダメージを与えていないし」
「いえ、あの攻撃をほぼ無力化できた事がすごいのです。本来のアンフィスバエナの攻撃は苛烈で、2つの頭の連続攻撃を回避するのは普段なら至難の業でした」
それを、とサラは続ける
「あの様に撹乱する事でこれ程までに一方的に倒せるなんて。考えれば考えるほどに自分の未熟さを思い知りました」
サラはそこまで話してから居住まいを正す
「もし宜しければ、私を正式にメンバーに加えて頂けませんか?。タツキさんの戦い方を学びたいのです」
話し終えたサラは頭を深々と下げる
「俺は戦力としてサラは申し分無いと思うが、シンシアはどう思う?」
「そうじゃな。儂のゴーレムには敵わぬが攻撃力は高いし、回復魔法もいざという時頼りになるしのう」
「お前あのゴーレムと比べるとか大人気無いな。あと前も言ったけどアレを連れて行く事なんてそうそう無いからな。デカすぎて」
「…純粋な戦闘力ならこの中で一番高いのですから、ケチをつける要素が見当たらないのですが?」
「むうぅ」
マリアにすら反論されシンシアは沈黙した
「と言う訳で、反対意見は無しって事でサラは正式にメンバーに決定。これからよろしくね」
「…え、あ、はい。よろしくお願いします?」
サラは狐につままれた様な顔をしている
「実はもう前に話し合っていてさ。俺はサラをパーティメンバーに誘おうと思っていたんだよ」
「…そうなんですか?」
「シンシアとマリアが条件として、サラから言い出したならOKって言うからさ」
「なんですぐにバラすのじゃ…」
シンシアが俺をジト目で睨んでくる
「どう見ても不自然な流れですから、種明かしした方が良いでしょう。ちなみに私は立場上マスターに従ってますが、個人的には賛成派でした」
「な、マリア!」
(おう、いきなりの裏切り…)
「私は様々な料理のレシピを覚えていますが、この辺りの牙猪か大角鹿を中心としたものしか作っていません。9割以上のレシピを未だに再現した事が無いのです。そんな中、先日はアンフィスバエナの肉を調理できて大変満足しました」
「ああ、すごい美味かったしな」
「はい、お裾分け頂いたものはどれも素晴らしい味でした。私達も料理しましたが、同じ食材とは思えないほどの差がありました」
「ありがとうございます。あの時、調理しながら思ったのです。サラさんがメンバーに入ればこれからもっと未知の食材に出会えるのではと…」
「なるほどな。確かに俺の素材集めは同じ物になりがちだが、サラの依頼は多種多様なモンスターの討伐がメインだからな」
「はい」
「マリア、それなら儂とタツキだけでもできるじゃろ」
「マスターとタツキ様は攻撃面に不安があります。大物相手では決め手に欠けるかと」
「だな、俺達は攻撃力に乏しい」
「ぐうぅ」
「それにギルドを利用できるのは、冒険者登録しているサラだけだ。ギルドの情報綱は個人のものと桁が違うだろうから、レアモンスターの情報なんかも集めやすい」
「お主も少しくらいなら教えてもらっておるじゃろう」
「あれは耐性薬のおかげ。副代表がギルドにも恩恵があると考えて特別に教えてくれているんだ。冒険者の飯の種を部外者に漏らすなんて本来は御法度だろう」
「ぬうぅ、仕方ない。認めるのじゃ」
あっさりとシンシアが引いたので、サラは正式にメンバーになったのだった




