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戦闘を始めてから十分後、サラの攻撃を受け続けたアンフィスバエナは遂に動かなくなる
あのゴーレムの体すら砕く一撃を延々とくらい続けるなんて、敵ながら恐るべき耐久力だ
「お疲れさん、手は大丈夫か?怪我は?」
念のため回復ポーションを取り出してサラに近づく
「はい大丈夫です、攻撃もほとんど避けたので怪我はありません。これのおかげで熱は防げたようです」
そう言いながら、サラの手に嵌めている厚手の革手袋を見せてくる
発熱剤をかけた部位に直接触れては火傷をしかねないので、耐熱性のある手袋をサラに貸していた
自分の実験用に用意していたのだが意外な所で役に立つ
「結局、麻痺毒を飛ばしてくる事はなかったな」
「近づけば毒液は飛ばしてこないので、いかに接近するかが最初の難関と言われてますね。後ろの頭を先に狙った時も飛ばしてきました。どちらにせよ私は自力で解毒するのであまり気にしませんが」
サラは攻撃力と回復魔法でゴリ押すのがセオリーのようだ
「発熱剤が直接かかったからか、しばらく目の方も眩ませたみたいだな。いつ回復されるかわからないから、そのまま目を狙って正解だったと思う」
「そうみたいですね、普段より簡単に攻撃や回避ができましたし。後ろの頭をタツキさんが狙ってくれたので、それも助かりました」
「それくらいはしないとね」
「しかし、こんな大きなサイズは初めて見ました。相当な耐久力でしたし、1人では勝てなかったでしょうね」
「弱点らしい弱点も特に無いようだしな」
「強いて言えば移動が速くないくらいでしょうか。別に遅い訳でもないですけど。冬場は動きが鈍いそうですが、地中に埋まって冬眠するそうなので見かけた事も無いですね」
冬眠するとは、やはり蛇としての特性は十分に持ち合わせているようだ
「弱点もなく高耐久の上に麻痺と即死毒もちなんて、恐ろしいヤツだよな。長丁場になるのに少しのミスで一巻の終わりなんだから」
「即死毒と言ってもすぐ解毒すればなんとかなるのですが、猶予は短いですね。以前毒を受けたときは即座に解毒したのですが衰弱が酷く、本当に死ぬかと思いました。あと数秒遅れていたらダメだったかもしれません」
サラはその時の事を思い出したようで少し青ざめた顔で話す
「よく生還できたな。そんな状態なら解毒に成功してもまともに動けないだろうし、俺なら多分一巻の終わりだろう」
「私は瀕死には慣れてますからね。修行の賜物です」
自分の場合はおそらくその修行で死んでしまうな、と思いながらアンフィスバエナに近づく
「さて、とりあえずこの大物を仕舞うか。フィー、頼む」
この大きさではその口には入らないはずだが、フィーは平然と頷いた
するとアンフィスバエナは光の塊となってフィーの口の中に吸い込まれていく
(突っ込んでも仕方ないが、どう言う仕組みなんだか…)
俺達はカルポでの移動中は合羽タイプの雨具を着ていたが、少し動きにくいので戦闘前に脱いでいた
特にサラは激しく立ち回っていたので、全身が雨と泥で酷い事になっている
今日は別段寒くはないが、雨も本降りになってきているし、このままカルポに乗って移動しては体を冷やしてしまうだろう
この辺りはアンフィスバエナの縄張りだったからか、近くにモンスターの反応はほとんど無いようだ
俺は組み立てた状態のテントをインベントリから出して設置する
「中で服を着替えてから帰ろう。…サラは着替えあるのか?」
「…いえ、持って来てません」
「俺のを貸しても良いが、サイズが…いやそれが以前に男物は嫌だよな」
「問題ありません、是非貸して欲しいです。濡れたままでは風邪をひきかねませんから」
「じゃあコレな。タオルも」
フィーに出して貰った服をサラに渡してから見張りに立つ
「お言葉に甘えて、先に着替えますね…覗いてはダメですよ?」
「覗きません」
「アハハ、冗談です。信用してますから」
そう言ってサラはテントに入っていく
(実はお茶目な人だよな…)
少ししてフィーからリンク要請がくる
(ん?なんだろ?)
リンクすると視界いっぱいに下着姿のサラが見えた
(ふおっ!)
慌ててリンクを切るとテントの隙間からフィーが出てきた
俺の周りを楽しそうに飛び回っている
(全く、怒ってもあまり通じないからな、困ったもんだ)
おそらく俺の感情もリンクしているので、本当に怒ってない事がバレているのだろう
(ラッキーに思っているとかも、バレてるんだよな…やれやれ)
その後に俺も着替えてから工房に帰る
案の定、シンシアが絡んできた
「何故サラがお主の服を着ておるのじゃ!」
「雨に濡れたし仕方ないだろ」
「ぬうぅ、こうなったら儂にもタツキの服をよこすのじゃ!」
「いや意味わかんねーよ」
「洗って返しますので、今日はこのまま借りて行きますね」
「そう?そのままでもいいのに」
「良くないわ!お、お主よ、サラの残り香を楽しむ気じゃな!」
「しないって、俺は変態か」
「え?普通、服の残り香は楽しむじゃろ?」
「何言ってんだお前?」
「?」
「?」
疑問符が飛び交う中、マリアは俺の服を着たサラにやたらと視線を注いでいた
「なるほど」とか「むしろこれも」とかずっとぶつぶつ呟いては角度を変えては見て回る
「あの…子供たちのところへ帰りたいんですが…」
あまりの熱視線にサラが動けないほどだった
翌日、サラの他にマリアにも手伝ってもらいアンフィスバエナの解体をする
シンシアは人形劇の指導で忙しいし、仮に居たところで用をなさない
始める前にサラに確認しておく
「どこが討伐証明部位になる?」
「前と後ろの下顎ですね、セットで必要です」
「なんでセットなんだ?」
「片方の頭だけでも動きますし、時間が経てば再生するそうです。なので両方とも揃えてないと討伐証明にならないとか」
「さすが蛇、生命力が尋常じゃないな。マリア、下顎を切ってくれ」
「はい」
マリアの操作するゴーレムは大きな斧を持っている
俺が瓦礫リストから探し出した斧だ
「肉は食べられる見たいだけど、味はどうなんだろうな?」
フィーの鑑定によると可食となっている
「かなり美味しいらしいですよ。売っても高値が付くそうです」
「へー」
「強い毒の蛇ほど美味しいと言われますね。私もレシピは存じてますが、アンフィスバエナは初めて使うので楽しみです」
マリアも初めての食材に気分が上がっている様だ
「サラに8割くらいあげるぞ。子供たちの口に合わないなら売ればいい」
「そんなに貰っていいんですか?」
「フィーに収納しておくから腐る心配はないとは言え、さすがにこの量は俺達では食べ切れないからな」
「すいません、ありがとうございます」
他にも皮や牙、毒腺は錬金術の素材になるので丁寧に処理していく
「内側からだと硬い鱗もなんとか切れるんだな」
「モンスターが生きている時は、魔力で外皮を強化していると言われてます。皮の硬いモンスターでも死んだ後なら刃が通る事は多いですよ」
「なるほどね。強化魔法みたいなもんかな」
「他にもですね…」
サラのモンスターの知識はなかなか興味深く、しばし聞き入ってしまった




