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私はマリア、シンシア様のゴーレムです
ロットナンバー01の映えある第一号で、主にマスターの身の回りの世話をしています
マスターに作られてから早100年、いろいろありました
ええ、本当にいろいろと
つい最近など、全てを投げ出したい衝動に駆られる事もありました
ですが今は充実した日々が送れています
これもひとえにあの方のおかげですね
早朝、私は工房で店番をしています
日が登りきる頃になると、工房の販売カウンターに冒険者が次々とやってくるのです
小窓を開け、注文を受けた薬を渡して代金を貰います
始めは愛想の無い私に客商売ができるか少し心配でしたが、まるで杞憂でしたね
だいたいの冒険者は日が明るい内に活動したいので、時間が惜しいのです
ですから混雑が少なくスムーズに買い物を済ませられる、このシステムを喜ぶ方がほとんどでした
日によっては日の出から1時間ほど客足が途絶えない時もありますね
その後はこのままダンジョンへ向かうのでしょう
メティスからこの工房を経由して行けるダンジョンはいくつもありますから、意外と立地も良いようです
普通の魔法薬店は営業時間外なので、早朝からやっているウチは大変便利だそうで
その分割高な値段設定なのですが、薬の評価も高いので人気があるようです
しばらくして店が落ち着いた頃、タツキ様が起きてきます
「おはようマリア」
「おはようございます」
タツキ様は私達ゴーレムや使い魔のフィーにも人と同様に接します
本当にお優しい方です
「店番代わるよ」
「はい、では朝食を準備します」
「ああ、頼むな」
工房を辞してマスターの部屋へ向かいます
「マスター、朝です。起きましょう」
「むにゃ…」
「マスター起きましょう」
「………………むにゃ」
ピトッ
「ひゃあああ!」
「おはようございます、マスター」
「おはようではないわ!背中に冷たい手で触れるでない!」
「仕方ありません、そうしないと起きないのですから」
「毎朝それで起こされる身にもなるのじゃ、全く」
「タツキ様より早い時間に起きるなら、あと1時間は早く起きましょうね」
「これでも早くなってきたのに、まだ1時間も…」
「そんな事言っていると、またこの前のようにだらしない寝顔を晒す事になりますよ」
「あれはもうイヤじゃ、恥ずかし過ぎる」
「でしたら頑張りましょう」
「仕方ないのう。くぁーーー」
欠伸するマスターを背に私はこのまま台所へ
以前なら着替えを手伝っていましたが、最近は自分でやるようになりました
マスターの成長を感じます
用意ができたらマスターとタツキ様を呼んで朝食です
まだ寝ぼけているマスターは、この時ばかりは静かでいいですね
「ごちそうさま、美味しかったよ」
「うむ」
「ありがとうございます」
朝食の片付けを終えたら掃除と洗濯ですが、100年かけて磨きあげた私の家事スキルを持ってすれば、すぐに終わってしまいます
家は狭いし洗濯は2人分だけ
以前に比べるとかなり楽です
手が空いたのでタツキ様の工房へ
今日は狩りや街へ行く予定が無いので、調薬作業をしていました
錬金釜を前に作業しているタツキ様を、椅子に座ってマスターが眺めています
あれは恋する乙女の眼差しですね
120歳を過ぎたはずなのになんとウブな事
気配を消して側に控えていると、しばらくして私の存在に気づいた様です
「………いつからじゃ」
「『ほあぁ…』と溜息をつきうっとり眺めていた時からです」
「初めからではないか…」
嘘です、今来たばかりです
先程フィーが教えてくれました
『シンシアちゃん、主様をうっとり眺めてた。ほあぁ、なんて溜息ついて相変わらず可愛い』
との事
フィーは何故か私と念話に近い事ができるので、正確な意思疎通が可能です
そして私と大変馬が合います
最近はフィーの情報を元にマスターやタツキ様をからかうのが、私達の共通の娯楽となっています
マスターの羞恥に悶える表情も素敵ですが、タツキ様の狼狽する様は見ものです
『同感。主様の赤ら顔は最高』
おっと、思考が漏れてしまいましたね
この様に私の表層意識がダダ漏れなので隠し事は無用
出会ってすぐにこの事に気付き腹を割って話し合った結果、私達は紳士協定を結びます
主の幸せを願い、そしてイジリ倒す
かくして私達は親友になりました
昼食を済ませたら孤児院へ向かいます
マスターは弟子のイブにゴーレム操作の指導と、読み上げが得意な子達へのセリフの指導です
私は子供達へ絵の指導ですが、指導というより、一緒に描いてるだけです
しかし子供の成長は早いですね
自由に描かせていますがどんどん絵は上達し、今やどの子もタツキ様より上手です
あの犬の絵、ふふ、あんな、ふふふ、あーダメ、思い出したらもうダメです
ゴホン、失礼
3時になりティータイム、おやつの時間です
私の用意した焼き菓子で一息ついて頂きます
離れた所で楽器の指導をしていたサラさんもこちらのテーブルへ来て歓談します
先日はマスターと随分仲良くなったそうで、大変喜ばしい事です
普段は超武闘派でしっかり者な印象が強い彼女ですが、中身は恋バナ好きな乙女でした
しかも耳年増で、ウブなマスターとの相性もバッチリです
タツキ様を巡り三角関係になるかと思ったのですが、サラさんは友人ポジションに収まりそうですね
日が沈むと夕食の準備です
と言っても昼食の際に平行して仕込んでいるのですぐに終わります
マスターが本領を発揮する時間帯なので、かなり賑やかな夕食になりますが、本当に楽しそうで何よりです
タツキ様の前では見栄を張り好き嫌いしないので、野菜を多目に出しても大丈夫なのが特によろしいですね
タツキ様も美味しそうに食べるのでメイド冥利に尽きると言うものです
食後は紅茶を楽しみながらゆっくり過ごします
タツキ様はリビングの長椅子で錬金術の本を読む事が多いですね
マスターはその隣に座って物語の本を読んでいたり、フィーを撫でていたり、タツキ様に話しかけたりと気ままに過ごしています
とても素晴らしい時間です
マスターの幸福感が魔力リンクを通じてこちらへも伝わります
聞けばフィーもタツキ様から同様のものを感じるとの事
この時間、私はお二人の紅茶を淹れたら工房へ店番に行く事が多いです
邪魔をしてはいけません
話の内容は後でフィーに聞きますが
そろそろ就寝のお時間です
今夜は別々に寝る様で、報告に来たフィーが舌打ちしていました
マスターの負担を考えると致し方無いのですが、少し残念です
毎晩だと私の体を作る日がその分遠のくので、それはそれで困るのですが…まさにジレンマですね
今は仮の体ですので、このままではいろいろと不便ですし
この後は店番を続けながら日の出まで過ごします
魔の森工房は24時間営業
たまに傷だらけの冒険者がくるので、意外と気が抜けません
私はゴーレムなので睡眠は不用ですし、フィーも眠らないので、お互いに丁度良い話し相手になります
こうしてフィーと雑談しながら裁縫をしている時間も私の好きな時間です
明日もマスター達の幸せと私達の楽しみを両立できる素晴らしい日になります様に…
諸事情によりしばらくお休みします
ブクマや評価してくれた方、ありがとうございます
とても励みになりました




