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サラと見張りの男はメティスへ戻らせる事にした
巨大なゴーレムが守っていて手が出せず、工房の破壊に失敗したと報告させる為だ
それと別に俺とシンシアもカルポに乗ってメティスへ向かう
ちなみに見張りの男には、遅効性の毒を盛ったので解毒剤を3日以内に飲まないと苦しんで死ぬ、と伝えてある
「知っての通り俺は約束は守る、言う通りにしたら解毒剤を渡そう。もし周りにバラしたり孤児院の子供を人質にして解毒剤をよこせ、なんて言ったらさっき見せた毒のフルコースが待っているからな。それはそれで良いデータが取れそうだから構わんが」
と言うと男はこの世の終わりを見たような顔で
「なんでもします。どうかやらせてください」
と懇願してきたので、いろいろと頼み事をしてある
「ふふふ、お主もむごい事するのう。しかし便利な毒があるものじゃな」
メティスへ向かう途中、何故かシンシアが思い出して嬉しそうにしていた
「いや、毒とかは嘘だ。逃亡防止の方便」
「それはそれで哀れじゃな。なんとも無いのに、良いように使われるとは」
「子供を人質に取るような奴らにかける情けは持ち合わせてないからな。せいぜい苦しめばいい」
「ふふふ、そうじゃな」
「なんでそんな喜んでるんだか…まぁいいけど。この辺りから迂回して向こうの西門へ向かってくれ」
「うむ!」
シンシアが手綱を引くと、カルポは向きを変えて街道を逸れていった
魔の森と違う方向にある門からメティスに入る
いつも使う門に空瓶屋の手の者がいたら面倒になるからだ
「チッ、シルバー級冒険者では一番の腕利きと聞いていたが大した事がないな」
空瓶屋の主は、魔の森工房から戻った見張りの男の報告を聞いて苦々しい顔をする
「ふん、報告を続けろ」
「はい、失敗はしましたが、サラの奴がゴーレムを破壊する策があると…」
「どんな策だ?」
「俺にはよくわからないんですが、明日馬車を借りてもう一度向こうへ行くと言ってました。」
「馬車を?ますますわからんが…」
「ただ今度こそ成功させると意気込んでいます。許可を出しますか?」
空瓶屋の主は顎に手をやり少し考えている
「いいだろう、明日は工房ではなくそのゴーレムを必ず破壊してこいと伝えろ。失敗したら次は無いとも」
「もし失敗したらどうします?」
「孤児院の部屋を一つ荒らしてこい。家具も壁も徹底的にだ」
「子供らはどうしますか?」
「邪魔をしたら張り倒しておけ。殺すと後が面倒だからあまり手を出すな。警備隊にでも出てこられたらたまったもんじゃない」
「分かりました、そう伝えます」
「お前は明日もサラを見張って来い、もう行っていいぞ」
「失礼します」
見張りの男は部屋から出て行く
「忌々しい奴らだ、まさかゴーレムに警備させているとは…」
今メティスで冒険者の話題と言えば、魔の森工房の事で持ちきりだ
できたばかりの工房なのに、既にメティスの冒険者で知らない者はいない
メティスでのブロンズ級冒険者死亡理由の多くを占める一角兎、その麻痺を防ぐ耐性薬を初めて開発した
麻痺や猛毒などの状態異常の耐性薬は以前からあるが、様々な毒に効くように作られているために材料費もかさみ、恐ろしく高価である
とてもではないが一般的なブロンズ冒険者の手に届くものではない
しかし魔の森工房の耐性薬は一角兎の麻痺毒にのみ対応しているために、彼らでもギリギリ手に入れられる金額に抑えられたようだ
先輩冒険者から後輩冒険者への餞別としても好評だと言う
その人気が冷めぬ内に魔の森の嫌われ者、オバケウルシのカブれも防ぐ毒耐性薬までも開発し、シルバー級やゴールド級の冒険者がこぞって買い求めた
それにより魔の森工房の名は一気に広まり、飛ぶ鳥を落とす勢いとは正にこの事である
そして一番腹立たしいのが、回復ポーションの評判までもが圧倒的に高いと言う事
初めは耐性薬の影に隠れていたが、段々と評価を上げていき、今や回復ポーションだけを買いにわざわざ魔の森工房へ行く者が現れる始末だ
(おかげでこっちは商売上がったりだ、クソッ)
酒の入ったグラスを一気に呷り、テーブルに叩きつける
「おい!いるか?」
「はい、何用で?」
主が呼ぶと背筋の曲がった怪しい男が現れた
「殺しのできる者は?」
「数人心当たりがありますが、サラよりは数段腕が落ちますよ」
「構わん、どうせあの女に殺しは期待できないだろう。元聖女候補がそこまでするとは思えん」
「でしたらすぐに手配します、標的と予算は?」
「魔の森工房の錬金術師と元人形館の主の2人だ、サラがやった様に偽装しろ。予算はこれで」
主は指でサインをだした
「…これじゃ足りないかも知れませんぜ」
「これでもか…ではこれくらいでは?」
「…ギリギリかと」
「これ以上は無理だ」
「やってみましょう。しかしねぇ旦那、元々は工房の破壊だけの予定だったのでは?なんでまた急に殺る事にしたんです?」
「もしサラがゴーレムに殺されでもしたら次は手出しできん。相討ちになったとしても、ゴーレムなら修理されて元通りだからな。ここで奴らを潰しておく必要がある。ほらよ」
主は引き出しから金の入ってる小袋を取り出すと、怪しい男の足元へ放り投げた
「後ほど報告に参ります、では」
怪しい男は床に落ちた袋を拾い上げると、音もなく部屋を去る
「全く、儲けが少ないのに金がかかって仕方がない。サラもしばらく使える駒だと思ったんだが当てが外れたか、クソッ」
そう呟くと酒をグラスに注いで呷った
「と言う訳で、サラを犯人に仕立て上げるそうだ」
「なんて事を…」
サラが怒りのあまり拳を握っていた
(奴の言う元聖女候補とはサラの事だよな?まぁ今は置いておこう)
俺は見張りの男について行かせたフィーを通して、全てを見聞きしていた
ここは孤児院のサラの部屋で、俺はシンシアとサラに向けて見聞きした話を実況中継していた
「見張りの男が指示通りに質問してくれたから良かったよ。おかげで子供たちが比較的安全なのがわかった」
「馬車での移動も許可がでましたから、明日は皆を連れて行けます」
「しかし暗殺と偽装の話が聞けてよかったのう」
「本当だよな、これで遠慮なく空瓶屋の主を潰せる」
完全に殺しにきている相手なのだから、こちらも同様に対処するのみだ
奴は俺だけでなくシンシアまで暗殺対象としているし、躊躇する理由も無い
「…お、あの怪しい男が誰かと接触するぞ。暗殺者かな?」
我が身に迫る危機なので不謹慎かも知れないが、暗殺者がどういう人物か興味はある
「ほうほう」
今はフィーに怪しい男の後をつけさせていた
「あー、相手がすごく渋ってる」
「何故じゃ?」
「提示した金額が少ないとさ。手のサインで金額をやり取りしてるから、いくらかはわかんないが」
それからしばらくサインの出し合いが続いた
「交渉決裂だ、相手が帰っていく」
「そんな事もあるんですね」
「次の所へ向かうみたいだぞ…」
しばらく移動して、また別の暗殺者と接触した
「また渋られてる」
「足もとを見られてるのか、お金をケチりすぎなのか、どっちなんでしょう?」
「さてな、儂らも裏稼業には疎いからのう」
「あらら、また交渉決裂だな」
それからさらに何人かの暗殺者と接触し、全て交渉決裂していた
どうやら少し前に親分以下20人を返り討ちにした事で警戒されたらしく、俺らの暗殺の依頼料はかなり高いようだ
あと基本的に暗殺は夜に行われるが、魔の森へ夜に1人で近づきたくないとも言っていた
彼らは暗殺者なのでモンスター相手には分が悪いらしい
「…怪しい男がすごい困っている」
「どうするのでしょう?」
「どうしようも無さそうだな…」
「値上げをしてまた交渉かのう?」
「それもあり得るけど…そうだ、サラ」
「はい?」
「サラが暗殺の依頼受けてきて」




