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サラは目に涙を溜めて話し始める
「ごめんなさい…子供たちが人質に…」
「やはりな。目的は?俺達の命か?」
「いえ…工房の破壊です」
「だからシンシアを攻撃しなかったのか」
サラは力なく頷く
「今日はまだ…メティスで観光していると…伺っていたのですが…」
「予定が変わってな。それで、コイツの他に見張りか連絡係は?」
「わかりません…」
「期限は?いつまでに戻る必要がある?」
「今日の…日没まで…」
「日没までじゃと!あまり時間が無いぞ!」
シンシアが慌て出した
まだ日は高いが、移動時間も考慮すれば余裕はあまり無い
「子供たちの所に奴らがいるのか?」
「いえ…言う事を聞かなければ…孤児院を打ち壊して追い出すと…」
「そうか、それならまだ大丈夫だな」
「どう言う事じゃ?」
「子供たちの喉元に刃物を突きつけていたら助けるのも難しいが、孤児院を壊すって脅しならその可能性は低いだろう。それなら子供たちを殺すって脅しの方が効果があるし」
「確かに…」
「ならば日没までにコイツから情報を探れば解決だ。マリア、運ぶのを手伝ってくれ。シンシアはサラを頼む」
「はい」
「了解じゃ」
そう言って俺とマリアは男を運びだす
「すんなりと…情報が手に入るんでしょうか?」
サラは心配そうにタツキを見送る
「あ〜、サラよ、それは多分大丈夫じゃ。ただ少しばかり騒がしいがな…」
シンシアはそう言いながらサラの拘束を解き、魔力回復ポーションを渡した
「解いてしまって良いのですか?それにこれは?」
「お主は敵では無い事がわかったからの。これは魔力切れを治すポーションじゃ。飲んでおけ」
「私はシンシア様を…襲撃したのに…こんな事まで…申し訳…ありません」
魔力回復ポーションを手にしたサラは、とうとう堪え切れずに泣き出してしまう
「良い…知らぬとは言え、儂も随分と痛めつけてしまったしのう。それにお主は儂を狙う事は一度も無かった」
「依頼は工房の破壊でしたし。それにあんなに孤児院にお力添えくださったシンシア様を直接害するなんて…できません」
「おそらくタツキがお主を助けようとしたのはそれに気づいたからじゃ。あやつは敵とみなした者には一切の容赦はせんからな。ほれ」
シンシアそう言って部屋の外へ視線を向ける
閉めたドアからの向こうからは悲鳴が断続的に聞こえていた
「あの者もスラムの出で多少の事には動じないはずなのですが…」
「多少では無い事が起きたのじゃろうな。さて、早うそれを飲むのじゃ。まだ話があるからの」
そう言ってシンシアはサラに視線を戻した
「思ったより時間がかからなかったな」
男はタツキが4つ目の毒の瓶を手にした所で観念したようだ
洗いざらい話してくれたが予想通り空瓶屋が黒幕だった
横のテーブルには様々な色の小瓶がこれみよがしとばかりに並んでいる
「これだけの毒を並べてあるなら無理もないでしょう。前回はここまで多くは無かったはずですが?」
「あの時は人数が多かったからね、比較実験を何回も毒を変えてやったんだ。今回は複数の毒を投与して影響を見る実験。ねえ、もう少し頑張ってもいいんだよ?まだ全然データが足りてないし」
「とんでもねぇ…もう全部話しただろう…」
男は首を振りながら弱々しく話す
「仕方ない、約束は守らないとな。マリア、頼む」
俺はそう言って並べた小瓶をしまう
「はい」
手足を拘束してあるので、マリアが男に解毒剤を飲ませていた
「さて、シンシア達と話をしないとな。マリア、ここを頼んでいいか?」
「お任せください」
マリアに見張りを任せ、シンシアの部屋に戻りノックをする
「シンシア、いいか?」
「おおタツキ、入って良いぞ」
部屋に入るとシンシアとサラが並んでベッドに腰掛けている
「タツキ様、この度は申し訳ありません」
サラが立ち上がり頭を下げる
「脅されていたんだ、サラを責める気は無いよ。シンシアを攻撃してたらまた別だったけど」
「な?儂の言う通りじゃろう?」
「はい、シンシア様はタツキ様の事をよくご存知なのですね」
「ふふん、そうなのじゃ」
シンシアが何やら上機嫌だが、放っておいて話を進める
「あの男から引き出した情報だ。仮に今回工房の破壊に失敗してもすぐに孤児院を破壊する訳じゃないそうだ。」
「では…」
「思ったほど事態は急を要して無い」
「そうですか、良かった…」
サラは胸に手を当て安堵の表情を浮かべる
「だが安心はしていられない、成功したらしたで、工房を再建する度に何回もここを襲撃させるつもりだったらしい。つまりサラはこれからも孤児院を盾に脅され続ける」
「そう、ですね…」
警備隊に訴えても孤児院を常に見張ってくれる訳で無い
しかもスラムの中にある以上、殺人でも無い限りあまり動く事はないそうだ
サラとしては事が起こってからでは遅すぎるので、従うしかないのだと言う
本来、非合法な荒事の依頼は高額だ
その依頼料も要らず、シルバー級冒険者の実力があり、万が一にはトカゲの尻尾切りができる
そんなサラの代わりになる者などそうそう居ないだろうから、できるだけ使い倒したいと思うのは当然だ
「それにサラが寝返った事が知れたら話は別だ。なるだけ早く子供たちの安全を確保する必要がある」
「タツキ、その事なんじゃが…」
シンシアが真剣な表情で話始める
「この工房の隣に孤児院を建てて、ここで受け入れたいと思うのじゃ」
「…シンシア、いいのか?」
「良い、あの者らが路頭に迷ったり無体な目に合うのを儂は見過ごせぬ」
「サラはそれでいいのか?魔物除けの結界があるとは言え、ここは魔の森の中だ」
「はい。こうなってしまった以上、あそこに住み続けるよりこちらの方が余程安全だと思います」
ただ、とサラが言い淀んだ
「シンシア様とタツキ様にご迷惑をお掛けしてしまう事が心苦しいのですが…」
「ここは元々シンシアの土地だ。俺は工房を作る許可を得ただけで、シンシアの決めた事に逆らうも何も無いよ」
「そうは言うがの、お主は儂のパートナーじゃからな。話しは通しておかねば」
「まあシンシアならそう言うと思っていたけどな。さて話はまとまった、さっそく打ち合わせをしよう。まずは…」
俺達は急いで今後の計画を立て始めた




