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工房に着いた俺達が見たのは、シンシアの操る巨大なゴーレムが覆面をした黒装束の襲撃者と戦っている光景だった


下手に近づくとシンシアが戦いにくいので遠巻きに眺める


「…マリアの言う通りだな。これは相手が悪過ぎる」


「ええ、マスターは防御魔法しかロクに扱えず、身体能力も低いです。しかしゴーレムを操る事が出来るなら負ける事はそうそうありません。しかもあのゴーレムは性能だけならかなりのモノですから」


マリアがそう言うだけあって、戦況は一方的だった




3メートルを越す巨体からは想像できないような速さで動くゴーレムに、襲撃者は翻弄されっぱなしだ


振り回す腕や踏み付ける足など、一撃でもまともに当たれば命は無いだろう


ゴーレムのどの攻撃であろうと軽く掠めるだけでも戦闘不能になりかねない


そんな中、紙一重で避け続けている襲撃者もかなりの実力である


「ふむ、よく避ける。しかし丁度良い、儂は今虫の居所が悪くてな。遊びに付き会うてくれて助かるのう。すぐに潰れてしまってはつまらん」


腕組みをしたシンシアはそう言いながら酷薄な笑みを浮かべている


ゴーレムの攻撃を避けた後、その挑発にのるように襲撃者はその勢いのまま拳を放つ


ゴギン!と鈍い音を立てて拳はゴーレムの膝に当たった


ゴーレムの振り下ろしの拳を後ろへ跳んで避け、再び回避に専念する


「えぇ…今ゴーレムを素手で殴ったぞ」


「はい、ゴーレムの膝も少し欠けてます。あの程度では問題ありませんが、何回も同じ場所を狙われると動きに支障をきたしかねません」


「マジかよ、素手でゴーレムにダメージ与えるとかあり得ないだろ」


「あのゴーレムはかなり防御力がありますから相当な威力です。おそらく数発でマスターの障壁は突破されます」


「それはマズい…いや大丈夫か。ゴーレムにしか攻撃しないみたいだし。しかし、あの音なら拳は砕けたよな?」


「そうですね…痛く無いのでしょうか…」


しかし見た感じ襲撃者の動きに影響は無い


「あの攻撃を核に当てられたら危険だな」


「巨体が功を奏しましたね。素手であの高さの核を狙うのは難しいでしょう。マスターも簡単には狙わせませんし」


今は弱点である核も露出してあるので、破壊すればゴーレムは動かなくなる


「身体だけじゃなく精神もまともじゃないな。ゴーレムと素手で遣り合うなんて普通は死の恐怖に耐えきれないぞ」


「はい、あれはあれで化け物じみてます」


「うわ、また膝を殴った。音を聞くだけで痛そうなんだけど」


「さっきと同じ右手です」


「どう言う事だ?砕けた拳で殴れるのか?」


「普通なら無理でしょう。あ、マスターの誘導に引っかかりました」


首をかしげながらマリアと話をしていると、襲撃者はゴーレムの攻撃をまともに喰らって数メートル吹っ飛ばされた


「生きて…る!何事も無く立ち上がったぞ」


今のは死んだかと思って、さすがに冷や汗をかく


「いくらなんでも異常過ぎますね。アンデットならあの様な動きはできませんし」


「うーん……あれ、もしかして瞬時に回復してるんじゃ…」


「あのダメージを一瞬で回復ですか?普通なら考えられませんが…」


「あ、でも少し動きが悪くなってきたぞ。あれが魔力消費による疲労なら説明もつく」


魔力は使うほどに精神的に疲労していき、やがて肉体へも影響する


最終的に魔力が枯渇した場合は失神するのだ


「また吹き飛びましたね、マスターも手加減がお上手になりました」


「殺したらいろいろとマズいからな、そうしてくれると助かる」




俺とマリアが見守る中、戦いは佳境へと向かっていた


襲撃者は明らかに動きが鈍くなっている


「あれもうほとんど意識ないだろ…魔力切れによる意識の混濁が始まってるな」


「怪我も治ってませんね、おそらく右手と左の肋骨に鎖骨も折れてます」


「そろそろ止めるか…シンシア、もう止めだ!」


「そうか?まだ動いておるぞ?」


シンシアは遠巻きに見ていた俺たちに気付いていたようで、声掛けに驚く様子も無い


「もうろくに力も残って無い。殺したら寝覚めが悪いからやめとけ」


「なんでじゃ?襲い掛かってきたんじゃぞ」


「こいつサラだぞ」


「何?」


「だから孤児院のサラだ」


「お、お主、そう言う事は早く言わんか!儂は殺す気満々じゃったぞ!危ないではないか!」


「ある程度弱らせないと取り押さえる事もできないしな。お前が遊んでるなら大丈夫かなと」


「まぁそうなんじゃが…!は、早く回復せねば!お主よ、ポーションを!」


「まず拘束してからな。あの拳なんか食らったら俺は即死だぞ」


そう言いながらサラの手足をロープで縛る


「確かにあの拳は恐るべき威力じゃ。3発も食らえば儂の障壁は破られるじゃろうな」


「狙われないで命拾いしたな」


「ゴーレムの膝が欠けた時はかなりビビったのじゃ。こやつは生身なのに恐ろしいのう」


「あの…タツキ様はいつからサラさんに気づいていたのですか?」


「最初から。フィーの索敵でな、サラの事は知ってるからマップに名前が出てた、ほら」


宙に浮いたマップをマリアに見せると、納得した様に頷いていた


顔に巻いている布をとり、意識が朦朧としているサラにポーションを飲ませる


傷は治っていくが、魔力が尽きてるからか意識レベルは低いままだ


「ならば早く教えて欲しいのじゃが…」


「わざわざ黒装束に覆面までしてるんだ、身元がバレたら逃げるかも知れないだろ?この速さで森の中に逃げられたら、カルポでも追いつけないぞ」


「確かにそうじゃが…」


シンシアは釈然としない様子だが、実際サラが弱るまではどうしようも無かった


下手に介入して、こちらに矛先を向けられればタツキでは対応できない


「さてと、続きは家の中でしよう」



サラをタツキのベッドへ寝かせようとしたらシンシアが憤慨したので、シンシアの部屋のベッドへ運んだ


何故かマリアまで反対するので仕方なかった


「…う…あ…」


サラが目を覚ましたが、魔力が尽きているためにかなり疲弊している


(魔力切れはかなりシンドいからな。まともに立ち上がる事すらできないし)


俺は何度かポーション作りに夢中で魔力切れを経験したので、今のサラがいかに具合が悪いかを知っていた


「サラ、聞こえるか?」


ペチペチと軽く頬を叩き目の前で手を振る


「…あ…タツキ様…!」


気がついたサラは起き上がろうとするが、手足が拘束されていて動けない


「無理するな。拘束してるし魔力も尽きてる。時間が無いんだろ?手短に話してくれ」


サラは驚いて目を丸くしていた


「何故って顔だな。答えはアレだ」


俺の指差した先には男がサラ同様に拘束されて床に倒れていた


「薬で眠らせている。コイツに話を聞くよりサラに聞いた方が手っ取り早いからな」




工房へ近づいた時、フィーの索敵にあった反応はサラとこの男だった


木の影からシンシアとサラの戦いを見ていたので、とりあえず睡眠薬を投げて眠らせておいたのだ




「サラが俺達を狙うなんて理由は一つしか無い、そうだろ?」

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