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錬金術は本来なら金のかかるものである
錬金術師は戦闘に向かないので素材を自力で集めるのは難しい
だから依頼したり購入したりで集める必要があるし、錬金術に使う専用の道具はどれもかなりの高額だ
そして情報もタダでは無い
錬金術の情報は金の成る木とも言われ、それこそ恐ろしい値段で取り引きされるのだ
そしてここに大金を手に入れた錬金術師がいた
いつもの夕食後のまったりティーパーティーにて
「生産能力を底上げする道具が欲しいんだ」
「例えばどんな物じゃ?」
「ハイレベルなエンチャントがされた錬金釜、それも大きな奴」
「ほう、それはいくらするのじゃ?」
「わからん、どこから買えばいいかも知らない」
「いきなり手詰まりじゃのう」
「その内自力でアイテムエンチャントできると思うんだけど、まだレベルが足りてないみたいで今は無理。さてどうすればいいかね?」
「いつもの老店主に聞いたらどうじゃ?」
「まぁそれしかないんだよね、あのお爺さんには世話になりっぱなしだ」
「あの者もお主からいろいろ情報を仕入れておるようじゃからお互い様であろう?」
「でも少しは自力で探してみたい。最後の頼みの綱としてお爺さんを取っておきたい」
「自力で切り開くと言う気概は良いと思うぞ」
「そう言う訳で、メティス巡りの旅に出たい。具体的には2泊3日くらいかな。実は同じ所ばかり通ってて、あまり見て回って無いんだよね」
「店はどうするんじゃ?」
「それが悩みでな、マリアに任せっきりにするのも悪いし。せっかくだから3人で観光したいし」
「タツキ様…私の事まで考えて頂き…感無量にございます」
シンシアに紅茶のおかわりを注いだマリアがこちらに熱い視線を送っていた
「ふん、儂は2人きりで良いのじゃがな…タツキがそう言うなら仕方ない」
「まあそう言うな。最近2人には迷惑かけたから、お詫びも兼ねてるしさ。店は工房改装のため臨時休業、という事で」
「設備を変えるワケじゃから嘘では無いのう」
「今回の騒動でかなり稼いだからな、マリアやシンシアの欲しい物もいろいろ買おう」
「良いのか?なら儂は物語本が欲しいのう。人形劇のレパートリーが増やせる。以前持っていたのは全部ダメになってしまったし…」
「私は布の他にも糸や針にボタンなどの裁縫の小物が欲しいです。あと鏡も欲しいのですが、高価ですので必ずと言うワケでは…」
「いいよ、とりあえず欲しい物をリストアップしていこう。買うかどうかは向こうで値段をら見てからだ」
「お主も太っ腹じゃな」
「金は貯めるのも楽しいけど、使うのが一番楽しいよね」
少し前まで野宿しながら隣街へ徒歩で行こうとした事が嘘のような成金である
次にメティスで人形劇をするのが2日後なので、その日から2泊3日の観光旅行に行く事にした
そして2日後、3人でカルポに乗りメティスへやってきた
「観光日和だな、昨日まで雨だったから心配していたんだが良かったよ」
「街道はぬかるんでおったがな、カルポでなければ服が汚れたかもしれぬ」
「その割には飛ばしてましたね。生きた心地がしませんでした」
「儂の操るカルポに万が一は無い。安心せい」
「…お前初めて俺が乗った時『危なかったのう』とか言って無かったか?」
「…さて、どこから行こうかのう」
「…今日の宿、マスターだけ一人部屋ですからね」
「なんてこと言うのじゃ!」
「おふざけはその辺にして、そろそろ行くぞ」
まずは大通りから見て行く事にした
服屋や小物屋があるとシンシアやマリアが足を止め、冒険者関係の店には俺が寄って行く
大通りの店を少し回るだけで昼時を過ぎてしまいそうになり、慌てて広場へ向かう
今日は人形劇を開催する日だ
急いだので約束の時間にはギリギリ間に合った
子供たちは既に集まっていて、今か今かと身を乗り出す様に待っている
いつもの様にシンシアが手乗りゴーレムを用意して人形劇を始める
「では前回のまとめじゃ。勇者は遂に最後の四天王を追い詰めた、しかし敵もさる事ながら四天王最強の一角…」
シンシアがいつもの語り口で話を進める
屋台の寄付を集め終わりマリアの側へ行くと丁度クライマックスだった
「かくして最強の四天王の策は潰え、勇者は無事に姫の待つ城へと帰る事ができた。しかしそこにあったのは姫の冠のみ、姫の名を呼ぶ勇者の声に応える者は無し!姫は何処へ?続きは次回じゃ!」
「「「「「わーーー!」」」」」
「今日も盛り上がってるな」
「いつもこの様な?」
マリアはかなり驚いた様子だ
話しには聞いていた様だが、実際にみるのはかなり違った印象なのだろう
「初めから賑わっていたけど、回を増す事に子供たちの数も増えてな。今じゃシンシアは子供たちの人気者だ」
「昔、小さなゴーレム達が勇者の話をマスターにせがんだので読み聞かせをしていた事がありまして、てっきりその程度かと。まさかここまで力を入れて劇をしているとは思っておりませんでした」
(ああ、10番シリーズの事か。見た事無いのに何故か身近なイメージがあるんだよな)
最近愛用している小剣の持ち主を思い浮かべる
孤児院の子供たちは後で会えるので挨拶をして早々に帰っていくが、他の子供たちにもシンシアは大人気で今も揉みくちゃである
「落ち着け、落ち着くのじゃ。聞きたい事は一人ずつじゃ。列に並ばぬ者や割り込む者には何も話さんぞ」
そう言って子供たちの質問に丁寧に答えていく
子供たちの質問の大半は魔法についてだ
「魔法は使える者と使えない者がおる。じゃが人形劇は誰でもできるぞ。ゴーレムでなくとも糸での操り人形もなかなか趣きがあって良い」
そう言って優しく子供に話しかけるシンシアをマリアは感慨深く見守る
そうして子供たちと一通り話し終え、そのまま孤児院へ向かう
「この後はシンシアが今の人形劇で集めた寄付代わりの食事を孤児院に届けるんだ」
「孤児院へ寄付まで…マスターは随分と変わりましたね」
「儂とていつまでも引きこもりのままではないのだぞ」
「そうですね、本当に」
その後、孤児院でも揉みくちゃになるシンシアをマリアが見守りながら昼飯時は過ぎていった




