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「ま、そうなるな」


駄々をこねて付いて来たシンシアが黙って待っている訳も無く、お灸を据えるつもりのマリアが甲斐甲斐しく面倒を見るはずも無い


その結果…


オバケウルシの蔓で逆さ吊りになったシンシアがそこにいた


右手も巻き取られていて左手のみで必死にスカートを押さえてるので、かなり辛そうである


(…どうやって逆さまになったんだろう?)


「タツキ!こっちを見るでない!マリアー!早く助けるのじゃー!」


「マスターすみません、タツキ様のサポートで手一杯でして」


「タツキは今そこで安全じゃろうが!どう見ても儂の方が危機に瀕しておるぞ!」


「タツキ様、あそこのオバケウルシも倒して来て良いですよ?」


「じゃあ行ってくる」


「タツキも普通に行くでない!パートナーの一大事じゃぞ!」


「見るなって言ったり行くなって言ったり、どっちなんだよ。それに見た感じ大丈夫だろ。牙状の葉は全部切り落としてあるし」


他の蔓も切ってあるからこれ以上蔓は巻き付かない様だ


(さすがマリア、安全性は確保してあるな。シンシアも毒ダメージは軽微のようだし)


オバケウルシの群生地は他のモンスターも嫌がって近寄らないそうなので、ある意味安全地帯である


「大丈夫ではない!手も足もすごい痒いのじゃ!それに儂の腕が限界じゃ!このままでは乙女のプライドが…プライドがー!」


「マスター」


「マ、マリア!」


「がんば」


「マリアーーー!」


お仕置きはもうしばらく続くようだ




俺は危なげなくオバケウルシを倒し続けた


蔓の巻き付き攻撃や牙状の葉の噛みつきも、フィーのおかげで把握しているので対応は楽だった


普通のモンスターより動き自体は遅いので、死角からの不意打ち攻撃でもない限り脅威ではない


おそらく最初に逆さ吊りにして無力化するのが基本的なパターンなのだろう


その証拠に、蔓は後ろからシンシアの足に巻き付きそのまま一気に逆さ吊りにしたらしい


「どうなるかのと、ずっと見てたので間違いありません」


とマリアが言っていた


(助ける気がさらさら無いな…)


と思ったが、あれは自業自得なので放置




蔓や牙状の葉を切り落としてから核のある瘤状の部分を丁寧に処理しているので、素材も大量に手に入れた


シンシアはあの後しっかりと反省した様で


「マリアにはもう逆らわないのじゃ。あやつは鬼か悪魔なのじゃ」


と涙目で言っていた


「これ程までにマスターを慕っているのに、何故その様な事を言うのでしょうか?」


「…なんでだろうね?」


ちなみに乙女のプライドは悲しい事に砕かれた様だが、さすがにかわいそうなのでチラ見程度で止めてある


(黒か…)




お仕置きタイム、もといオバケウルシ退治から10日後…


なんとかウルシ毒用耐性薬の試作品ができた


ダメージを与える毒とカブれる成分は別のものだったのでなかなか大変だったが、その両方を防ぐ事に成功


そのデータからカブれも治せるウルシ用新型解毒剤も開発した


正直、毒よりカブれ成分の方が強力な印象だった


このウルシ用耐性薬のカテゴリは贅沢品と言う位置付けのつもりなので、値段設定はかなり高めの予定だ


そして参考意見を聞きに、いつもの様に老店主の元へ行く


値段はかなり高くても問題無いだろうとの事


いつもの様にデータを見せると


「2種類の毒に効く耐性薬と解毒剤か…さすがにこれはお手上げじゃな。とは言えそれぞれを分けた薬なら儂でも作れるはずじゃ。みておれ!カブれ成分に効く薬を開発してやるわい!」


とやはり意気込んでいた


関係ないがこのお爺さん、段々と若々しくなっている気がする




ギルドへ行くと副代表が出迎えてくれた


ウルシ用新型解毒剤と耐性薬のサンプルを置かせて欲しい旨を伝える


前回同様に、ウルシ毒もセットで持ってきていた


「あのオバケウルシのカブれに効く…これは素晴らしい!あちこちのダンジョンへ行く途中に群生しているので本当に厄介なんですよ。倒してもすぐに生えてくるので討伐も追いついていませんし」


「値段はこのくらいを予定していますが…」


指で値段を伝えると


「…出来ればその倍にして頂きたい」


と意外な反応だ


「倍ですか?」


さすがに驚いてしまった


「私らはそれでも買うのに問題は無いですし、若手には一度くらいそのままカブれを味わって欲しいですから。後は転売対策ですな。おそらくこのくらいの値でも売れますが転売が横行すると偽物が出回って私らも面倒ですので」


(なるほど、転売対策は頭に無かった)


転売対策はもちろん、若手が事前準備を怠った事への洗礼、とも取れるので倍の値段設定は悪い事でも無いだろう


更に副代表は小声で伝えてくる


「その倍の値段の方で良いので新型解毒剤と耐性薬を50セットほど先行で購入したいのですが…」


便宜には便宜で返すのが流儀、とばかりに俺は快諾した




そしてウルシ毒耐性薬の販売がスタート


街道の看板へも工房の名前と共に書き加えてある


冒険者達の反応は凄まじいの一言だった


ギルドでサンプルを試した者達が販売初日の朝一で列を為して買いに来た


魔法薬の中では効果の割りにかなり高額な方なのに、それぞれが一人で10セットや20セットと大量に買っていく


それから数日で大量に作ったはずの薬が底を付き、品切と看板に書いたがそれでも客足は途絶えない


せっかく来たからと回復用ポーションを買って帰り、それがまた評判となり売れ行きはすこぶる好調だった


そして俺がバテた


「金よりも寝る時間が欲しい…」


そう言って倒れたとマリアが教えてくれた


異世界で過労死寸前になるとは、我ながら愚かしいばかりである


前の世界では労働経験が無かったので、その辺の加減を知らなかったのが良くなかったと思う




その後丸2日ほど完全に休養した


復帰後は1日の販売数を絞り一人が購入できる上限を決め、事態はなんとか収束をみせる




「お主は何でも出来そうで変なところで不器用じゃな。全く、身の程をわきまえよ!」


「マスターとは違った方向で放っておけません。本当にしようがない方です」


「心配かけてごめんなさい」


主従コンビに揃って説教をくらう事になろうとは…


ちなみにフィーにも怒られた


目を覚ました俺に思い切り頭突きしてきたのだ


(お前攻撃不可なはずだろ、めちゃくちゃ痛いんだか…)


しかし悪いの俺なので謝るしかなかった

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