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「オバケウルシ?そのモンスターの名は聞いた事ないのう。マリアはどうじゃ?」
「聞いた事はありますが、実際に見た事はありませんね」
「こいつらは植物系モンスターであまり移動しないから、生息域が限られているらしくてな。調べたがこの辺りにはいなかったよ。ダンジョンへの道中に何箇所か群生地があるそうだ」
「そうなのか、それでどう厄介なのじゃ?」
「特殊な毒を持っててな。攻撃方法は蔓で巻き付きと毒ダメージ、牙の噛みつきだそうだ」
「植物なのに牙があるのか…」
「正確には牙状の葉らしいがな、んで殺した後に土の中へ埋めて栄養にするってさ」
「自分で肥料を用意するとは賢い植物ですね」
「まあモンスターだし。その巻き付けてくる蔓が毒を持っているらしい。トゲはないが、皮膚に触れただけでも効果がある毒だってさ。それがまたもの凄い痒いって話だ」
「ウルシですからね、カブれ方も酷そうです」
「オバケウルシ自体を倒すのはブロンズ級でもそう難しくないらしい。ただ毒は解毒剤で治せるが痒みは治らないし、あまり痒みが酷いと探索どころじゃなくなって、ダンジョンへ行く前に引き返すパーティもあるそうだ」
「そんなに痒いのはいやじゃな…聞いただけで我慢できる気がせんぞ」
「だからブロンズからゴールドまでどの冒険者も嫌ってるそうだ。一角兎より危険度は低いが、会いたくないモンスター1位の座はこっちだろうな」
「ならば、その痒みと毒の耐性薬が出来たら…」
「幅広い冒険者が買い求めるだろう。麻痺耐性薬には興味無かった、ランクの高い冒険者もこれで呼び込める。客層の新規開拓だ」
「これはまた人気が出そうじゃな」
「だろう?でそのためのには、実際にオバケウルシを倒して持ち帰りたいんだけど、今回はマリアに手伝って欲しいんだ」
「私ですか?それは構いませんが…」
マリアが心配そうにシンシアを見る
「儂ももちろん行くぞ!」
「シンシアは止めた方がいい、マリアはゴーレムだからカブれないが、お前は酷い目に遭うかもよ」
「それはお主もじゃろうが」
「俺は状態異常無効があるから多分大丈夫」
「むうぅ…、いやじゃ!儂も行くのじゃ!」
「素材をたくさん欲しいから多めに倒そうと思って群生地に行くつもりなんだ。シンシアを守る余裕が無いかも知れないぞ」
「儂には防御魔法があるのじゃ!問題などない!」
「マスターの防御魔法は持続的な攻撃には効果が薄いです。巻き付きなどにはあまり意味を為しません」
「ほら、マリアもこう言ってるぞ」
「いーやーじゃー!いーくーのーじゃー!」
「年上の余裕はどこ行ったんだよ…」
「タツキ様申し訳ありません、こうなったらマスターは連れて行くしかないかと思います」
「…良いのか?」
「少しばかり痛い目に遭えばいいかと」
(あ、マリアがちょっとキレてる…)
こうしてオバケウルシ討伐隊(シンシアお仕置きバージョン)が結成された
オバケウルシの群生地は工房からかなり離れている為、カルポでの移動になる
普通の馬より大きな体なので俺、シンシア、マリアの順で背に跨がる事ができた
マリアはシンシアを挟んで俺の体に手を伸ばす体勢になるので、辛くないか心配したが平気だと言う
「すまないなカルポ、3人も乗せるのは厳しいだろうが頑張ってくれ」
立て髪を撫でてそう言うとブルルッと顔を震わせた
「『割と余裕』と言う感じか?さすがカルポだ、頼りになる」
「なんでお主がカルポと意思疎通できておるのじゃ?」
「フィーも喋れないしな。言葉に頼らないコミュ二ケーションに慣れてるからだろ」
「ふーむ、そんなもんかのう…」
「んじゃいくぞ、それっ!」
魔の森の中を走るので街道よりは速度を落として駆ける
目的の群生地はダンジョンへの途中にある
森の中とは言えある程度は道があり、カルポに乗ったままでもかなりの距離を走れた
「この辺りからは歩いて行こう、そろそろモンスターも増えてきたし」
そう言ってカルポから降りる
シンシアとマリアが何やら小声で話していた
フィーを使えば聞けるが、そう言うのには使いたくないので放置する
「マリア、どうじゃった?」
「なかなか良いものでした」
「そうじゃろう」
「あ、マスターがいなければもっと密着できたのでは?」
「ふふふ、じゃから儂はついて行くと言ったのじゃ」
「私は心からマスターの身を案じていたと言うのに…」
マリアのお仕置きメーターが無駄に上昇した事をシンシアは知る由も無かった
マップを確認し、群生地と思われるところへフィーだけで偵察に行かせた
視覚をリンクしている間、俺は無防備になるのでマリアとシンシアに周囲を警戒してもらう
「こう言う時こそ儂の出番であろう?魔法でしっかり守ってやるぞ」
「そうでもない。モンスターが現れたって伝えてくれればリンクを切るからな。文字通り見ててくれるだけでいい。話によればオバケウルシの周囲には他のモンスターも近寄らないそうだから、その心配も少ないと思うし」
「それでしたら確かに今の私でも事足りますね」
「ぐぬぅ」
「お、見つけた。この感じはかなりいるぞ。誰も戦わないから増える一方だろうな。獲物が無くても光合成で多少の養分は賄えるだろうし」
「それでどうやって倒すのですか?」
「作戦とかは特にない。擬態してるのも確認済みだから奇襲の心配は無いし、一体ずつ倒していく」
「お主にしては珍しく正攻法じゃな…」
「…俺は別にまともなやり方が嫌なわけじゃないぞ。そのままじゃ勝てないから勝てる方法を選んでるだけだ」
そう言いながら13番の小剣を取り出し、マリアには俺のナイフを渡す
「基本的に俺が一人で倒す、状態の良い毒腺とかが必要だからな。万一俺が蔓に捕まったらそのナイフで助けてくれ。二人が捕まる状況は避けたいからなるだけ離れていて欲しい」
「かしこまりました」
「儂は?」
「マリアの横で待機。俺が捕まっても動かないでそこにいろ」
「えー…」
「だから言ったろ、出番が無いから家で待ってろって」
「むうぅ」
頬を膨らませているお子様は放っておいて、俺はオバケウルシ退治を開始した




